漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。
そこで今回は、「励ましたり褒めたり」を表す四字熟語のうち、「褒める・評価する」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。
1.褒める・評価する
(1)一日千里(いちじつせんり/いちにちせんり)
一際(ひときわ)すぐれた才能があることのたとえ。
(2)一日之長(いちじつのちょう/いちにちのちょう)
一日早く生まれた意。少し年長であること。転じて、ほんの少し経験があり、技能などが他よりわずかにすぐれていること。
自分の経験・能力・技能などを謙遜していう語。
(3)一目十行(いちもくじゅうぎょう/ひとめじゅうぎょう)
書物などを速く読む力がすぐれていることのたとえ。一目見ただけで、すぐに十行分を読むことができる意から。
中国の梁(りょう)の簡文帝(かんぶんてい)は、幼いころより理解力が人並み以上であって、読書の際に一度に十行ずつ読んだという故事から。
(4)一騎当千(いっきとうせん/いっきとうぜん)
群を抜いた勇者のたとえ。また、人並みはずれた能力や経験などのたとえ。
一人の騎兵で千人もの敵を相手にできる意から。
「当千」は「千に当たる」で、千人を敵にできる、千人に匹敵する意。
(5)一狐之腋(いっこのえき)
貴重なもの、大変価値のあるもののたとえ。「腋」は脇のこと。
狐の脇の下からとれる毛皮は、白くて美しいがわずかにしかとれないため、大変珍重されたことから。
(6)一唱三嘆/一倡三歎(いっしょうさんたん)
一度うたう間に何度も感嘆する意から、優れた詩文をほめたたえていう言葉。
「三」は、「何度も」の意。「嘆」は、感動してつくため息。もとは、天子の祖先をまつる宗廟(そうびょう)の祭に音楽をかなで、一人がうたえば三人がそれに和してうたったことをいう。
(7)倚馬七紙(いばしちし)
素晴らしい文章をあっという間に書き上げる才能。
「倚馬」は馬の近くにたったままでいること。「七紙」は紙七枚におよぶ長い文章。
中国の晋の時代、哀虎は主君の桓温に布告の文を書くように言われ、馬の前に立ったまま、あっという間に紙七枚にわたる名文を書き上げたという故事から。
(8)允文允武(いんぶんいんぶ)/允武允文(いんぶいんぶん)
武道・学芸、ともにすぐれていること。もと文武を兼ね備えた天子の徳をたたえたことば。
「允」は、まことに。
「允(まこと)に文(ぶん)、允(まこと)に武(ぶ)」と訓読します。
(9)有智高才(うちこうさい/うちこうざい)
人並み外れて才智に恵まれていること。賢くて才能のあること。また、その人。
「有智」は、知恵のあること。また、その人。「高才」は、すぐれた才能。また、その持ち主。
(10)運斤成風(うんきんせいふう)
非常に巧みですばらしい技術のこと。また、それを持つ職人。手斧(ておの)を振るって風を巻き起こす意。
「運斤」は斧を振るうこと。「斤」は手斧の意。「成風」は風を起こすこと。風を起こすほど勢いよく振りまわす意。
「斤(きん)を運(めぐ)らし風(かぜ)を成(な)す」と訓読します。
(11)英華発外(えいかはつがい)
内面のすぐれた精神や美しさなどが表面に表れること。
もとは、人を感動させるすぐれた音楽についていった語で、内面に蓄えられたすぐれた精神が力強く外に表れ出て、美しい曲調をなすことをいう。
「英華」は美しい花の意。ここでは内面のすぐれたもののたとえ。「発外」は外に出ること。
「英華(えいか)、外(そと)に発(はっ)す/発(あらわ)る」と訓読します。
(12)英姿颯爽(えいしさっそう)
堂々とした立派な容姿で勇ましくきびきびとした様子。
「英姿」は容姿が立派なこと。「颯爽」はきちんとした態度や動作が清々しい様子。
(13)詠雪之才(えいせつのさい)
文学的才能のある女性。また、そのような女性をほめるときの言葉。
「詠雪」は、雪を詠むこと。
中国晋(しん)の時代、王凝之(おうぎょうし)の妻謝道蘊(しゃどううん)は、降りだした雪を柳にたとえて、「春の柳絮(りゅうじょ)(*)が空を舞う」と詠んでその文才をたたえられた故事から。
(*)「柳絮」とは、柳の綿毛で、晩春に綿のように舞い飛ぶ。
(14)瑰意琦行(かいいきこう)
考えや行いが普通の人と比べて非常にすぐれていること。
「瑰意」は非常にすぐれている心。「琦行」は普通とは異なるすぐれた行い。
(15)咳唾成珠(がいだせいしゅ)
口から出たせきやつばきでさえ珠玉になるという意から。①一言一句が尊重されるほど、権勢が盛んなさま。②一言一句が美しく、詩文の才能に恵まれているさま。
「咳唾」は、せきとつばき。また、「成珠」は、珠玉になること。目上の人のことばを敬っていう語。
「咳唾(がいだ)珠(たま)を成(な)す」と訓読します。
(16)科挙圧巻(かきょあっかん)
試験で最もすぐれた成績を収めること。
「科挙」は中国の隋(ずい)代に制度として確立した官吏登用試験のこと。科目で人材を挙げ用いる意。
「圧巻」は最優秀の答案(巻)を他の答案の上に載せたことから出た語で、最もすぐれたものが一番上にあって、他のすべての答案を圧すること。
書物や演劇などの中で最もすぐれた部分、また、詩文などで多くの作品中最もすぐれたものをいう。「巻」は答案用紙の意。
(17)赫赫之名(かくかくのな)
素晴らしい評判。
「赫赫」は光り輝く様子のこと。「名」は名声。
光り輝く名声という意味から。
(18)歌功頌徳(かこうしょうとく)
他人の功績や徳を褒め称えた歌を歌うこと。
「歌功」は功績を褒め称えて歌うこと。「頌徳」は徳の高さを褒め称えること。
「功(こう)を歌(うた)い徳(とく)を頌(たた)う」と訓読します。
(19)几案之才/机案之才(きあんのさい)
美しい文章を作る才能のこと。または、その才能を持っている人のこと。
「几」と「案」はどちらも机のこと。
(20)気韻生動(きいんせいどう)
芸術作品に気高い風格や気品が生き生きと表現されていること。
また、絵画や他の芸術作品などに、生き生きとした生命感や迫力があり、情趣にあふれていること。
「気韻」は書画など芸術作品にある気高い趣。気品。「生動」は生き生きとしているさま。また、生き生きとして真に迫ること。
中国六朝(りくちょう)時代、南斉(なんせい)の人物画の名手謝赫(しゃかく)が、『古画品録』の中で画の六法の第一に挙げたのに始まるといわれる。
(21)奇策妙計(きさくみょうけい)/妙計奇策(みょうけいきさく)
人の意表をつくような、奇抜ですぐれたはかりごとのこと。
「奇」は人の考えつかない、珍しくすぐれたの意。「妙」はすぐれた、非凡なの意。「策」「計」はともに策略・計略のこと。
(22)挙一反三(きょいちはんさん)
すぐれた能力と理解力があること。
一つのことを聞くと、そこから三つのことを理解できるという意味から。
「一(いち)を挙(あ)ぐれば三(さん)を反(かえ)す」と訓読します。
(23)玉昆金友(ぎょっこんきんゆう)/金友玉昆(きんゆうぎょっこん)
他人の兄弟をほめていう語。すぐれた兄弟の意。
「昆」は兄、「友」は弟。「玉」「金」は珠玉と黄金。すぐれていることの形容。
(24)錦心繍口(きんしんしゅうこう)
詩文の才能にすぐれているたとえ。美しくすぐれた思いと言葉の意から。
「錦心」は錦のように美しい思いや心をいう。「繍口」は刺繍のように美しい言葉。
(25)金声玉振(きんせいぎょくしん)
才知や人徳が調和して、よく備わっているたとえ。すぐれた人物として大成することをいう。
本来、鐘を鳴らして音楽を始め、磬(けい)を打って音楽をまとめ収束する意。
「金」は鐘。「声」はここでは鳴らす意。「玉」は磬のことで、玉石で作った「へ」の字に曲がった打楽器。「振」はまとめ収めること。一説に整える意。「玉振」は磬を鳴らして曲をしめくくること。
中国古代で音楽を奏するのに、まず鐘を鳴らして音楽を始め、次に糸・竹の楽器を奏でて、終わりに磬を打ってしめくくった。始まりと終わりの整っているさまをいい、もと孟子が孔子の人格を賛美した語。
(26)閨英闈秀(けいえいいしゅう)
非凡な女性。才能豊かな女性。
「閨」は女性の寝室、「闈」は後宮、または奥座敷のことで、どちらも女性のいる場所であることから、女性のたとえ。「英」と「秀」は秀でた才能を持つ人のこと。
(27)鶏群一鶴(けいぐんのいっかく)
多くの凡人の中に、一人だけきわだってすぐれた人がいることのたとえ。
「鶏群」は、鶏の群れ。「一鶴」は、一羽の鶴のこと。鶏の群れの中に一羽だけ鶴が混じっているという意から。
「掃(は)き溜(だ)めに鶴(つる)」と同意。
(28)玄圃積玉(げんぽせきぎょく)
美しい文章のたとえ。たくさんの宝石のように美しいという意味から。
「玄圃」は中国の霊山、崑崙山の仙人が住んでいるとされているところ。
「積玉」は積み重なっている宝石。
(29)挙一明三(こいちみょうさん)
仏教の言葉。一つのことを挙げれば、三つのことを明察するの意から。
「一(いち)を挙(あ)ぐれば三(さん)を明(あき)らかにす」と訓読します。
(30)曠世之感(こうせいのかん)
この世で比べるものが存在しないような感じ。「曠世」は比較できるものがないという意味。
(31)曠世之才(こうせいのさい)
この世に比べ得るものがないほどの才能のこと。
「曠世」は、世に比べ得るものがないこと。「才」は、才能のこと。
(32)功成名遂(こうせいめいすい)
立派な仕事や事業を成し遂げて、名声を得ること。
「功(こう)成(な)り名(な)を遂(と)ぐ」と訓読します。
(33)黄中内潤(こうちゅうないじゅん)
才能や徳が内に充実していること。また、それを内に深くしまい込んで外に表さないこと。
「黄中」は中庸の美徳が内にあること。美徳が内に充実していること。「黄」は五行(ごぎょう)で中央の色に配当され、「中」は中庸の徳をいう。「黄中」は『易経(えききょう)』坤(こん)にある語。
「内潤」は内にあるつやの意。また、内が徳で潤っていること。内に充実した才能や徳をいう。
(34)好評嘖嘖(こうひょうさくさく)
非常に評判のよいさま。
「嘖嘖」は口々にうわさするさま。評判するさま。
(35)高邁闊達(こうまいかったつ)
他の人よりも一際(ひときわ)すぐれていて、大らかなこと。
「高邁」は品格が高く、他の人よりもすぐれていること。
「闊達」は小さなことにこだわらない、大らかなこと。
(36)狐裘羔袖(こきゅうこうしゅう)
全体は立派だが、一部に問題があること。高級な皮衣に安物の袖をつけるということから。
「狐裘」は子狐の脇の下にある高級な毛皮で作った皮衣。
「羔袖」は子羊の皮で作った安物の袖。
「狐裘(こきゅう)して羔袖(こうしゅう)す」と訓読します。
(37)古今独歩(ここんどっぽ)
昔から今に至るまでで比べるものがないほどすぐれていること。
「古今」は昔から今までの意。「独歩」は他に並ぶものがないほどすぐれていること。
(38)古今無双(ここんむそう)
昔から今まで並ぶものがないこと。
「無双」は並ぶものがないこと。「双」はならぶ、匹敵する意。
(39)孤峰絶岸(こほうぜつがん)
詩文などが他に抜きんでてすぐれているたとえ。
「孤峰」は他に抜きんでてそびえ立つ峰。「絶岸」は高く切り立った岸壁。
(40)才華蓋世(さいかがいせい)
すぐれた才能と知恵で世の人々を圧倒すること。
「才華」は内から溢れ出たすぐれた才能と知恵のこと。
「蓋世」は世の中を覆いつくすほどに意気が旺盛という意味から、世の中を圧倒することのたとえ。
「才華(さいか)、世(よ)を蓋(おお)う」と訓読します。
(41)才華爛発(さいからんぱつ)
素晴らしい才能が溢れ出ていること。
「才華」は素晴らしい才能のこと。「爛発」は鮮やかに現われること。
(42)才気煥発(さいきかんぱつ)
すぐれた才能が外にあふれ出ること。またそのさま。
「才気」はすぐれた才能。すぐれた頭のはたらき。「煥発」は輝き現れるさま。「煥」は明らかなさま。輝き現れるさま。
(43)才子佳人(さいしかじん)/佳人才子(かじんさいし)
才知のすぐれた男子と、美人の誉れ高い女子。理想的な男女のこと。
「才子」は才知のあるすぐれた人。「佳人」は美しい人。
(44)才徳兼備(さいとくけんび)
すぐれた才知と人徳を兼ね備えていること。
「才徳」は才知と人徳・徳行。「兼備」は両方を身に付けていること。
(45)子建八斗(しけんはっと)
中国六朝(りくちょう)時代、宋(そう)の謝霊運(しゃれいうん)が三国時代の魏(ぎ)の曹植(そうしょく)の詩才を賞賛した語。
天下の才能が一石(いっこく)あるとすれば、曹植の詩才は一人で八斗を有するという意。
「子建」は曹植の字(あざな)。「斗」は容量の単位。一石は十斗。『蒙求(もうぎゅう)』の一句。
(46)耳聡目明(じそうもくめい)
目と耳の感覚のどちらもすぐれていること。「耳聡」は聴覚がすぐれていること。
(47)七歩之才(しちほのさい)
文才に恵まれていること。また、すぐれた詩文を素早く作る才能があること。
中国三国時代、魏(ぎ)の曹操(そうそう)の子であった曹丕(そうひ)曹植(そうしょく)兄弟は互いにすぐれた詩才があった。曹操の死後、文帝に即位した兄の曹丕は弟の才能を妬ねたんで、あるとき「七歩歩く間に詩を作れ。できなければ死罪にする」と命じ、曹植がたちどころに兄の無情を嘆く詩を作ったので、文帝は大いに恥じたという故事から。
(48)七歩八叉(しちほはっさ)
詩文の才能にめぐまれていること。
魏の曹植は七歩歩く間に詩を作り、唐の温庭筠(おんていいん)は八回腕を組む間に八韻の賦を作った故事から。「叉」は腕を組むこと。
(49)資弁捷疾(しべんしょうしつ)
「資弁」は生まれつき弁舌が達者、「捷疾」は速いや素早いことから、生まれつき弁舌が達者で、行動が素早いこと。
中国古代の殷の紂王を評した故事が由来。
(50)秀外恵中(しゅうがいけいちゅう)
風姿が立派で美しく、内に高い知性を備えていること。
「外」「中」は外形・内心の意。「秀」はひいでている、立派である意。「恵」は頭の働きのさといこと。
「外(そと)に秀(ひい)で中(なか)に恵(けい)あり」と訓読します。
(51)十全十美(じゅうぜんじゅうび)
完全で全く欠点のないこと。すべてがそろって完全なさま。
「十全」は完全なこと、少しの欠点もないこと。「十美」も完璧で、非の打ちどころのないさま。
(52)秀麗皎潔(しゅうれいこうけつ/しゅうれいきょうけつ)
少しの汚れもなく、気品があって美しい様子。
「秀麗」はすぐれていて美しいこと。「皎潔」は汚れが無く、清らかなこと。
(53)出将入相(しゅっしょうにゅうしょう)
文武の両方を兼ね備えた人。朝廷の外では、将軍として輝かしい軍功をあげ、朝廷内では、宰相として見事な働きをする人の意味。
「出」「入」は、朝廷から出ること、入ること。「将」は、将軍。「相」は、宰相のこと。
「出(い)でては将(しょう)たり、入(い)りては相(しょう)たり」と訓読します。
(54)出藍之誉(しゅつらんのほまれ)
弟子が師よりもすぐれた才能をあらわすたとえ。
青色の染料は藍(あい)から取るものだが、もとの藍の葉より青くなることからいう。
「藍」は、たで科の一年草。「青は藍より出(い)でて藍よりも青し」ともいう。
(55)出類抜萃(しゅつるいばっすい)
同じ仲間の中のすぐれたものの中でも、さらに一際すぐれていること。
「出類」は同じ種類の中で、すぐれている人を選ぶこと。
「抜萃」はすぐれたものの中から、一際すぐれているものを選ぶということ。
「類(るい)より出(い)でて萃(すい)に抜(ぬ)く」と訓読します。
(56)晶瑩玲瓏(しょうえいれいろう)
透き通っていて、宝石のように美しいこと。
「晶瑩」は透き通っている様子。「玲瓏」は宝石のように美しく輝く様子。
(57)匠石運斤(しょうせきうんきん)
非常にすぐれた技術があり、精密なことのたとえ。
「匠石」は石という名前の大工の名人のこと。「運斤」は斧をうまく使うこと。
中国の春秋時代、大工の名人の石は、他人の鼻の頭に薄く塗った白い土を、斧を思い切り振り回して傷つけずに削り落としたという故事から。
「匠石(しょうせき)斤(おの)を運(めぐ)らす」と訓読します。
(58)芝蘭玉樹(しらんぎょくじゅ)
すぐれた人材。他人の才能のある子弟を褒めていう語。
「芝」は霊芝(れいし)。めでたい兆しとされる。「蘭」はふじばかま。ともに香気高い香草で、才徳にすぐれた人のたとえ。「玉樹」は玉のように美しい木。
(59)塵外孤標(じんがいこひょう)
ずば抜けてすぐれていること。
「塵外」はこまごまとした世間のことを塵にたとえたもので、世間の外側にいるという意味。
「孤標」は人格などが他よりも一際(ひときわ)すぐれていること。
(60)神機妙算(しんきみょうさん)
人間の知恵では思いもつかないようなすぐれたはかりごと。
「神機」は神が考えたような、はかり知ることのできないすばらしいはかりごと。「妙算」は巧みな、すぐれたはかりごと。「機」も「算」も、はかりごとの意。
(61)人傑地霊(じんけつちれい)/地霊人傑(ちれいじんけつ)
すぐれた土地から素晴らしい人材が世の中に出ること。
「人傑」は素晴らしい人材。「地霊」はすぐれた土地。または、霊的な存在が宿る土地。
(62)神工鬼斧(しんこうきふ)/鬼斧神工(きふしんこう)
人間の技とは思えない、精巧でち密な工芸品や美術品のこと。神わざ。名人芸。
鬼神(きじん)が斧(おの)をふるって、作品を作り上げたようだという意味。
「神工」は、神わざのこと。
(63)神采英抜/神彩英抜(しんさいえいばつ)
内面も容姿も他の人よりもすぐれていること。
「神采」は心と外見。「英抜」は他よりもずば抜けてすぐれていること。
(64)神算鬼謀(しんさんきぼう)
人知の及ばないような、すぐれた巧みな策略のこと。
「算」も「謀」もはかりごと・計略のこと。
(65)尽善尽美(じんぜんじんび)
欠けるものがなく、完璧であること。美しさと立派さをきわめているさま。
「善(ぜん)を尽(つ)くし美(び)を尽(つ)くす」と訓読します。
(66)人中之竜(じんちゅうのりゅう)
たくさんの人の中でも、飛びぬけてすぐれた才能のある人のこと。
「竜」はすぐれた才能を持っている人のたとえ。
中国の晋の時代の隠者の宋繊を称賛した言葉から。
(67)清音幽韻(せいおんゆういん)
文章のすぐれていることのたとえ。
「清音」は清らかな音声、「幽韻」は奥深く何ともいえない趣の意。
北宋(ほくそう)の王安石が欧陽脩(おうようしゅう)の文を評した言葉。
(68)成効卓著(せいこうたくちょ)
成績や結果が非常に素晴らしいこと。
「成効」は成績や結果。「卓」はすぐれていること。「著」は目立っているという意味。
(69)清絶高妙(せいぜつこうみょう)
汚れが無く、すぐれている様子。
「清絶」はこの上なく清らかなこと。「高妙」はすぐれていて立派なこと。
(70)精明強幹(せいめいきょうかん)
物事をよくわきまえていて、仕事をてきぱきとさばく能力の高いさま。聡明でよく仕事ができること。また、身心ともに健全な人。
「精明」は物事にくわしく明らかなさま。「強幹」は仕事をやり遂げる能力のすぐれている意。
(71)石破天驚(せきはてんきょう)
音楽・詩文・出来事などが、人を驚かすほど奇抜で巧みなことの形容。
石が破れ、天が驚くほど巧妙であるという意から。
(72)絶世独立(ぜっせいどくりつ)
この世で並ぶものがないほど独りすぐれている意で、美人やすぐれた人についての形容。
「絶世」は世の中に並ぶものなくすぐれていること。「独立」は他から離れて独りそびえ立っていること。
(73)絶類離倫(ぜつるいりりん)
他の人よりも一際すぐれていること。
「絶類」と「離倫」はどちらも、仲間や同類の中で突出してすぐれているという意味で、似た意味の言葉を重ねて強調した言葉。
「類(るい)を絶(た)ち倫(りん)を離(はな)る」と訓読します。
(74)仙才鬼才(せんさいきさい)
他の人に比べて飛び抜けてすぐれた才能。
「仙才」は仙人のような才能。仙人は人間界を離れて神通力を得た人。「鬼才」は人間業とは思えないようなずば抜けた才能のこと。
もとは唐の詩人の李白を仙才、李賀を鬼才と称した。
(75)栴檀双葉/栴檀二葉(せんだんのふたば)
立派ですぐれた才能を持っている人は、子どもの頃からすぐれた才能を持っているということ。
「栴檀」は香木の白檀のこと。「双葉」は芽が出たばかりの小さな二枚の葉のこと。
白檀は芽が出た直後でもいい香りを放つということから。
「栴檀は双葉より芳(かんば)し」を略した言葉。
(76)先知先覚(せんちせんがく)
衆人よりも先に道理を知ることができること。また、その人。
「先知」も「先覚」も普通の人よりも先に道理を知り、悟ること。「覚」は何かに気がついて、そのことを理解すること。
(77)全知全能/全智全能(ぜんちぜんのう)
知らないことは一つもなく、できないことは何もないということ。すべてのことを知り尽くし、行える完全無欠の能力のこと。
「知」は物事の本質を見通す力。「能」は物事を成し遂げる力。神の力を「全知全能」とたとえる。
(78)鮮美透涼(せんびとうりょう)
美しく透き通っている様子。人の性質についてもいう言葉。
「鮮美」は美しく色鮮やかなこと。「透涼」は涼やかで、清く透き通っている様子。
(79)千里之足(せんりのあし)
すぐれた才能がある人物のたとえ。
「千里」は一日で千里の距離を走ることのできる馬のことで、すぐれた才能があることのたとえ。
(80)蚤知之士(そうちのし)
時代の流れの先を見通すことができる人。先見の明のある人をいう。
「蚤知」は早い段階で、事が起こる前に知るという意味。
(81)聡明剛介(そうめいごうかい)
賢く、意思が強いこと。
「聡明」は賢いこと。「剛介」は意思が固いこと。
(82)卓爾不群(たくじふぐん)
一際すぐれていること。または、そのような人のこと。
「卓爾」は並外れてすぐれていること。「不群」は他よりも特にすぐれていること。
(83)多才能弁(たさいのうべん)
様々な才能があり、話し上手なこと。
「多才」は様々な才能や知恵があること。「能弁」は弁舌がすぐれていること。
(84)超軼絶塵/超逸絶塵(ちょういつぜつじん)
他のものよりも非常にすぐれていることのたとえ。または、馬などが非常に速く走る様子。
「超軼」は他よりもずば抜けてすぐれていること。
「絶塵」は塵が一つも立たないほど、非常に速い速度で走ること。
馬の群の中から一頭が非常に速く走りぬけるという意味から。
(85)超塵出俗(ちょうじんしゅつぞく)
普通の人と比べて、一際(ひときわ)すぐれていること。
「塵」はちりのことで、俗世のけがれという意味。
「塵(ちり)を超(こ)え俗(ぞく)を出(い)ず」と訓読します。
(86)適怨清和(てきえんせいわ)
恨めしいほどに素晴らしく、清らかで整っていること。
「適怨」はこの上なく素晴らしいために、恨めしい気持ちが生まれること。
「清和」は清らかで整っていること。
(87)倜儻不群(てきとうふぐん)
才気が衆人とは比べようもないほどすぐれているさま。また、豪快で世俗の礼法には縛られないさま。
「不群」は、群を抜いているさま。また、衆に与(くみ)しないさま。
(88)天資英邁(てんしえいまい)
生まれつきすぐれて賢明な資質をそなえていること。また、そのような人。
「天資」は、生まれつきの性質・資質。天性・天分のこと。
「英邁」は、普通の人と比べて、才知が非常にすぐれているさま。
「天資英明(てんしえいめい)」ともいう。
(89)騰蛟起鳳(とうこうきほう)
才能が抜群にすぐれていること。
「騰蛟」は天に躍り上がる蛟竜のことで、雷雨を呼び洪水を起こすとされる伝説の竜。
「起鳳」は飛び立つ鳳凰のこと。鳳凰は伝説の鳥。
(90)棟梁之材(とうりょうのざい)
国や集団を支えることができ、重要な任務を任せることのできる人のこと。
「棟」と「梁」は棟木と梁のことで、どちらも屋根を支えるために重要な木材ということから。
(91)独具匠心(どくぐしょうしん)
詩文や音楽などの芸術に対する、独創的なアイデアや技巧を備えていること。
「匠心」は、詩文など芸術作品の創造に必要なアイデア。
(92)独出心裁(どくしゅつしんさい)
表現や発想が他人とは違っていて独創的なこと。
「心裁」は独自の考えや思いつきのこと。
「独(ひと)り心裁(しんさい)を出(いだ)す」と訓読します。
(93)特立之士(とくりつのし)
普通の人よりもすぐれた能力や、徳を備えていること。
「特立」は一際(ひときわ)すぐれていること。
(94)呑舟之魚(どんしゅうのうお)
常人をはるかに超えた才能をもつ大物。大人物。善人・悪人ともに用いる。
「呑舟」は舟を飲み込むこと。舟を飲み込んでしまうほどの大きな魚の意味。
(95)燃犀之明(ねんさいのめい)
物事の本質を鋭く見抜く力があることのたとえ。
怪物がいるといわれる深い淵の中で、犀(さい)の角を燃やして探してみると、水の底に本当に怪物がいたという故事から。
(96)嚢中之錐(のうちゅうのきり)
すぐれた才能をもつ人は、凡人の中に混じっていても、自然とその才能が目立ってくるということ。
「嚢中」は袋の中。袋の中に錐を入れておくと、自然に袋を突き抜けて、とがった刃先が見えてくる。それと同じように、すぐれた人は自然と凡人の中から突き抜けて、その才能を現すということ。
(97)能鷹隠爪(のうよういんそう)
すぐれた人は人前で無闇に能力を誇示しないということ。
「能鷹」は才能のある鷹のことで才能のある人のたとえ。
「隠爪」は爪を隠すことでやたらと力量を誇示しない態度のこと。
(98)馬氏五常(ばしのごじょう/ばしごじょう)
兄弟全員が優秀なこと。
中国三国時代、蜀の馬氏の五人兄弟はみな優秀であり、全員の字(あざな)に「常」の字がついていた。
中でも、馬良はひときわすぐれおり、幼い頃から眉に白い毛が混ざっていたことから「白眉」と呼ばれ、「馬氏の五常、白眉最も良し」といわれたという故事から。
(99)抜群出類(ばつぐんしゅつるい)
才能などが一際すぐれていること。
「抜群」と「出類」は、どちらも同じもののなかで飛び抜けてすぐれているということ。
(100)万邦無比(ばんぽうむひ)
全ての国の中でも、比べることができるものがいないほどにすぐれていること。
「万邦」は全ての国。「無比」は比べることができるものが存在しないということ。
(101)万緑一紅(ばんりょくいっこう)
あたり一面の緑の草むらの中に開く紅(あか)い花一輪の意で、平凡な多くのものの中に、一つだけすぐれたものがあること。また、特に多くの男性の中に一人女性がいること。また、その女性。
「万緑」は、あたり一面が緑であるさま。出典は王安石(おうあんせき)の「柘榴(ざくろ)を咏ずるの詩」とされるが、王安石の作詩であるかは不明。
(102)非常之功(ひじょうのこう)
とてつもなくすごい功績のこと。
「非常」は程度が飛びぬけていること。「功」は功績のこと。
(103)非常之人(ひじょうのひと)
二つとないほどにすぐれた能力をもった人のこと。
「非常」は普通とは違う、一際すぐれていること。
(104)美妙巧緻(びみょうこうち)
細かく複雑で、なんともいえない味わいがあり、美しいこと。
「美妙」は非常に美しく、すぐれていること。
「巧緻」は工夫されていて、細かい部分まで手が込んでいること。
(105)百伶百利/百伶百俐(ひゃくれいひゃくり)
非常に賢く、理解力や判断力にすぐれていること。
「百」は普通の程度を大いに超えている様子を言い表す言葉。
「伶」と「利」はどちらも賢いという意味。
(106)百歩穿楊(ひゃっぽせんよう)
すぐれた射撃の能力があること。
「穿」は穴を開けること。「楊」は柳のこと。
百歩離れた場所から、細い柳の葉を打ち抜くという意味から。
「百歩(ひゃっぽ)楊(やなぎ)を穿(うが)つ」と訓読します。
(107)廟堂之器(びょうどうのき)
朝廷で政治を行うことができる、すぐれた才能のある人物のこと。
「廟」は君主の祖先をまつった建物、宗廟。「堂」は君主と臣下が会議を行う場所、明堂。
「廟堂」は宗廟と明堂ということから、政治を行う朝廷のこと。
「器」は才能のこと。
(108)風塵外物(ふうじんがいぶつ)
世俗の人間をはるかに超えた、すぐれた人物のこと。
風塵の外にいる人物の意。「風塵」は風に舞うちりや土ぼこりで、混乱や兵乱のたとえ。「会」はめぐり合わせ、また、とき・おりの意。
(109)不羈之才(ふきのさい)
非常にすぐれた才能。
「羈」はつなぐという意味。誰にも繋ぎとめることが出来ない才能という意味から。
(110)庖丁解牛(ほうていかいぎゅう)
非常にすぐれた技術のたとえ。
「庖」は仕事として料理をする人。「丁」は人の名前。「解牛」は牛を骨と肉に解体すること。
料理の達人とされる丁は、牛を解体する技術がすぐれていたということから。料理で使う道具の「包丁」の語源とされている。
「庖丁(ほうてい)牛(うし)を解(と)く」と訓読します。
(111)曼倩三冬(まんせんさんとう)
非常にすぐれた才能を持つ人は、あっという間に教養を身につけることができるということのたとえ。
「曼倩」は人の名前。「三冬」は三度冬が訪れるということから、三年ということ。または、冬の間の三ヶ月のこと。
中国の前漢の曼倩は、十三歳のときに書を学び始めて、三年、または三ヶ月の期間で、文書を書けるようになり、史伝を読めるほどに上達したという故事から。
(112)命世之才(めいせいのさい)
世に有名な才能のこと。または、そのような才能を持っている人のこと。
「命世」は世に名前が知れ渡っているという意味。
(113)雄材大略(ゆうざいたいりゃく/ゆうさいたいりゃく)
傑出して大きな才能と計画のこと。
「雄材」は優秀な才能のこと。「雄」は秀でる、すぐれること。「材」は才能・能力のこと。「略」ははかりごと・計画・計略のこと。
(114)鸞翔鳳集(らんしょうほうしゅう)
すぐれた才能をもった人が集まり来るたとえ。鸞や鳳(おおとり)が飛んで集まってくる意から。
「鸞」は鳳凰(ほうおう)に似た鳥、「鳳」は鳳凰のことで、いずれも伝説上の霊鳥。二種類の霊鳥をすぐれた人物にたとえた言葉。
(115)竜駒鳳雛(りょうくほうすう)
すぐれた才能を持っている賢い少年のこと。
「竜駒」は名馬、「鳳雛」は伝説上の鳥の鳳凰のひな。
中国の晋の詩人の陸雲は幼い頃から天才と呼ばれていて、呉の大臣の呂閔鴻が陸雲を評したという言葉から。