社会との関わりを表す四字熟語(その2)真心・誠意・忠誠

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一諾千金

漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。

そこで今回は、「社会との関わり」を表す四字熟語のうち、「真心・誠意・忠誠」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。

1.真心・誠意・忠誠

(1)一諾千金(いちだくせんきん)

決して裏切らない、一度約束したことは守らなければならないというたとえ。
一度引き受けた約束には、千金同様の重みがあるということ。

「一諾」は一度承知して、引き受けること。「千金」は大金のたとえ。

中国楚の季布は、一度承知して引き受けたことは違えることなく確実に果たしたため、季布に約束を引き受けてもらうことは千金を得るよりも価値があると言われていたという故事から。

(2)一死報国(いっしほうこく)

命をかけて国の恩に報いること。

「一死」は死ぬことを強めた言い方。「報国」は国から受けた恩に報いること。

(3)一寸丹心(いっすんのたんしん)

嘘のない本心から誠意。ほんの少しだけの真心という意味から。
自身の誠意という意味の謙譲語。

「一寸」の「寸」は長さの単位で、とても短いことや、少ないことのたとえ。
「丹心」は真心、誠意のこと。

(4)一徹無垢(いってつむく)

ひとすじに信じ込む、純粋な様子。

「一徹」は思い込んだら、そのことを貫き通すこと。「無垢」は穢れがなく、清らかなこと。

(5)飲馬投銭(いんばとうせん)

心も行いも清く正しいこと。

馬が水を飲むたびに、自主的に代金を水に投げ込むということから。

「馬(うま)に飲(みずか)い銭(ぜに)を投(とう)ず」と訓読します。

(6)開心見誠(かいしんけんせい)

胸襟を開いて、誠意をもって人に接すること。また、心の底を打ち明けること。

「開心」は心の中を開くこと。「見誠」は誠意をあらわすこと。「見」はあらわす、示す意。

「心(こころ)を開(ひら)いて誠(まこと)を見(あらわ)す」と訓読します。

(7)柯会之盟(かかいのめい)

約束したことを成し遂げ、信義を守り抜いて信頼を得ること。「柯」は中国の地名。

中国の春秋時代、斉の桓公は魯の荘公と柯で会合して、侵略して得た土地を返すという約束をして、信義を守って約束を果たして信頼を得たという故事から。

「柯盟」と略して使うこともある。

(8)鞠躬尽瘁(きくきゅうじんすい/きっきゅうじんすい)

国のために命を懸けて尽くすこと。

「鞠躬」は身を低くしてかしこまること。
「尽瘁」は自分のことをかえりみずに、全力をつくすこと。

(9)蹇蹇匪躬(けんけんひきゅう)

自分のことは後回しにして苦労を重ね、主人に尽くすこと。

「蹇蹇」は忠義を尽くすさま。また、非常な困難を身を苦しめて救うさま。

「匪」は非に同じ。「躬」はわが身。「匪躬」は自分のために非常な苦労をするのではない意。

(10)巧偽拙誠(こうぎせっせい)

どんなにうまく騙すことができても、それは下手ではあるが誠意のこもった言動には適わないということ。また、巧みな偽りよりも、拙い誠実さのほうが良いということ。

「巧偽(こうぎ)は拙誠(せっせい)に如(し)かず」と訓読します。

(11)高潔無比(こうけつむひ)

他と比べられないほどに、心の品格が高く、清らかな様子。

「高潔」は心に品格があり、清らかなこと。「無比」は比べられるものが存在しないこと。

(12)公明正大(こうめいせいだい)

私心を差し挟むことなく、公平に堂々と物事を行うこと。または、そのような様子。

「公明」は私心を差し挟むことなく公平で、不正などの隠すようなことは何もないこと。
「正大」は態度や行動などが正しく堂々としていて、隠さなければならないようなことがないこと。

(13)懇到切至(こんとうせっし)

細かいところまで親切が行き届いていること。

「懇到」と「切至」はどちらも丁寧で、真心が十分に行き届いていること。

(14)三釁三浴(さんきんさんよく)

相手のことを大切に思う心を言い表す言葉。

人を待つ間に何度も体を洗って、良い香りの香を塗るという意味から。

「三」は何度も、という意味。「釁」は香を塗ること。「浴」は湯水で体を洗い清めること。

(15)三顧之礼(さんこのれい)

真心から礼儀を尽くして、すぐれた人材を招くこと。また、目上の人が、ある人物を信任して手厚く迎えること。「顧」は訪ねる、訪れること。

中国三国時代、蜀の劉備が、わびずまいの諸葛亮(しょかつりょう)(諸葛孔明)を訪ねたが、なかなか会えず、三度目にやっと面会できた。二人は胸中を語り合って感激し、劉備は孔明を軍師として迎えることができた故事から。

(16)三舎退避(さんしゃたいひ)

相手のことを恐れて、避けること。

「舎」は古代中国の軍隊が一日で進む距離のことで、三十里のことをいう。
軍隊が相手を恐れて、九十里の距離を空けて避けるという意味から。

「三舎を避(さ)く」ともいう。

中国の春秋時代、楚に亡命した晋の重耳は、楚の成王に厚遇され、重耳は感謝して、晋と楚が戦うようなことがあれば九十里後退させると約束した。
晋の君主になった重耳はその約束を果たしたという故事から。

(17)三拝九拝(さんぱいきゅうはい)

何度も頭を下げること。何度も頭を下げて敬意や謝意を表すこと。また、手紙の末尾に記して敬意を表す語。

「拝」は拝礼すること。

(18)四海兄弟(しかいけいてい/しかいきょうだい)

真心と礼儀を尽くして他者に交われば、世界中の人々はみな兄弟のように仲良くなること。また、そうすべきであること。

「四海」は四方の海。転じて、天下、世界中の意。

『論語』顔淵の「君子は敬して失う無く、人と恭(うやうや)しくして礼有らば、四海の内、皆兄弟なり」から。

(19)正笏一揖(しょうしゃくいちゆう)

重々しく礼儀正しい振る舞いをして、相手に敬意を示すこと。

「正笏」は束帯を身に付けた時に右手に持つ笏を正しく持つ振る舞いのこと。または、そこから礼儀正しいことのたとえ。

「一揖」は軽くお辞儀をすること。

(20)食馬解囲(しょくばかいい)

恩を受けた人が、恩人の危機に助けに行くこと。

中国の秦の穆公は、逃げた愛馬を探していると、野人が馬を捕らえ食べようとしていたが、穆公は野人の気持ちを察して馬だけでなく酒も出してやった。
その後、穆公が戦争で危機に陥ると、駆けつけた野人のおかげで穆公は戦争に勝利したという故事から。

「馬(うま)を食(く)らいて囲(かこ)みを解(と)く」と訓読します。

(21)信誓旦旦(しんせいたんたん)

誠意を持って本心から誓うこと。

「旦旦」は明らかな様子。または、心がこもっている様子。

元は、男性が女性に結婚を申し込むときの気持ちを言い表す時に使われた言葉。

(22)尽忠報国(じんちゅうほうこく)/報国尽忠(ほうこくじんちゅう)

国に忠義を尽くして、国からの恩に報いること。

「尽忠」は誠意を込めて君主や国家に尽くすこと。「報国」は国から受けた恩に報いること。

中国の南北朝時代の皇帝宣帝の死後、その遺言に背こうとした高官を顔之儀が諫(いさ)めたとされる言葉から。

(23)誠心誠意(せいしんせいい)

このうえないまごころ。まごころのこもるさま。打算的な考えをもたず、まごころこめて相手に接する心をいう。

「意」は考え・気持ち。

(24)精忠無比(せいちゅうむひ)

比較することが出来ないほどの純粋な忠義心。

「精忠」は純粋な君主への忠義心。

(25)跖狗吠尭(せきくはいぎょう)

善悪とは関係なく、自分の主人に忠義を尽くすものだということ。

「跖」は中国の春秋時代の盗賊の盗跖のこと。「狗」は動物の犬。
「尭」は中国の古代の聖天子の尭帝のこと。

盗跖の飼っている犬が尭帝に吠えかかるという意味から。

「跖(せき)の狗(いぬ)尭(ぎょう)に吠(ほ)ゆ」と訓読します。

(26)赤心奉国(せきしんほうこく)

誠意を込めて国のために尽くすこと。

「赤心」は嘘のない本当の心という意味。

(27)截髪易酒(せっぱつえきしゅ)

やせ細るほどに努力して来客を接待することのたとえ。
または、誠意を持って客を接待することのたとえ。

「截」は断ち切ること。

中国の晋の陶侃は、貧しかったために、友人をもてなすために、自身の髪を切って売り、酒や食べ物を買ってもてなしたという故事から。

「髪(かみ)を截(き)りて酒(さけ)に易(か)う」と訓読します。

(28)洗手奉職(せんしゅほうしょく)

真面目に働くこと。または、清く正しく職務に励むこと。

「手(て)を洗(あら)い職(しょく)に奉(ほう)ず」と訓読します。

(29)草廬三顧(そうろさんこ)

立場が上の人が礼を尽くして、すぐれた才能のある人を招くこと。
または、立場が上の人が、立場が下の人に礼を尽くして仕事の依頼をすること。

「三顧」は三回訪問することで、古代中国の三国時代に、諸葛亮を迎え入れるために、劉備本人が三回訪問したという故事から。

(30)大義滅親(たいぎめっしん)

国や君主の正義を貫くためには、親や兄弟などの身内すらかえりみないこと。

「大義」は人として大切な道義。「親」は親や兄弟などの身内。

「大義(たいぎ)親(しん)を滅(めっ)す」と訓読します。

春秋時代に衛の州吁と石厚が、共謀して君主を殺し王位を奪ったが、民心をつかむことができなかった。
石厚の父親「石サク」は石厚に”陳の国に助けを求めよ”と命じ、その裏で陳王に「君主を殺したものを処刑してほしい」と伝えた。

州吁と石厚は陳王に処刑され、正義を貫くために自分の子供の命すらかえりみなかった石サクは民に純臣として賞賛されたという故事から。

(31)肺腑之言(はいふのげん)

真心のこもった言葉。

「肺腑」は臓器の肺ということから、心の奥の底という意味。

(32)匪躬之節(ひきゅうのせつ)

自身の損得は考えずに、君主や国家への忠義を尽くすこと。

「匪躬」は自身の損得を考えないこと。

(33)貧者一灯(ひんじゃのいっとう)

誠意がこもっている行いのこと。
または、誠意のこもった行いは尊いものであるということのたとえ。

裕福な人が多くの寄付をするよりも、貧しい人の誠意のこもった少しの寄付のほうが尊いものであるという意味の言葉。

古代インドの阿闍世王が、仏を供養するためにたくさんの灯明で照らしたが、それらの灯明はすべて消えてしまった。
貧しい老女が誠意を込めて用意した灯明は、朝まで輝き続けたという故事から。

(34)腹心之臣(ふくしんのしん)

心から信頼できる家臣のこと。

「腹心」は自分の腹や心になるという意味で、確実な信頼をすること。

(35)碧血丹心(へきけつたんしん)

厚い忠誠心や誠意のこと。

「碧」は青色のこと。「丹心」は誠意や真心。

敬王に仕えていた萇弘は、讒言(ざんげん:事実を曲げた偽りの告げ口)によって追放され、郷里の蜀(しょく)で自決した。
蜀の人々がその様子を哀れに思い、その血を器に入れておいたところ、三年後にはその血が碧玉(青く美しい宝玉)になったという故事から。

(36)奉公守法(ほうこうしゅほう)

公務員の務めのことで、公務をきっちりと遂行して、法をしっかりと守ること。

「公(こう)を奉(ほう)じ法(ほう)を守(まも)る」と訓読します。

(37)忘身忘家(ぼうしんぼうか)

自分や家族のことも考えず、君主や国のために尽くすこと。

「身(み)を忘(わす)れ家(いえ)を忘(わす)る」と訓読します。

(38)朋友有信(ほうゆうゆうしん)

お互いの信頼が友人関係には最も大切なものだということ。

「朋友」は友人のこと。

「朋友(ほうゆう)信(しん)有(あ)り」と訓読します。

(39)滅私奉公(めっしほうこう)

個人的な感情や欲求、利益を捨てて、社会や国家などの公のために尽くすこと。
または、そのようにして立場が上の者に尽くすこと。

「滅私」は自身の利益や欲求を捨てること。「奉公」は公や立場が上の者に奉仕すること。