平均年収日本一の「キーエンス」とはどんな会社か?

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キーエンス

「キーエンス」という会社は、本社が以前高槻市にありました。JR高槻駅の南西に小さな事務所があり、変わった名前の会社だけれど、ハイテク企業なのかなと思った記憶があります。現在、本社は大阪市東淀川区に移転し、高槻市には毎日ハウジング住宅展示場跡地に広大な物流センターが出来ています。

1.「キーエンス」とはどんな会社か

「キーエンス」は、自動制御機器、計測機器、情報機器、光学顕微鏡・電子顕微鏡などのなど開発および製造販売を行う会社です。もう少しわかりやすく言えば、FA(ファクトリー・オートメーション)にかかわる「センサー」や「画像処理システム」を手掛けているのです。

FAとは、工場の生産工程を自動化するために導入するシステムのことで、生産ラインにおいて、正確な製造作業や不良品の排除を行うために物の位置を精密に測定するセンサーや画像処理技術は不可欠で、今後ますます需要が高まることが予想されます。

同社は1974年(昭和49年)の設立で、海外売上比率が50%を超え、世界44カ国、200拠点で事業を展開しています。

創業者で現在名誉会長の滝崎武光氏(1945年~ )が、1974年に兵庫県尼崎市で「リード電機」として設立し、1986年に社名を「Key of Science」に由来する「キーエンス(KEYENCE)」変更しました。

2.なぜ「平均年収日本一」になれたのか

日本の上場企業は約3,500社で、日本の全企業数400万社の0.01%です。その数少ない上場企業の中で「平均年収日本一」なのが、この「キーエンス」なのです。

「就職四季報2019年版(総合版)」によれば、1位がキーエンス(電機)で1,861万円、2位が朝日放送(テレビ)で1,518万円、3位がヒューリック(不動産)で1,418万円でした。

テレビ局や証券会社、商社、不動産などは給与水準が高いことで有名ですが、製造業でそれを上回る給与だというのですから驚きです。

少し古い推計資料ですが、2013年の週刊東洋経済の「生涯給料ランキング」では、1位がキーエンスで561百万円、2位が日本テレビ放送網で505百万円、3位が朝日放送で497百万円でした。

その秘密は、「少人数の社員(連結対象従業員数が約6,600人)」で、「営業利益率が高い」ことでしょう。

同社の営業利益率は、約50%で日本の製造業で断トツ1位です。2018年3月期の営業利益率は55.5%もありました。

3.「高収益」の秘密は何か

(1)ファブレス経営

社員数(連結対象従業員数が約6,600人)が少ない理由の一つに、「ファブレス経営」(製造や組み立ての工場を自前で持たない経営)があります。設備関連費や労務費がそれだけ少なくて済むからです。

ちなみに同社の「自己資本比率」は驚異の95%です。トヨタ自動車でも37%ですから、いかに凄いかがわかります。

(2)高い商品開発力

同社の新商品の約7割が「世界初」もしくは「業界初」だそうです。顧客の潜在ニーズを掘り起こし、「競合相手が少ない(価格競争にさらされない)」「高付加価値商品」を製造販売しているということです。

(3)顧客への直接販売方式

同社は、通常のBtoBビジネスと違って、代理店などを介在させない「顧客への直接販売方式」を取っており、「見本市」などで同社の顧客の潜在ニーズをキャッチする努力をしています。そこでの「徹底的なマーケティング戦略」と「巧みな営業戦略」が奏功しているようです。

(4)広告宣伝費の極小化

「キーエンス」は、消費者に直結した企業ではないため、CMもせず、社長がマスコミに出ることもほとんどない「徹底した秘密企業」です。社長が珍しくテレビ東京の「カンブリア宮殿」に出演した時も、「リクルートの時期だから」と明言しています。

4.キーエンスが「ノウハウの外販」開始(2019/8/30追記)

キーエンスが営業利益率50%超の高収益の強みを生かして、「ノウハウの外販」をするとの報道がありました。(8/30付けの日本経済新聞)

自社で使用しているシステムをベースにソフトウェアを開発したそうです。利用企業が持つ顧客データなどを分析し、営業や新製品開発を効率化する手法を提案するもので、これを「サブスクリプション方式」で販売するそうです。なかなかしたたかな戦略ですね。