先日、正当な金融取引である「ファクタリング」を偽装した「ヤミ金融」の「二者間ファクタリング」が国会で取り上げられました。
1.「ファクタリング」とは
「ファクタリング」とは、「企業の売掛債権を買い取り、自己の危険負担で代金回収(債権の管理・回収)を行う金融業務」のことです。
企業が、自社の持つ売掛金や受取手形などの売掛債権をファクタリング会社へ手数料を支払って売却し、債権の回収業務はファクタリング会社が行うものです。
支払先が支払不能となった場合の負担がどちらにあるかにより、依頼企業が負担する「償還請求権のあるファクタリング」と、ファクタリング会社が負担する「償還請求権のない(ノンリコース)ファクタリング」の二種類があります。
「ノンリコースファクタリング」が一般的です。
2.「二者間ファクタリング」とは
通常ファクタリングは、「企業(債権者)」「取引先(債務者)」「ファクタリング会社」の三者間で行われる契約(三者合意の債権譲渡契約)です。これを「三者間ファクタリング」と呼びます。
一方、「二者間ファクタリング」というのは、資金調達をしたい企業(債権者)とファクタリング会社の二者間で完結する契約です。取引先(債務者)へ債権を譲渡した旨の通知や承諾が不要なため、取引先や第三者に知られることなく資金調達が可能となります。しかし、「三者間ファクタリング」に比べて手数料が非常に高いというデメリットがあります。
3「二者間ファクタリング」を偽装した「ヤミ金融」とは
これは、SNSやフリーマーケットアプリを使った「個人間貸付」ですが、資金の出し手が「個人」を装った「ヤミ金融」である可能性が指摘されているのです。
この「二者間ファクタリング」では、債権の買主は売主にその債権の回収を委ねます。このため売主と買主との間で「債権回収業務委託契約」を結びます。これは「売主が債権の請求・回収を無償で行う契約」です。
また、約款上では「ノンリコースファクタリング」ですが、それを資金需要者に説明せず、実際には償還請求権を行使しているようです。
この「二者間ファクタリングを装ったヤミ金融」(えせファクタリング)は、実質的に法定金利の上限を超える「 債権担保付貸付」であることが問題なのです。「えせファクタリング」の実質金利は年率100%~360%に上るものまであるそうです。
しかし、これを具体的に取り締まる法律がない上に、「被害者」がなかなか届け出ないため、実態把握が困難なようです。
「特殊詐欺」もそうですが、最近は犯罪の手口が高度化・巧妙化していますが、これはIT技術を駆使した新しい金融サービスである「正当なフィンテック(金融テクノロジー)」ではなく、「脱法行為」の「犯罪」です。「貸金業法」や「利息制限法」に抵触する行為と考えられます。
4.「えせファクタリング」増加の背景
「貸金業者登録数」は昭和61年には47,000社以上ありましたが、平成29年には1,800社ほどに激減しています。
この原因は、①法定の上限金利が段階的に引き下げられ、採算の維持が厳しくなったこと、②過払い金返還請求により、多額の損失が発生したこと、③リーマンショックの信用収縮により、資金調達が困難になった時期があったことなどです。
平成22年に施行された「貸金業法」は、多重債務者を減らすことが目的でしたが、多重債務者だけでなく貸金業者も減らすという皮肉な結果となり、「貸金業禁止法」とも揶揄されています。
その影響で巧妙な手口を使った「ヤミ金融」が跳梁跋扈することになったのでは、元も子もありません。