<2023/5/18追記>「引きこもり」の定義と最新の統計数字
内閣府が2023年3月31日に公表した推計値によると、「引きこもり」は15~64歳で146万人います。
「自室または自宅から出ない、近所のコンビニエンスストアなどや趣味の用事などだけは外出するといった状態が6カ月以上続いている」という定義で調査し、うち2割は新型コロナ禍がきっかけでした。
内閣府は若年層(15歳-39歳)を対象に調査してきましたが、引きこもりが長期化したり、中年以降に引きこもったりする人が増え、2018年12月に中高年層(40歳-64歳)を対象とする初の調査を行ない、若年層54万1000人より多い61万3000人の中高年層の引きこもりがいると推計しました。
また厚生労働省は「就学や就労、交遊などの社会的参加を避けて、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」と定義しています。
1.「8050問題」
これは現在日本で発生している家族に関する問題です。以前から「引きこもりの若者の存在」が問題になっていました。
「引きこもり」とは違いますが、かつて「パラサイト症候群」とか「パラサイト・シングル」というのが問題になりました。これは、「学校卒業後も引き続き親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者」のことです。
話を元に戻しますが、引きこもりの若者も何十年も経つと中高年になり、両親も高齢になります。そうなると親の収入も乏しくなる一方、親の介護の問題も出て来ます。
「80歳の親が50歳の引きこもりの息子(娘)の面倒を見なければならないことによって起こる様々な問題」が「8050問題」です。
2.「引きこもり(ひきこもり)」の定義
「引きこもり」と言うと、テレビドラマなどでよく見る「いじめなどが原因で不登校になり、部屋にずっと閉じこもって、部屋を暗くしてゲームばかりやっている」とか、「部屋の中で大きな声で叫んだり、物を投げつけたりして部屋の中が散乱している」ような病的な状況を想像しますね。
しかし、厚生労働省の定義では、「ひきこもり」は単一の疾患や障害の概念ではなく、「さまざまな要因によって社会的な参加の場面が狭まり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態」とされています。
ですから、定年退職後ずっと家におり、自治会の運営や行事に参加することもなく、近隣住民との交流も全くない男性などもこの「ひきこもり」に該当することになります。
ひきこもりには、統合失調症などの精神疾患や発達障害などにより周囲との摩擦が生じて引きこもる場合と、そういった疾患や障害などの生物学的な要因が原因とは考えにくい場合があります。
後者は対人関係の問題などが引き金となり、社会参加が難しくなってしまったもので、「社会的ひきこもり」と呼ばれることもあります。
ひきこもりの人々の様相は多彩ですが、ひきこもりが長期化するのは、生物学的側面、心理的側面、社会的側面から複数の要因が混在しています。
厚生労働省では、「ひきこもり」を精神保健福祉の対象とし、平成15年に援助活動や福祉サービスの他NPOなど支援施設による様々な施策のための『「ひきこもり」対応ガイドライン』を策定しています。
3.「中高年引きこもり」の実態
(1)年齢・性別内訳
①年齢別内訳
40代が38%、50代が36%、60代が26%
40代は「就職氷河期世代」に当たるためか、「40代引きこもり」の半数は20代に引きこもりになっています。
60代は、定年退職後に居場所を失って引きこもりになり、長期化するケースがあるようです。
②性別内訳
男性が75%、女性が25%
(2)原因
「退職」が40%、「人間関係がうまく行かなかった」が20%、「病気」が20%、「職場になじめなかった」が20%となっています。
4.今後の課題
今後も、引きこもりの中高年の子供をかかえる高齢の親が、経済的にも精神的にも限界を迎えるケースが増えて来るでしょう。
また、彼らが社会から孤立化し、「親子で孤立死」したり「無理心中」したりするケースが今後増えて来ることも予想されます。
これについては、今後地方自治体など行政による「実態調査」と、「人間関係に煩わされない軽作業」など引きこもりの人にも取り組み可能な「就業支援研修」などの「継続支援」の必要がありそうです。