ノストラダムスの大予言は元々眉唾で、五島勉氏の本も終末思想を煽る小説だった

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ノストラダムス

「占い」というのは、昔から根強い人気があります。1980年代の一時期「占いブーム」があり、テレビのバラエティー番組に「六占星術」の占い師の細木数子さん(1938年~ )や、霊能力を持つという「自称霊能者」の冝保愛子さん(1932年~2003年)がよく出演していました。

そして「ノストラダムスの大予言」というのも、ブームになったことがあります。

1.ノストラダムスとはどういう人物か

ミシェル・ノストラダムス(1503年~1566年)は、ルネサンス期フランスの医師・占星術師・詩人です。彼の「予言」は、現在に至るまで多くの信奉者を生み出し、さまざまな論争を巻き起こしてきました。

彼はプロヴァンスに生まれ、アヴィニョン大学で教養科目を、モンペリエ大学で医学を学び、南仏でのペスト流行時には、積極的に治療に当たっています。

他方、1550年頃から、「占星術師」としての執筆活動も始め、代表作『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』(初版1555年)などを著し、当時大いにもてはやされました。王妃カトリーヌ・ド・メディシスら王族や有力者たちの中にも、彼の予言を賛嘆する者が現れ、1564年には、国王シャルル9世から「常任侍医兼顧問」に任命されますが、2年後に病没しています。

王妃カトリーヌが、自分の子供たちの未来を占わせたところ、彼は「4人のご子息はみな王になる」と予言したそうです。しかし、四男が早逝したことでこの予言は外れます。しかし「ご子息から4人の王が生まれる」という予言だったという説もあり、三男アンリがフランス王となる前にポーランド王となったため、正確な予言だったとする人もいます。

1559年6月30日、アンリ2世の妹マルグリットと娘エリザベートがそれぞれ結婚することを祝う宴の際に行われた「馬上槍試合」で、アンリ2世は対戦相手のモンゴムリ伯の槍が右目に刺さって致命傷を負い、7月10日に没しています。

現代では、しばしばこれがノストラダムスの予言通りであったとされていますが、1556年の王妃カトリーヌ宛の献辞では、1559年を「世界的な平和の年」と予言していました。

これでは「当たるも八卦当たらぬも八卦」と変わりないように見えますが・・・

2.「ノストラダムスの大予言」の内容は何か

『ノストラダムスの大予言』という本は、1973年に祥伝社から出版された作家・ルポライターの五島勉氏(1929年~ )の著書です。ノストラダムスが著した『予言集』(初版1555年)について、彼の伝記や逸話を交えて「解釈する」という体裁を取っています。

その中で、「1999年7月に人類が滅亡する」という解釈を掲載したことにより、公害問題などで将来に対する不安を抱えていた当時の日本で「ベストセラー」となりました。

五島勉氏によれば、パスツール・フランコ・ヒトラーやカギ十字といった歴史上の有名人や団体、あるいはクレジット、カーマニアといった社会現象に関する用語が、固有名詞入りで的確に予言されていたそうです。

その上で、「1999年7月に恐怖の大王が来るだろう」という予言について、「人類滅亡を予言したもの」だと「解釈」しています。

そして、環境問題、核兵器、彗星など「恐怖の大王」候補とされる各説について検証を行っています。また1999年までに襲い来る大気汚染・水質汚濁や大震災による陰惨な未来像を展開しています。さらに、1999年以降に生き残った僅かな人類を待ち受ける悲惨な運命についても言及しています。

最後に、1999年の人類滅亡が「別の大王」が現れることによって先延ばしに出来る可能性や、局所的な破壊にとどまり、人類が絶滅しない可能性への希望を表明しています。

3.「ノストラダムスの大予言」の問題点と本質

日本でも平安時代に仏教思想に基づく「末法思想」というものが広まりました。

19世紀の終わりには、「世紀末思想」「終末論」というものが、フランスから始まってヨーロッパ各国に広まりました。具体的には「懐疑主義」「唯物主義」「厭世主義」「刹那的快楽主義」などです。

1973年には、小松左京氏(1931年~2011年)のSF小説『日本沈没』が出版され、ベストセラーとなりました。

私は、五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』という本も、『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』の原典も読んでみたいとは思いません。

小松左京氏の『日本沈没』も、出版当時私は拾い読みしただけでしたが、阪神淡路大震災や東日本大震災、大阪北部地震を含む最近の地震の多発を経験して、昨年7月にじっくり読み直しました。その結果、この本は、私が当初考えていた「いたずらに人々の不安をあおる荒唐無稽なSF小説」ではなく、科学的な検証も加えていることを再認識しました。

しかし、五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』は、原典が「眉唾物」のような気がする上、彼の「解釈」による「小説のようなもの」なので、「都合のよい解釈」のような気がして信用できません。

この本は、20世紀の「世紀末思想」の一つの現れだったのかも知れません。しかし、人類の滅亡が先延ばしできる可能性を述べたところに出て来る「別の大王」を新興宗教の教祖が自分のことだと「僭称」したりして、後の「オウム真理教」などの新興宗教にも影響を与えたようです。

どこの会社にも、自分は何もしていないのに部下の業績を自分の業績のように吹聴し、失敗については部下に責任を押し付けるずるい上司がいるものですが、上記の新興宗教の教祖も似たような人種かもしれません。

そういう意味で、社会的にも悪影響を及ぼした本のような気がします。