最近、「キレる老人」が増えて来たそうです。かつて「キレる若者」(「キレる17歳世代」「理由なき犯罪世代」「酒鬼薔薇世代」)が、2000年前後に凶悪犯罪を犯して社会問題になりました。
「キレる老人」問題は高齢化社会に特有の現象なのでしょうか?今回はこれについて考えてみます。
1.キレる老人
(1)「最近の若い者は・・・」という愚痴
よく老人が「若者のマナーの悪さや気概のなさ」、あるいは「気が利かない、付き合いが悪い」のを嘆いて「今どきの若い者は・・・」という愚痴や批判を口にすることがあります。
これは現代に始まったことではなく、古代ギリシャの哲学者プラトン(B.C.427年~B.C.347
年)も次のように述べています。
最近の若者は、目上の者を尊敬せず、親に反抗、法律は無視、妄想に耽って道徳心のかけらもない。このままだとどうなる?
プラトンより遡って紀元前1680年ごろに誕生した「ヒッタイト古王国」(現在のトルコ付近)の粘土板で作られた書簡に「最近の若者は・・・」という若者の現状を嘆く言葉が記されているそうです。
さらに遡って紀元前3000年ごろのエジプトの遺跡から「最近の若者はなっていない。わしの若いころは・・・」という象形文字が見つかっているそうです。
(2)雷親父(かみなりおやじ)
「昔はよく雷親父がいて、よその子供でも悪いことをしていると叱りつけた」という話をよく聞きます。
確かに私が子供の頃は、大人たち(特に長老)には権威があり、たまに大声で怒鳴られることもあったように記憶しています。
しかし私たちのような「戦争を知らない子供たち」である戦後生まれが親になるころには、「儒教教育の否定」や「暴力の否定」「民主主義教育」のお陰か、「親の権威や威厳」は失墜し、子供が親や教師をなめてかかるような風潮が出て来ました。
下手によその子供に注意でもしようものなら、「逆切れ」されて暴行される恐れもあります。
(3)キレる老人の特徴
現代のキレる老人には次のような特徴があると言われています。
①周りに知り合いや友達がいなくて孤独なこと
②時代の流れについていけず不安なこと
③やることがなく、1日をどのように、何をして過ごせばよいかわからないこと
④本音を聞いてくれる人がおらず虚しい気持ちがあること
⑤プライドが高いこと
2.キレる若者との共通点と相違点
(1)共通点
感情が爆発するにまかせて発言したり行動したりする「すぐキレる人」には、老人や若者の区別なく次のような共通の特徴があると言われています。
①驚くほどすぐに熱しやすく冷めやすい
②プライドが高くメンツを保とうとする
③とにかく自分が可愛いナルシスト
④自分の考えが常に正しいと思っている
⑤事前に報告や相談をすることを求める
⑥少しでも自分に不利益なことが許せない
⑦普通は気付かない細かいことが気になる
⑧周りの人からの評価が気になる
⑨強そうに見えても意外に実は小心者
⑩怒ることで自分の立場を作ろうとする
(2)相違点
「キレる17歳世代」の場合は、「理由なき反抗」「理由なき犯行」「権威や規則・束縛に対する反抗」という面がありましたが、「キレる老人」には「今どきの若者に対する憤懣」と「現代の社会・世相への不満」「AIやインターネットなどのテクノロジーの進化についていけない苛立ち」という面が強いように私は思います。
3.老人がキレないようにするための対策
(1)怒りを溜め込みすぎず、適度な形で吐き出す
感情を暴発させるのではなく、適切な注意・苦言をマイルドに与えて、相手に落ち度があったことを自覚させるようにすることです。
アリストテレス(B.C.384年~B.C.322年)も、怒りについて次のように述べています。
「怒ることは誰にでもできる。ただ怒るのは簡単なことである。・・・しかし、適切な相手に、適切な程度に、適切な場合に、適切な目的で、適切な形で怒ることは容易ではない」
(2)怒る前に、一呼吸おいて怒りの感情を鎮める
「アンガーマネジメント」(怒りをコントロールする方法)に、「6秒ルール」というのがあります。
怒りの神経伝達物質ノルアドレナリンのピークは6秒と言われており、6秒待つと怒りは収まって来るそうです。
(3)「コーヒーブレイク」のような一服する時間を持つ
コーヒーやお茶を飲んで一服すると怒りやイライラが鎮まります。
(4)一晩寝てから言う
睡眠中に、脳は感情の整理もします。昼間には怒り心頭に発しても、寝ている間に感情が整理され、翌朝には「まあいいか」と思えるようになることも多いものです。
(5)ブログに自分の意見を書く
私のこのブログも、政治・経済・国際関係や社会問題など私が興味を持った様々なテーマについて自分の考えや意見を織り交ぜて記事を書いていますが、これも怒りが爆発しないように「昇華」させる良い方法の一つだと私は思っています。