<2023/2/14追記>「補陀落渡海」の記事もあわせてご覧ください。
「補陀落渡海(ふだらくとかい)は千日回峰行よりスゴい究極の捨身行!」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。
皆さんは「千日回峰行」(千日回峰)とはどういうものかご存知でしょうか?言葉を聞いたことはあるけれども「比叡山で千日間かけて行う荒行」という程度の認識しか持っていない方がほとんどでしょう。
1.千日回峰(行)とは何か
「千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)」とは、滋賀県と京都府にまたがる「比叡山」の山内で行われる「天台宗の回峰行」の一つで、「満行者」は、「北嶺大行満大阿闍梨」と呼ばれます。
「千日」と呼ばれる行ですが、実際に歩く日数は「975日」です。「悟りを得るためではなく、悟りに近付くためにやらせてもらっている」ことを理解するための行であるとされています。
余談ですが、浄土真宗の開祖である親鸞聖人も若い頃、煩悩に苦しんで延暦寺で修行しましたが、結局悟りを開けなかったということを吉川英治か五木寛之の『親鸞』で読んだ記憶があります。
千日回峰行は7年間にわたって行われ、1~3年目は年に100日、4~5年目は年に200日です。無動寺で勤行後の深夜2時に出発、「真言」を唱えながら東塔、西塔、横川、日吉大社と260箇所で礼拝しながら、約30kmを平均6時間で巡拝します。
途中で行を続けられなくなった時は「自害」することになっています。そのための「死出紐」と短剣、埋葬料10万円を常時携行します。未開の蓮華の花をかたどった笠をかぶり、白装束・草鞋履きで行います。
5年700日を満行すると、「堂入り」です。これは無動寺明王堂で足掛け9日間(丸7日半ほど)にわたる断食・断水・断眠・断臥の「四無行」です。
行者は入堂前に「生き葬式」を行い、堂入り中は不動明王の真言を10万回唱え続けます。毎晩深夜2時には堂を出て近くの閼伽井(あかい)で閼伽水を汲み、堂内の不動明王に供えます。
堂入りを満了(「堂さがり」)すると、行者は「生身の不動明王」とも言われる「阿闍梨」となり、信者たちの合掌で迎えられ、以後は自分のための「自利行」から衆生救済の「利他行」に入ります。
6年目には、これまでの行程に京都の赤山禅院への往復が加わり、1日約60kmを100日歩きます。
7年目には200日行い、前半100日は全行程84kmに及ぶ「京都大回り」で、後半100日は比叡山中30kmの行程に戻ります。
なお、第二次大戦後、比叡山の千日回峰行を手本にして始められたものに、奈良県大峰山の千日回峰行があります。これは金峯山修験本宗金峯山寺の回峰行です。
2.千日回峰行の歴史
千日回峰行は、平安時代に天台宗の僧である相応(831年~918年)が始めたとされています。
記録が残っているのは、1571年の織田信長による比叡山の焼き討ち以降ですが、千日回峰行を満行したのは、51人で、そのうち3人は「2回満行」を達成しています。最後の達成者は、天台宗の「大僧正」になった酒井雄哉氏(1926年~2013年)です。彼が2度目の満行を達成した時は千日回峰行史上最高齢の60歳だったと言いますから「超人的」です。
プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎氏(1932年~ )のような人だったのかも知れませんね。
3.千日回峰行に挑んだのはどのような人々か
昔は「身分社会」で、身分・縁故・財力のない「下層階級」の僧侶は、通常のルート・修行ではなかなか僧侶の世界でも「上位の階級」になれないので、そのような人々がこの「命がけの荒行」に挑戦したという話を聞いたことがあります。
千日回峰行の途中で「行き倒れ」になったり「病死」した人も多かったのではないかと思います。
4.不正行為はなかったのか?
ところで、この千日回峰に「不正行為」はなかったのでしょうか?マラソン競技のような「監視員」や「審判員」はいたのでしょうか?たとえば「伴走者役」の僧侶が交代で付き添うとかか、260箇所ある「礼拝」する場所全てに僧侶がいて、真夜中でも起きてチェックしていたのでしょうか?「堂入り」中の「四無行」の違反行為がないかのチェックはどうなっていたのでしょうか?
天の邪鬼かも知れませんが、「24時間マラソン」や「アメリカ大陸横断レース」などとは比べものにならない「過酷なレース」のように見えます。このような荒行を「不正行為」なしで、本当に達成できた人がいたとは信じられません。
中国のマラソン大会で折り返し点の手前でUターンして「ショートカット」する選手がたくさんいる様子がテレビで報じられていました。
このような明らかな違反でなくても、行程の「手抜き」や、「堂入り中」の「水分補給」のようなことがあったのではないかという疑問が残ります。
それとも、この「千日回峰行」は、ゴルフと同様に「自分自身が審判員」ということなのでしょうか?
それに、常識的に考えて、「四無行」というのを本当にすれば、命を落とすことは明らかで、「水などの差し入れ」なしに本当にやっていたとすれば、現代なら比叡山の最高責任者(大僧正か?)は「業務上過失致死罪」に問われかねないのではないでしょうか?また、失敗した場合に「自害」を求めていたとすれば、「自殺教唆・ほう助罪」に問われるかもしれません。
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コメント
コメントありがとうございます!
千日回峰行に不正はなかったのかという視点興味深く読ませていただきました。
私など、大阿闍梨を目指す方々はみんな聖人君子みたいな人々だと思い込んでいたので、よくもそんなリスキーなチャレンジをされるなーすごいなーと感心していただけでしたので笑