私が子供の頃、ラジオで「時計・宝石・宝飾品」のCMで、「〇〇は、百貨店か信頼の置ける専門店でお買い求めください」というのを聞いたことがあります。
「安売り店」や「祭の露店」などで売っている商品は「二流品」か「偽物」、あるいは「バッタもの」と相場が決まっていましたから、子供でも騙されることはありませんでした。
ところが、最近「実店舗」でない「インターネットの通販サイト」が普及し、あらゆる品目の商品がネットで購入できるようになりました。
「Amazon」「楽天市場」「ヤフーショッピング」などが大手ですが、従来カタログ販売を主としていた企業や、メーカーやデパートのオンラインショップも通販サイトを開設しています。
1.「Amazon」の「AI」が「高級ブランド」の偽物に騙された
前に「AIの過信は危険」という記事を書きましたが、「Amazon」の「AI」検査システムが一部の出店業者による「偽ブランド品(模造品)」を見逃していたことが発覚しました。
今年4月の日本経済新聞の報道によれば、「アマゾンで、大手ブランド品の模造品が野放しになっている」ということです。
他の通販サイトよりも「出品者登録」に関する審査が甘く、悪質業者による不正出品が集中しているとのことです。
「Amazon」では省力化のため「AI」を使って高級ブランド品の鑑定を行っているそうです。第一段階の判定として「AI」を活用するのはよいとしても、それを最終判定として採用し、「Amazon推奨商品」(アマゾンズ・チョイス)としたことは、大いに問題がありそうです。
確かに値段が正規品としては安過ぎる値段なので「怪しい」と思う人は多いのではないかと思いますが、「Amazon推奨商品」となっていると騙される人も多くなるのではないかと思います。これでは、結果的に「詐欺の片棒を担いでいる」と言われかねません。
「高級ブランドの偽物」問題は、ネット市場だけに限らない深刻な問題です。最近は偽物も精巧になって来て、専門家でも見分けがつきにくいものも現れているようです。
2.「AI」と「高級ブランド品」鑑定
絵画や古美術品などの美術品や宝石の真贋鑑定も、なかなか難しい問題があることは、皆さんご存じのとおりです。
「高級ブランド品」についても、いくつかのチェック項目について判定ポイントを「AI」に記憶させているのでしょうが、詐欺犯罪がどんどん巧妙化するのと同じように、偽物もどんどん本物に近付く進化を遂げているのだと思います。
やはり、最後は熟練した人間の目で見て、触ってみて判断するしかないように思います。税関の高級ブランド品をチェックする専門官のアドバイスを受けるか、直接メーカーの担当者に確認してもらうくらいの慎重さが必要だと私は思います。
3.「Amazon」の審査の甘さ
しかし、「ヤフーショッピング」や「楽天」が安全だという保証はどこにもありません。購入者が取れる手立ては限られています。「デパートか信頼の置ける専門店の実店舗」で購入するというのが一つの方法です。ただし、1964年に北大路魯山人の偽物の書画や陶器が白木屋で売られる事件もありましたので、万全とは言えません。
やはり、「ネット通販サイト業者」サイドで、「高級ブランド品の偽物対策」を業界全体として考えてもらう時期に来ているのではないでしょうか?
なお、アマゾンジャパンは10月9日に、Amazon.co.jp上で、偽造品の撲滅を目指す「Project Zero」を始めたと発表しました。機械学習を活用して、偽造品の疑いのある商品を検知するほか、プロジェクトに参加する企業には、発見した偽造品を削除する権限を与え、偽造品をスピーディーに削除する体制を整えるとのことです。
4.模造品(模倣品)急増の背景と対策について
インターネットのオークションやフリーマーケット(フリマ)サイトで模造品(模倣品)販売が急増しているそうです。
模倣品排除を目的とする一般社団法人「ユニオン・デ・ファブリカン(UDF)」(東京都千代田区)に寄せられるメーカーやブランドなどからの削除依頼は、2015年には9万件あまりだったのが、2017年には100万件以上に激増したそうです。対策を強化したことで2018年には32万件あまりに減少しましたが、2019年1月末時点で85万件あまりと再び増加傾向にあるそうです。
背景には、中国を中心とした海外からの組織的出品があるとの見方が強いそうです。「モグラたたき」のような状態ですが、中国政府は「模倣品の被害が海外で起きている場合は、国内法では摘発できない」と主張することが多く、日本政府も対応に苦慮しているようです。