<エドワード6世(イングランド王)>
つい先日、トランプ大統領の姪で臨床心理士のメアリー・トランプ氏が、「TOO MUCH,NEVER ENOUGH(『もうたくさん、二度とゴメン』という意味)」というタイトルの暴露本を出し、その中でトランプ大統領がペンシルベニア大学ウォートン校を受験する際に「替え玉受験」をしていたことを暴露しました。元大統領補佐官のボルトン氏の暴露本出版などで無能さが露見して再選に黄色信号が点灯し、ゴルフでもインチキをするとの噂のある大統領のことですし、しかも身内からの証言なので信憑性は高そうです。
ラーメン店で、麺を食べた後の「麺の身の追加注文」も「替え玉」と言いますが、今回ご紹介するのは、「にせもの」という意味の替え玉です。
1.王子と乞食
「トム・ソーヤーの冒険」で有名なアメリカの作家マーク・トゥエイン(1835年~1910年)に、児童向け作品「王子と乞食」があります。
1537年10月12日に、イングランドで二人の男の子が生まれました。一人は「王子」で、もう一人はロンドンの貧民街に住む「乞食」です。
「王子」のモデルは16世紀半ばにイングランドに実在した人物で、エドワード王子(エドワード・テューダー)です。彼は後に「エドワード6世」(イングランド王)となりますが、15歳で夭折します。
エドワードは、堅苦しい宮廷生活に飽き飽きしており、外の自由な暮らしに憧れていました。
一方「乞食」はトム・カンティという架空の人物で、酒におぼれ暴力を振るう父親と、トムを守ろうとする母親と姉の中で育ちます。トムは金もなくパン一つ買えずに、常に飢えと寒さに震え、物乞いをする毎日でした。
ある日、トムは王子を一目見たいと思い、宮殿に入ろうとします。そこに通りかかった王子はトムを歓迎し宮殿の中へ案内します。生まれも境遇も正反対の二人ですが、話し合っているうちに親しくなります。トムが王子の服装に憧れていることを知り、服を交換します。二人の顔は瓜二つで、服を交換しても全く違和感がありません。
エドワードはぼろ服を着ると、門番から乞食と間違われ、宮殿の外へ放り出されます。王子は貧しいが自由な暮らしに憧れますが、法律の不条理さを知り、怒りを覚えます。また、貧しい人々の温かい心に触れて、感動を覚えます。
一方、トムは憧れの上流階級の暮らしに戸惑うものの、次第に慣れて行きます。トムは貧しい時に培った優しさを忘れずに人に接しますが、次第に置かれた立場の重さに、恐れを抱くようになります。
今までの暮らしの中では想像もできなかった正反対の環境に置かれ、二人は後の人生を変えるほどの貴重な体験をしたのです。
マーク・トゥエインが言いたかったのは、冒頭に引用されている「ベニスの商人」の次の言葉でしょう。
「慈悲の本質には・・・・・二重の恩恵がある。
慈悲は、これを与える者をも受ける者をも幸福にする。
最も力ある人にあっては更に最高の徳である。
慈悲は君主にとって、その王冠にも数倍にしてふさわしいものである」
2.替え玉受験
1991年になべおさみが、息子のなべやかんの明治大学受験に当たり、「替え玉受験」させたということでニュースになったことがあります。
この事件の発覚により、警察が捜査した結果、1984年~1990年にかけて20人以上が「組織的な替え玉受験」により合格していたことが判明しました。
なぜ、これほど大量の「替え玉受験」が7年間も見破られずに行われていたのか不思議な気がします。これはひょっとすると「替え玉受験」の仲介者と「裏口入学」の仲介者とが組織的につながっていたのではないかと思います。
また、不正入試を見逃していた大学側も責められる問題だと思います。
1975年の津田塾大学の受験で、父親が女装して娘の代わりに替え玉受験しようとして、二日目に発覚するという「受験史上最大の珍事件」もありました。父親は娘のためにと必死の覚悟での替え玉受験だったのでしょうが、その後この父娘の人生がどのようになったのか、他人事ながら気になります。ちなみに父親は高校教師でした。
3.替え玉出頭
議員などがひき逃げなどの交通事故を起こした時に、秘書や身内の誰かが身代わりに出頭したというニュースが時々あります。
また、暴力団幹部が起こした事件について、組の若い者が身代わりになって出頭して服役し、出所すると「二階級特進」するという話を聞いたこともあります。