<2022/9/9追記>エリザベス女王が9月8日、老衰のため96歳で亡くなりました。
謹んでご冥福をお祈り致します。
最近のテレビ番組は面白いものが少ないので、「私が必ず見るお気に入りの番組」というのは皆無です。
そのため、あらかじめテレビ番組欄を読んでおいて、視聴する番組を選ぶということは全くありません。
この間、たまたまテレビを見ると、この番組に出会いました。
1.「アナザーストーリーズ運命の分岐点」とは
BSプレミアムで毎週火曜日21:00~22:00放送(再放送は、放送次週月曜日23:45~00:45)です。内容は「歴史的事件などの裏側にある真実、隠れた物語を探る番組」です。
このような番組がもっと増えて、歴史に興味を持つ人や歴史が好きになる人がもっと多くなれば良いと私は思います。
「番組ホームページ」によれば、コンセプトは次のようになっています。
ダイアナ妃の事故死、ベルリンの壁崩壊、ビートルズ来日…
人々が固唾を飲んで見守った、あの“出来事”。あの日、あの時、そこに関わった人々は何を考えたのか?
それぞれの人生はその瞬間、大きく転回し、様々なドラマを紡ぎ出していきます。
残された映像や決定的瞬間を捉えた写真を、最新ヴァーチャルで立体的に再構成。
事件の“アナザーストーリー”に迫る、マルチアングルドキュメンタリー。
2.2020年7月14日放送の「エリザベス女王希望のスピーチ」
私は、2020年7月14日の「エリザベス女王希望のスピーチ」を見ました。
イギリスのエリザベス女王(エリザベス2世)(1926年~2022年)は今年で94歳(2022年に96歳で死去)になりました。彼女は父方の祖父ジョージ5世治下のイギリス・ロンドンで、ヨーク公アルバート王子とエリザベス同妃の第一子・長女として生まれました。
彼女は元々王位に就く予定はありませんでした。1936年12月に父のアルバート王子が彼の兄であるエドワード8世の「退位」を受けてジョージ6世としてイギリス国王に即位したため、「推定相続人」(王位継承権第一位)となったわけです。
ちなみに「エドワード8世」(1894年~1972年)は、離婚歴のある平民のアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと結婚するため、イギリス国王として歴代最短の在任期間(325日)で退位した「王冠を賭けた恋」で知られる人物です。
また元々国王になるつもりもなかった父の「ジョージ6世」(1895年~1952年)は、王位を押し付けられた形である上、吃音症(どもり)のため、スピーチを苦手としていました。しかし言語療法士の助けを借りて吃音を克服し、第二次世界大戦がはじまった1939年9月3日に全国民向けに堂々と国民を鼓舞する演説をしました。これは「英国王のスピーチ」という映画にもなり、私も見ました。
エリザベス1世(1533年~1603年、イングランドとアイルランドの女王在位:1558年~1603年)も、見事なスピーチ(ティルベリー演説)をして危機を切り抜けました。
エリザベス2世も、数々の危機を「スピーチ」で乗り越えて来ました。
第二次世界大戦の真っただ中、14歳のエリザベスが疎開中の300万人の子供たちを勇気づけるために行った初めてのラジオスピーチ。
「明日の世界をより良く、より幸せにするのは、私たち子供たちなのです」とエリザベスは力強く語りかけました。それから隣にいた妹のマーガレットと一緒に「おやすみなさい」と言いました。シンプルながら胸に響くスピーチでした。このスピーチにたくさんの子供たちが勇気をもらったようです。
エリザベスが女王になってから、毎年恒例のクリスマス以外に、時事問題に対応してスピーチを行ったことは四回しかありません。
一回目は「湾岸戦争」の時です。
二回目は「ダイアナ元皇太子妃が亡くなった時の長い沈黙の後のスピーチ」です。女王とダイアナ妃との関係についてはさまざまな確執が伝えられており、女王がダイアナ妃が亡くなっても何ら哀悼の意を表さないことに国民の間では女王を非難する声が高まっていました。そして長い沈黙の後、国民のダイアナ妃に対する敬愛の念がいかに強いかを悟り、女王はようやくダイアナ妃を哀悼するスピーチをしたのです。
三回目は「クイーン・マザー(王大后)崩御」の時です。
そして四回目が2020年4月4日の「新型コロナウイルスのパンデミックに直面するイギリス国民に希望を持たせる演説」です。
「ますます困難を極める現状について皆さんに話したいと思います」と始めると、まずイギリスのNHS(国民保健サービス)のスタッフや不可欠な業務に従事する作業員たちの献身に感謝の意を表し、そして自宅にとどまっている人々に対しても謝辞を述べました。「私たちは一緒にこの病と闘っています。私たちが一致団結し、毅然と立ち向かうならば、克服できるでしょう」
それから将来を見据えてこう語りました。「私は後年、皆さんがこの困難をどう乗り越えたか誇りに思えるようになることを願っています。これから生まれてくる人たちは、この世代のイギリス人はこの上なく勇敢だったと言うに違いありません。自律心、静かながらもユーモアを秘めた意志の強さ、仲間を思う心といった気質が今日も、この国を特徴づけるものとなっています。私たちが何者であるかについて抱く誇りは過去の一部ではなく、私たちの現在、そして未来を定義するものです。
このように心に響くスピーチを、日本では天皇にしても、首相にしてもあまり聞きません。唯一私の心に響いたスピーチは上皇后美智子さまの「子供の本を通しての平和ー子供時代の読書の思い出ー美智子」というスピーチです。
1998年の「第26回国際児童図書評議会ニューデリー大会」での皇后の格調高い英語での基調講演「子供の本を通しての平和ー子供時代の読書の思い出ー美智子」を、私は日本語のビデオで見ましたが、とても内容が濃いもので、皇后の深い教養と品格を感じさせる感銘深いものでした。新美南吉の「でんでんむしのかなしみ」という童話はこれによって大変有名になりましたね。