国際医療福祉大学の高橋泰教授の「コロナ新仮説」をわかりやすく紹介します

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高橋泰コロナ新仮説

「新型コロナウイルス肺炎」は、7月に入って東京のみならず大阪・愛知・福岡・兵庫・神奈川などで連日のように「PCR検査陽性」の国内感染者数が急増し、国民の間に不安が高まっています。「すでに第二波が発生している」「第二波の真っ只中」という意見もあるようです。

毎日のテレビのニュースや情報番組でも盛んに取り上げられ、一部の知事・東京都医師会や野党からは「政府の無策」を糾弾する発言が相次いでいます。

ただ誰も彼もがコロナを話題にして恐怖感を持ち、マスコミもコロナ一辺倒で不安を煽っているように見えます。私は個人的には、「コロナ狂騒曲」とでも呼ぶべき現象だと思います。

そのようなコロナに翻弄されている社会風潮の中で、新型コロナウイルスに関する新仮説」を提示して注目を集めている人物がいます。国際医療福祉大学大学院教授の高橋泰氏です。

今回はこの高橋泰教授の「新仮説」をわかりやすくご紹介したいと思います。

1.高橋泰教授の「新仮説」とは?

新型コロナウイルスの全体像

(1)新型コロナウイルスに関する3つの仮説

仮説①:インフルエンザより毒性が弱い

仮説②:ある程度の日本人が既に感染し、気が付かないうちに治っている

仮説③:日本の死者は最大で3800人

高橋泰教授によれば、「新型コロナウイルス」は「暴露力」(人の体内に入り込む力)が強いそうです。しかし、「感染」しても、インフルエンザに比べてウイルスの「増殖力」や「伝染力」は弱く、「毒性」(ヒトの細胞を刺激したり破壊したりする力)は弱いそうです。

新型コロナに感染して細胞から排出されると、毒性も増殖力も弱いので、当初は身体が自然免疫で対処可能な敵と判断し、98%程度は自然免疫で処理され、完治するそうです。

マクロファージなど異物を食べる貪食細胞で構成される第一次防衛網である「自然免疫」で抑え込んでしまうので、「獲得免疫」はなかなか発動せず、抗体ができにくいそうです。

これに対して、インフルエンザの場合は毒性が強いので、第二次防衛網である「獲得免疫」が早期に発動するので抗体ができやすいそうです。

新型コロナのごく一部は、自然免疫の攻撃をかいくぐることがありますが、その場合は獲得免疫が出動して新型コロナを殲滅します。

さらにそのうちのわずかな率ですが、一部の人では「免疫機構の暴走」である「サイトカイン・ストーム」を引き起こして重症化し、死に至ることがあります。高齢者・体力の弱っている人や高血圧・肥満の人は「サイトカイン・ストーム」のリスクが高くなるそうです。

これは私が前に記事に書いた「集団免疫」の問題に通じるものです。

(2)日本人の重症化率・死亡率が欧米に比べて低い3つの要因

日本人の重症化率・死亡率が欧米に比べて低い要因は次の3つです。

要因①:環境面

リスクの高い高齢者をウイルスから隔離する仕組みを高齢者施設で徹底し、高齢者一人一人の自主的な隔離も行われていたこと

要因②:自然免疫

日本人は欧米人に比べて何らかの理由(BCG説などの説あり)で自然免疫が強いこと

要因③:体質

日本人は欧米人に比べて「サイトカイン・ストーム」の起きる率が低く、起きても血栓ができにくく重症化しにくいこと

(3)すでに日本人の30%が「暴露」しているという推測の根拠

これは「すでに日本人の30%が知らないうちに新型コロナに感染し、気付かないうちに治っている」という推測です。

重症者数・死亡者数のデータをもとに「暴露率」をいくつか設定してシミュレーションした結果だそうです。そこからさらに日本人全員が暴露した場合の重症者数と死亡者数の予測を行ったとのことです。

2.高橋泰教授の「感染ステージ別モデル」とは?

高橋泰コロナステージモデル

高橋泰教授は上図のような新型コロナウイルス「感染7段階モデル」を提唱しています。

これは新型コロナ感染の段階を、ステージゼロからステージ6までの7段階に分類し、各ステージに至る確率や要因を「見える化」したものです。

7段階モデルでは「自然免疫」が、軽症と重篤化の重要な分岐点となっています。

シミュレーションの結果、次のような結論に達したそうです。

①人口の少なくとも3割程度はすでに新型コロナの暴露を経験しており、最大45%が暴露した可能性がある

②暴露した人の98%は「ステージ1」か「ステージ2」の無症状か風邪の症状で治癒した(つまり「自然免疫」で対処できた)

③暴露した人の2%で「獲得免疫」が出動した、つまり「ステージ3」「ステージ4」に至った

④さらに暴露した人の2%のうち、「サイトカイン・ストーム」が発生し重症化(ステージ5)に至った人がおり、20代では暴露者10万人中5人、30歳~59歳では同1万人中3人、60歳~69歳の層では同1000人に1人、70歳以上では同1000人に3人程度だった

3.都市部でのコロナの感染拡大をどう見るか?

コロナの都市部での感染拡大

上図で「水色の四角で囲んだ部分」が「新型コロナに暴露した人々」です。その中で色のついている人が「感染に至った人」です。

しかし、「青色で示した人」の多くは、自然免疫が強くほとんどが無症状か気付かないほどの軽症でウイルスの排出もほとんどなく、スプレッダーになりません。

また、「黄色の人」は「無自覚スプレッダー」で、一時的にウイルスを排出しますが、自然免疫で治ります。

発生確率は低いですが、自然免疫では抑えられず獲得免疫が出動し、風邪のような症状もかなり出て、ウイルスも多めに排出して人にうつす「オレンジ色の人」も出てきます。

さらに明らかな熱や咳などの症状が出たのが「赤色の人」で、PCR検査をしたら陽性となり入院することになります。

現在はPCR検査をどんどん増やしているため、陽性者の数が増えていますが、3月下旬は検査数は少ないでしたが、「実効再生産数ピークだったとのことです。「この時期に今ぐらいのPCR検査をしていれば今の数十倍から数百倍の陽性者が見つかっていたのではないか」と高橋泰教授は見ています。

4.PCR検査を増やす意味はあるのか?

PCR検査

PCR検査陽性者数を重要視するのは疑問だと高橋泰教授は指摘しています。抗体があってもPCR検査で陽性になりうるし、陰性と言われても次の日には暴露して陽性になるかもしれないのです。

PCRの「陰性」というのは、「検査時前の1週間程度は、新型コロナに感染していないこと」で、2週間前に感染していた可能性や検査直後の感染可能性は否定できません。そういう意味で「陰性証明」というのはほとんど意味がないそうです。

「感染者」に照準を当てて、無症状者の検査をどんどん拡大して、陽性者の入院や隔離を行うことは、医師や看護師などの医療従事者に過大な負担をかけ、医療資材を費消する一方、肝心の重症者に手が回らなくなる恐れがあります。

また、無症状なのに入院・隔離させられた人の社会・経済活動を制限するので、社会全体にとって大きな損失になります。

医学にはド素人の私ですが、新型コロナについても、「他の病気と同様に、自覚症状のある人は医者に診てもらい、PCR検査も受けるべき」だと思いますが、クラスターを追跡し、濃厚接触者に幅広くPCR検査を受けさせるという現在の対応は見直すべき時期に来ているように思います。

これは、私が前に記事に書いた「トリアージ」の問題だと思います。

5.世界で「検査陽性者数」は急激に伸びているが「死者数」の増え方はそれほどではない

新型コロナの死者数

世界的に見ても、日本と同様に検査数の拡大によって「検査陽性者数」は急激に伸びていますが、「死者数」の増え方はそれほどではありません。

それよりも、経済活の停滞に伴う自殺者急増の危険性が指摘されています。

また新型コロナの感染を怖がって健康診断を延期する人も多く(私もその一人です)、従来ならば発見されるはずの早期ガンの発見が遅れ、救えるはずの命が救えなくなることが危惧されています。

さらに「ステイホーム」によって体重が増えると、細胞表面のACE2アダプターが増え、感染と重症化の確率が上がるという研究報告もあります。

高齢者ではデイケア・デイサービスに行けず、認知症が進み、足腰が弱る人も増えているそうです。

この「新仮説」の正否はコロナ終息後に「検証」されることになりますが、以上のようなことを総合的に勘案すると、高橋泰教授の「新仮説」は傾聴に値するように私は思います。

日本政府や自治体首長におかれましては、「PCR検査拡大」や「活動自粛」「休業要請」一辺倒にならずに、これらも勘案の上、「コロナ対策の見直し」をぜひお願いしたいと思います。

コロナ感染予防対策の徹底は重要ですが、過剰な自粛は問題で、経済活動との適切なバランスを取ることは不可欠だと思います。



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