日本では7月30日に、福島県郡山市の改装工事中の飲食店で、プロパンガスボンベから漏れ出したガスが爆発する事故があったばかりですが、今回のレバノン・ベイルートでの爆発事故はそれをはるかに上回るものでした。
1.レバノン爆発事故
8月4日(日本時間8月5日)にレバノンの首都ベイルートの港湾倉庫で大規模爆発があり、137人が死亡、日本人1人を含む5000人以上がけがをしました。原因は現在調査中ですが、6年以上この倉庫に保管されていた爆発物の主要原料となる「硝酸アンモニウム」2750トンに、壁の穴を補修作業中の溶接の火花が引火したためのようです。「テロ」ではなさそうです。
「長年にわたる化学物質のずさんな管理」が原因だったようです。
2.天六ガス爆発事故
私が鮮明に覚えているのは、1970年(昭和45年)に起きた「天六ガス爆発事故」です。
これは大阪市営地下鉄谷町線延伸工事中の「天神橋筋六丁目駅」工事現場で起こったガス爆発事故です。死者79名、重軽傷者420名で、家屋の被害は全半焼が26戸、爆風による損壊336戸、爆風でドアや窓ガラスが壊れた家屋は1000戸以上に上りました。
地下鉄谷町線は、1970年3月の「大阪万博」開業前に東梅田ー天王寺間が開業し、事故当時は都島駅までの延伸工事中でした。
土を掘り起こしてコンクリート製の覆工板で覆った地下空間で作業が進められていました。事故原因となったガス管は、土が除かれむき出しのまま宙に浮いていました。ガス管の経年劣化や、掘削と埋め戻しの繰り返しによって管の継ぎ目が外れて、大量のガスが漏れだし、引火・爆発したようです。
当時は大阪万博を控え「突貫工事」で急いでいたことも間接的な原因かもしれません。
3.安全管理の重要性~失敗に学ぶべき~
現在日本各地で、ホテル・ビル・マンションの工事が行われていますが、「解体工事の足場」が落下したり、「解体工事現場のクレーン」が倒れたりする事故も発生しています。
このような工事に携わる方は、「ガス管」などについては、特に慎重な注意をしておられるとは思いますが、このような事故が発生しているのを見ると、一層の「安全管理の徹底」を願わずにはおられません。
また、レバノン爆発事故の原因となったような「化学物質などの危険物質の保管・管理」について、日本でも総見直しを行い安全性を再点検していただきたいものです。
今こそ、失敗に学ぶべき時です。
「失敗の科学」「失敗の研究」というものがあります。『失敗学のすすめ』で有名な東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏が提唱した新しい学問分野です。
「失敗学」とは、起きてしまった失敗に対し、責任追及のみに終始するのではなく、物理的・個人的な直接原因と背景的・組織的な根幹原因を併せて究明しようとする、安全工学に経営学などの要素を加味したものです。
しかし、『失敗学のすすめ』という本はこうした失敗の工学的メカニズムを明らかにするだけでなく、更に「人間が失敗から学んで進化を遂げるメカニズム」に焦点を当て、我々が進化を遂げて成功に至るカギは、「失敗とどう向き合うか」にあることを明らかにしています。
本書では、「医学界」の「医療過誤」と「航空業界」の「安全管理」の問題を取り上げています。
著者は、「誰でも、いつからでも能力は伸ばすことができる」と結論付けています。そして、そのために必要なのが失敗であり、人間が成長するプロセスに「失敗は欠かせない」と前向きに強く認識している人こそが成功者たり得るのだと言っています。
つまり、失敗は「避けるべきもの」あるいは「しても構わないもの」ではなく、人間の成長・成功のために「必要不可欠なもの」という考え方です。