涼しげな水中花と、美しい生花を閉じ込めたプリザーブドフラワー・ハーバリウム

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水中花・三本

「水中花」と言えば、団塊世代の私などは松坂慶子の「愛の水中花」という歌を真っ先に思い出しますが、江戸時代からある夏の風物詩です。

(松坂慶子) 愛の水中花
Vol.3_五木寛之 歌いながら歩いてきた【愛の水中花】

1.水中花(すいちゅうか)とは

水中花・グラス水中花・材料

「水中花」とは、水を入れたコップなどに造花や作り物の魚、鳥などを入れて開かせるものです。

日本には江戸時代に中国から伝来したとみられていますが、延宝年間(1673年~1681年)に酒席での遊びとして酒の杯に浮かべることが流行したため、「酒中花」「杯中花」の呼び名もあります。

明和年間(1764年~1772年)の頃からは、浅草の楊枝店のみやげ物として評判になり、縁日でもよく売られたそうです。

古くはヤマブキの茎やタラノキの芯、木片(かんな屑)などを加工・圧縮して作られましたが、現代のものは化学繊維で作られています。

戦後輸出された水中花

戦後、紙で作れる手軽さもあって「WONDER WATER FLOWERS」(上の画像)として海外にも輸出され、戦後復興の一助となったそうです。

なお俳句で「夏」の季語となっています。

・水中花 咲かせしまひし 淋しさよ(久保田万太郎)

・水中花 母も子も寝る 刻も咲く(池上不二子)

・子は飽きて 父はたのしや 水中花(中田みづほ)

2.プリザーブドフラワー

プリザーブド・フラワープリザーブドフラワー

「プリザーブドフラワー(Preserved flowers)」とは、生花や葉を特殊液の中に沈めて、水分を抜いた花材のことです。

つまり、生花の組織を保ちながら、水分とプリザーブド液とを入れ替える特殊な加工方法によって、みずみずしさと柔らかさを長期間保つことができる花材です。「プリザーブド」とは「保存された」という意味です。

「プリザーブド」という言葉が馴染みのないものであったため、一時期「ブリザードフラワー」という誤った呼称も広まりました。ちなみに「ブリザード(Blizzard)」は吹雪のことです。

英語では、「flower preservation」「floral preservation」とも呼ばれます。

1991年にフランスのヴェルモント社が特許保存技術を発表し、フローラルデザイナーたちが利用したことによって広まりました。

プリザーブド液と一緒に染料を吸わせることで、さまざまな色のバリエーションが楽しめる、生花とドライフラワーの両方の良さを兼ね備えた画期的な花として人気を集めています。

3.「ハーバリウム」

ハーバリウムハーバリウム4本

「ハーバリウム(herbarium)」とは、植物標本という意味です。元来は研究のために植物の状態を長期保存する方法として生まれたものです。

しかし現在では鑑賞目的で用いられるようになり、インテリアフラワーの主流となっています。

ハーバリウムは、プリザーブドフラワーやドライフラワーをガラスの小瓶に入れ、保存用の専用オイルに浸して作られています。

こうすることで、お花本来のみずみずしさを長期間保つことができ、しかも面倒な世話や手入れは一切不要です。

また、オイルによってもたらされる独特の透明感や浮遊感もハーバリウムの魅力の一つであり、普通の生花にはない楽しみと言えます。

幻想的なハーバリウム

少し暗い部屋でハーバリウムのガラスのボトルに光を当てれば、幻想的なお花の姿を楽しむこともできます。

4.その他の水中に咲く花

(1)梅花藻(バイカモ)

バイカモ梅花藻

「梅花藻(バイカモ)」とは、冷涼で流れのある清流に群生し、初夏から初秋にかけて水中や水面で白色の可愛らしい花を咲かせっる水草です。

キンポウケ科キンポウゲ属の多年草で、「梅鉢藻(ウメバチモ)」という別名もあります。

コロナ禍が起こる前の話ですが、私は滋賀県米原市の醒ヶ井(さめがい)地区にある地蔵川のバイカモを、バスツアーで見に行ったことがあります。ここではバイカモの群落が流域500mにわたって生育しているため、多くの観光客が訪れていました。

「梅花藻」は俳句で「夏」の季語ですが、歳時記ではキンギョモ・タチモ・フサモ・スギナモも含めて「藻の花(ものはな)」「花藻」と呼んでいます。

・藻の花や 小舟寄せたる 門の前(与謝蕪村)

・渡りかけて 藻の花のぞく 流れかな(野沢凡兆)

・藻の花の 重なりあうて 咲きにけり(正岡子規)

(2)花手水(はなちょうず)

花手水神社の花手水

「花手水」とは、神社やお寺にある手水舎(ちょうずや)の手水鉢に色鮮やかなお花を浮かべることです。

神社や寺院でお参りする前には、掲題にある手水舎で手や口を清めます。最近は新型コロナウイルスの感染を防ぐために、柄杓(ひしゃく)の共用だけでなく、手水そのものの使用を控える寺社が多くなってきました。

そこで、全国の寺社では参拝者に少しでも和んでもらおうと、手水舎や手水鉢を色とりどりの花で飾る「花手水」が広がっているようです。

私の故郷の高槻市にある野見神社には時折、氏子総代を務める花店の主人から「花手水」の奉納があるようで、遊び心があふれていて綺麗だと人気です。

「花手水」は奈良県明日香村の「岡寺」や京都府長岡京市の「楊谷寺」、京都市の「勝林寺」などでも行われているそうです。

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