前に「相手の誤りを指摘することの難しさ」に関する面白い話をご紹介しましたが、今回は「言葉の読み方や使い方を勘違いして覚えている人」のことについてお話ししましょう。これを他人が注意するのは、なかなか難しいことです。本人としては、正しいと思っているだけに厄介です。
私は子供の頃、テレビに出てくる「やくざいし」(薬剤師)という言葉を「ヤクザ(な)医師」と勘違いしていました。また「いしゃりょう」(慰謝料)という言葉も「医者(に払う)料(費用)」と勘違いしていました。
それでは私が見聞きした面白い例をご紹介しましょう。
1.女子事務員
私がある会社の社長に電話をかけた時、応対に出た女子事務員が、「社長さんは、ただ今外出しておられます」と答えました。身内のことを言う場合に「尊敬語」を使うのは、おかしいですよね。
「申し訳ございません。社長は、ただ今外出しております。後ほどこちらからお電話させましょうか?」ぐらいが普通の言い方だと思うのですが・・・
2.読み方を間違えやすい漢字
非力、依存、続柄、瑕疵、数多、御用達、間髪、年俸、貼付、完遂、相殺、一段落、大舞台、早急、舌鼓、脆弱、漸次、暫時、重複、乳離れ、他人事、諸刃の剣、凡例、河川敷、一日の長、押印、古文書、出生率、順風満帆、記す、出納、未曾有、遊説、代替、踏襲、詐取、侃々諤々、喧々囂々、云々、・・・
読み方を間違えやすい漢字の具体例をいくつか挙げてみました。
それぞれ、「ひりき」「いそん」「つづきがら」「かし」「あまた」「ごようたし」「かんはつ」「ねんぽう」「ちょうふ」「かんすい」「そうさい」「いちだんらく」「おおぶたい」「さっきゅう」「したつづみ」「ぜいじゃく」「ぜんじ」「ざんじ」「ちょうふく」「ちばなれ」「ひとごと」「もろはのつるぎ」「はんれい」「かせんしき」「いちじつのちょう」「おういん」「こもんじょ」「しゅっしょうりつ」「じゅんぷうまんぱん」「しるす」「すいとう」「みぞう」「ゆうぜい」「だいたい」「とうしゅう」「さしゅ」「かんかんがくがく」「けんけんごうごう」「うんぬん」です。
間違った読み方で覚えている言葉がいくつかあったのではないでしょうか?このように「間違った読み方」で覚えてしまった場合は、他人から指摘されることもあまりないので、間違いに気付くことが少ないのではないでしょうか?もしお役に立てれば幸いです。
「間髪を入れず」の読み方は、「間一髪(かんいっぱつ)」との混同から、「かんぱつ」と読む人が多いようです。安倍首相が2020年3月に新型コロナウイルスへの対応について述べた国会答弁でも「かんぱつをいれず」と言っていました。
「貼付」も、「添付」との混同から、「てんぷ」と読んでいる人が時々います。
「侃々諤々(かんかんがくがく)」と「喧々囂々(けんけんごうごう)」との混同で「けんけんがくがくの議論」という間違った言い方をしている人は結構おられます。
3.代議士や大臣の読み間違い
戦後間もないころ、「追加更正予算」を「ついかさらまさよさん」と読んだり、「毛沢東」を「けざわひがし」と読んでいた代議士がいたと、父から聞きました。
麻生太郎財務大臣も、漢字の読み間違いが多いことで有名ですね。漫画がお好きなのは、「日本が世界に誇るアニメ文化」ですから良いとしても、あまりにも漢字を知らなさすぎるのではないかと少し気になります。
4.横田早紀江さん
北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんのお母様ですが、記者会見などで自分の娘のことを「めぐみ」ではなく「めぐみちゃん」と呼ばれることがあるのは、少し気になります。
素人参加番組の出場者が、司会者から「お名前は?」と聞かれて、とっさにつられて、「お名前は〇〇です」と「尊敬語」で答えることがあります。これは「緊張」であがってしまったことが原因ですから、このような失敗は笑って許されることだと思います。
いずれにしても、漢字の読み方や、言葉遣いを誤って覚えている人には、「目上の人」か「身内の人」が注意してあげるのが無難です。「同輩」や「目下の人」が率直な指摘をすると、相手のプライドを傷つけたり、「ちょっと漢字を知っているからといって、偉そうにするな」と逆に恨まれたりします。上司の場合だと人事評価にも響きかねません。
人間は「感情の動物」ですから、「誤っていることを指摘されたら、感謝するのが当然」というのは、「正論」ではあっても、「しこり」を残すことは間違いありません。くれぐれも間違いの指摘をする場合は慎重にしてください。