日本語の面白い語源・由来(その8)鹿爪らしい、暮れ残る、猪口才など

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鹿爪

1.鹿爪らしい(しかつめらしい)

「鹿爪らしい」とは「真面目くさっていて堅苦しい。尤(もっと)もらしい。勿体(もったい)ぶっている」ことです。「鹿爪当て字」で、「しかつべらしいが音変化したものです。

では「しかつべらしい」の元は何かというと、古語の「然(しか)りつべくあらし」(然、ありつべく、あるらし)が音変化したものと言われています。「然、ありつべく、あるらし」とは、「そのように、あるべきで、あるようだ」という意味です。

「鹿爪らしい」は、不機嫌そうに眉間に皺を寄せる「顰(しか)める」「しかめっ面」という言葉と音が似ているので混同しやすいですが、「しかめる」は縮こまるという意味の「しじかむ」から来ているので語源が違います。

余談ですが、「しかめ面」については、徳川家康の有名な肖像画「しかみ像」があります。これは「三方ヶ原の合戦」で武田信玄に散々打ちのめされて敗走した家康が、その惨めな姿を決して忘れまいとして、従軍していた絵師に描かせたものです。

しかみ像徳川家康

2.暮れ残る

暮れ残る・街暮れ残る・空港

暮れ残る」とは「日が沈んだ後でも、なおしばらく明るさが残りぼんやりと見える様子」のことです。

なお「暮れ残る」といえば、芥川龍之介の「水洟(みずばな)や鼻の先だけ暮れ残る」という俳句がとても印象に残っています。

芥川龍之介武田鉄矢

海援隊の「贈る言葉」に「暮れなずむ町の光と影の中」という有名なフレーズがありますが、この「暮れ泥(なず)む」は「日が暮れそうでなかなか暮れない状態」のことです。

余談ですが「暮れなずむ」は俳句で「春」の季語となっています。

3.猪口才(ちょこざい)

「猪口才」とは「ちょっとした才能・才気があって小生意気なこと。小賢(ざか)しいこと。また、そのさまや、そのような人」のことです。「猪口」は「へなちょこ」を「へな猪口」と書くのと同様に「当て字」で、小さな盃の「お猪口」とは無関係です。

「ちょこ」は、「ちょこちょこ」「ちょこまか」などのように、目立たない小さな動作を表す「ちょこ」です。「ざい」は漢字で「才」と書く通り、「才能」の意味です。

つまり「猪口才」は、「ちょっとした才能」が原義で、そこから「利口ぶって生意気」という意味になり、小生意気な人や小賢しい人に対し、「猪口才な」と言うようになったのです。

4.ちょこなんと

ちょこなんと

「ちょこなんと」とは「小さく畏(かしこ)まっているさま」のことです。

同じオノマトペ(擬態語)の「ちょこんと」「ちょんと」という素っ気ない言葉よりも、「ちょこなんと」の方が味わい深い言葉だと私は思います。

有島武郎の「燕と王子」の中に次のような文章があります。

燕はちょこなんと王子の肩にすわって、今馬車が来たとか今小児が万歳をやっているとか、美しい着物の坊様ぼうさまが見えたとか、せいの高い武士が歩いて来るとか、詩人がお祝いの詩を声ほがらかに読み上げているとか、むすめの群れがおどりながら現われたとか、およそ町に起こった事を一つ一つ手に取るように王子にお話をしてあげました。

5.烏有(うゆう)に帰す

東京大空襲

「烏有に帰す」とは、物が跡形もなくなること、特に燃えてなくなってしまうことを言います。「灰燼(かいじん)に帰す」という表現も同様の意味です。

「烏(からす)」という漢字が使われていますが、カラスとは全く関係がありません。

「烏有」は「烏(いずく)んぞ有(あ)らんや」と読み、「どうして有ることあろうか」つまり「全くない」という意味です。

6.ルビ

ルビ

「ルビ」とは、「振り仮名用の活字」で、主に4~6ポイントの小活字です。単に振り仮名だけを指す場合もあります、

明治時代以降、日本で5号活字(10.5ポイント相当)の振り仮名に用いたのは7号活字(5.25ポイント相当)でした。一方イギリスから輸入された5.5ポイントの活字の呼び名が「ruby」であったことから、「ruby」とほぼ同じ大きさだった仮名用の活字の「7号活字(5.25ポイント相当)」を「ルビ」と呼ぶようになり、振り仮名のことも「ルビ」と呼ぶようになったのです。

イギリスでは活字の大きさを宝石名で表し、4.5ポイントは「diamond(ダイヤモンド)」5.0ポイントは「perl (真珠)」、5.5ポイントは「 ruby(ルビー)」、6.5ポイントは「エメラルド(emerald)」と呼びました。

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