2020年1月に新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)が起きて以降、感染予防対策のための「三密」という言葉が、政府・小池百合子東京都知事や政府分科会・医師会などから盛んに呼びかけられ、耳に胼胝(たこ)ができるほどでした。
ところでこの「密」という漢字はどのようにしてできたのでしょうか?
1.「密」という漢字の成り立ち
形声文字です(宀+必+山)。「屋根・家屋の象形と飾り垂れ紐の象形と枝のある木に支柱をそえた象形」(「必」は、「閉」に通じ(「閉」と同じ意味を持つようになって)、「とじる」の意味)から、「屋内に閉じこもってひっそり静かにする」の意味)と「山」の象形から、ひっそりしている山を意味し、そこから、「ひそか」を意味する「密」という漢字が成り立ちました。
2.「密」を含む言葉
(1)密密(みつみつ/ひそひそ)
きわめて秘密なこと。内々に行動すること。また、そのさま。
(2)隠密(おんみつ)
①人に悟られないように隠して事を行うこと。また、そのさま。いんみつ。
②戦国時代から近世にかけて、情報活動に従った下級武士。幕府や各藩に属し、スパイ活動を行った。間者 (かんじゃ) 。忍びの者。
(3)周密(しゅうみつ)
注意が隅々にまで行き届いていること。また、そのさま。
(4)水密(すいみつ)
水が密閉され、水圧がかかっても漏れないようになっている状態。また、その構造。
3.「密」を含む四字熟語
(1)三密瑜伽(さんみつゆが)
密教の修行。「三密」は身密、口密、意密の三つの行のこと。
「瑜伽」は修行者の三密と、仏の三密が互いに交じり、溶け合うこと。
「瑜伽三密(ゆがさんみつ)」ともいう。
(2)周密精到(しゅうみつせいとう)
隅々まで行き届いていること。
「周密」と「精到」は、どちらも細かい場所まで注意が行き届いていることで、似た意味の言葉を重ねて強調したもの
(3)人口稠密(じんこうちゅうみつ/じんこうちょうみつ)
人や家が一箇所に集まっていること。「稠密」は隙間がないほどに集まっていること。
(4)旦暮周密(たんぼしゅうみつ)
常に気を張って、注意し続けること。
「旦暮」は朝から晩までということから、一日中ということ。「周密」は細かいところまで注意が行き届いていること。
(5)密雲不雨(みつうんふう)
前触れはあるのに事が起こらないこと。また、恩恵が全ての人にいきわたらないこと。
雨雲が空いっぱいに覆っているが、まだ雨は降らないという意味。