「公文式教育法」とは?考案者の公文公とは?メリット・デメリットは何か?

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やっててよかった公文式

孫ができると、まだ先の話ですが「勉強」のことが気になってきます。

私が子供の頃は「学習塾」もなく、習い事と言えば「習字」と「そろばん」くらいでしたが、息子たちが小学生の頃は「ピアノ」を習わせたほか、小学校高学年になると「学習塾」に通わせました。

ひと頃は、「浜学園」(今は「馬渕教室」をよく目にします)などの中学受験の塾が大盛況でしたが、今は「公文式」がテレビでもよく宣伝しています。

野村萬斎親子CM・くもん

狂言師の野村萬斎・裕基親子や卓球の張本智和・美和兄妹も出演しているCM「やっててよかった公文式」でおなじみの「公文式教育法」とはどんなものなのでしょうか?

1.「公文式教育法」とは

(1)特色

週2回程度の通塾。個人別の自学自習プリントを配布し、学年にかかわらずその生徒のその時の実力に応じた学習をする無学年式学習を特徴としています。そのため伸びる生徒はどんどん先の学習に進め、逆に伸びにくい生徒は学年を下げた内容を繰り返し練習することができます。つまり「個人別の進度に応じた学習法」です。

教材は、公文公・前会長が自分の子供のために作りはじめた計算プリントが元になっていて、本人の実力に合わせてどこからでも始められる算数教材は、特に学校の授業についていけなくなっている子供にとって、大きな救いとなりました。

学力をチェックしてどこでつまづいているか割り出し、その少し前の楽にできる箇所から再学習が可能となっています。いわば「スイッチバック(*)方式」の学習法です。

(*)「スイッチバック(switchback)」とは、「急勾配こうばいを緩和するため、ジグザグ形に設けた鉄道線路」のことで、列車は折り返して後退し、別の線に入ってまた前進するという運転をしながら進みます。

スイッチバック

算数・数学は文章題はほとんどと言っていいほどなく、計算が主体です。その後、読解力と読書力養成(算数で言う文章題にも対応)を主眼とする国語や英語(外国語)の教材も開発されています。

特に英語に関しては、プリント(幼児向けはワークブック)学習のみではどうしてもカバーできない分野(リスニングなど)が出てきてしまうので、それに対応するためにかつては音声カードやCDを使用していましたが、現在は英語専用タッチペン(新規入塾生は必ず購入しなければいけない)を使用して、対応のワークブックやプリントに印刷している音声マークを触ることが出来ます。

プリント1枚毎に採点され、全部できたら(訂正箇所を全部直したら)100点(満点)。このシステムにより、「次も100点取れるようにがんばろう」と生徒のやる気をアップさせているということです。

(2)日常の学習

  1. 各生徒の学力に応じたプリントの配布
  2. 解説を見ながら各自問題を解く
  3. 採点者のところへ持っていき採点してもらう
  4. やり直しをして、すべて正解できたら次の段階のプリントをもらう
  5. 解説を見ながら各自問題を解く
  6. 宿題プリントをもらう
  7. 自宅で問題を解く
  8. 次の回に教室で問題を採点してもらう

(繰り返し)

このことから、宿題をこなさないと先に進まず学習効果が著しく減じてしまいます。

2.「公文式教育法」の考案者の公文公とは

公文式教育法

「公文式教育法」の考案者の公文公(くもん とおる)(1914年~1995年)は、大阪帝国大学理学部出身の数学教育者です。

彼は高知県長岡郡大津村(現・高知市)の農家に生まれました。下知小学校(現・昭和小学校)から土佐中学校を経て1933年に高知高等学校を卒業、1936年、大阪帝国大学理学部数学科を第1期生として卒業しました。

高知県立海南中学(現・高知県立高知小津高等学校)数学教師となりますが、翌年の1937年、召集令状により退職をして同県の朝倉連隊に二等兵として入隊し、満州に出兵。3年後の1940年に召集解除となって帰国しました。

海軍教授の試験に合格し、茨城県の土浦海軍航空隊で教鞭をとりますが、後に奈良県の天理海軍航空隊に勤務し、1944年に高知県の浦戸航空隊に転属をして、終戦を迎えました。

戦後は奈良県の天理中学校に勤務後、再び高知県に戻り、1948年土佐中学校・高等学校の教諭となりました。

大阪府の公立中学校へ転勤した後、1958年7月に「大阪数学研究会」(現・「株式会社公文教育研究会」)を設立し、5年後の1963年には東京事務局を開設しました。

株式会社公文教育研究会は、大阪市北区に本部を置く学習塾「くもん教室」をフランチャイズ展開している会社です。

数学のあれもこれもできるか。まずは、『計算力』を突破口にするのだ」というのが「公文式教育法」の考案者である彼の長年の主張でした。

なお、公文式学習法が誕生した経緯や彼の考えは、『やってみよう-公文公自伝 子供の知的可能性を追求して』(くもん出版 1991年)という著書に詳しく書かれています。

数学教育について、「水道方式」(*)の遠山啓(とおやまひらく)(1909年~1979年)(東京工業大学名誉教授)とは長年のライバル関係にありました。

(*)「水道方式」とは、とは、「計算方法の最も基礎的な概念・手順を効率よく理解させるための理論」です。暗算よりも筆算を基本的で発展性のある計算方法とし、1958年頃に、数学者の遠山啓・銀林浩(ぎんばやしひろし)(1927年~2020年)(明治大学名誉教授)が中心となって提唱しました。水道方式ではタイルという正方形のマスで位取りを理解させます。

ただし、「水道方式」の目的は、あくまでも基本的な計算方法の仕組みを理解させることであり、国語や英語などの教育にも応用できる一般的な学習方法ではありません。

3.「公文式教育法」のメリット・デメリットは何か

(1)メリット

①日本のみならず世界中で「学習効果が認められている」こと

最近の調査では、現役東大生の3分の1が「公文式に通ったことがある」と回答しています。また、今や世界50カ国に教室を展開し、世界的にもその教育効果が認められています。

②「自分のペースでどこまでも進め、自習の姿勢が身に付く」こと

確かに、先生が手取り足取り教えてくれるスタイルの塾よりは、学習効率は劣るかもしれません。しかし、公文式はそれよりはるかに貴重な学力、すなわち「自習の姿勢」を身につけさせます。

公文式は、「受け身の姿勢」を許してくれません。自分でプリントと格闘して、参考例から解法を盗み取り、正解を勝ち取らない限り、いつまで経っても家に帰れないのです。

こうした環境に置かれた子供は、自然と「自分から何かを学び取りにいく、攻めの姿勢」を身につけます。

私自身のことを振り返ると、小学校高学年の頃は宿題でわからない問題があると親や姉に頼り切っていました。そのため、授業内容もよくわからないままで、どんどん成績が下がる悪循環で、「落ちこぼれ」になってしまいました。

しかし、中学に入ると心機一転して、「授業をしっかり聞き、宿題を親や姉に頼らず自力でやる」ようになると、メキメキ成績が上がりました。「教えてもらうという受け身」ではなく、「自分で考えて自力でやる」ことが重要なのを実感した次第です。

かつて「日比谷高校では、先生は授業をせず、生徒自身が授業する」という話を聞いたことがありますが、「受け身の姿勢は許さない」という公文式に通じるものがあります。

③「処理能力が上がり、できる自信が身に付く」こと

「公文式の算数って、計算問題ばかりやらされる」とよく言われます。確かに公文式では、手を動かして計算する問題を延々と解かされます。

この方針は英語や国語でも共通していて、公文式のスタイルとも言えます。

地道な演習を繰り返すことで、徹底的な基礎力を身につけ、応用に向かっていくための土台を固めていくのです。

私自身も中学時代に、数学の問題を解く時などに、わら半紙のような「反故紙」と「鉛筆」を持って、自分の頭で考える学習を徹底的に行いました。これは「公文式」に通じるものがあるように思います。

④「理解は後からついてくる」こと

小学校の間に高校で習う微積分の計算をやっている子もいます。おそらく理解はできていないでしょう。しかし、「できる」という自信はありますし、実際に問題を出されたら解くことができます。

これは江戸時代に行われた教育法である「漢文の素読」に通じるものがあります。

(2)デメリット

①合う子と合わない子がいること

基本的に、一人で机に向かうことに抵抗がない子の方が、公文式に馴染みやすいと言えます。

「家に帰ってまでプリントを解かされるなんて、耐えられない!」というような活発な子には、公文式は合っていません。

②先生との相性に大きく左右されること

生徒のモチベーションは、先生との相性に大きく左右されます。先生との相性が悪ければ、
子供はやる気を無くします。

公文式の教室に通う際には、先生がどんな人物であるかをきちんと見極めることが大切です。

③勉強できる科目は3教科だけで、勉強できない内容もあること

公文で勉強できるのは、算数(中学以降は数学)・国語・英語の3教科だけです。

また、算数の「図形問題」と「文章問題」、英語の「長文読解問題」は勉強できません。

④思考力は育てないこと

公文式は、子供の学習のモチベーションとして、「理解する喜び」ではなく、「前に進む喜び」を設定しています。

そのため、子供は、理解が多少追いついていなくても、「まあ、問題は解けてあってたし、次に行こう」と思ってしまうのです。小学生くらいの段階なら、これは許されるでしょう。

しかし、中学生や高校生に上がって、思考力が試されるような問題が多くなってくると、この「理解をサボる癖」は致命的な弱点になります。

大学受験で出題される問題は、公文式のやり方では応用が追いつかないのです。

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