「青時雨」「踏絵」「百物語」「日光写真」などの面白い季語

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青時雨

1.青時雨(あおしぐれ)

「青葉の頃、雨が上がったあとの木の下を通ると、葉に溜まっていた雫(しずく)がはらはらと落ちてくること」で「青葉の木立から落ちる水滴を時雨に見立てた言葉」で、「夏」の季語です。「青葉時雨(あおばしぐれ)」とも言います。

ちなみに「青葉雨(あおばあめ)」は、「青葉の頃に降る雨のこと」です。こちらの雨は「若葉雨(わかばあめ)」「緑雨(りょくう)」「翠雨(すいう)」とも呼ばれます。

いずれも美しい言葉ですね。

例句としては、次のようなものがあります。

・枝を発(た)つ 鳥に零(こぼ)れて 青時雨(伸一路)

・青時雨 心とからだ 湿らせて(熊谷みどり)

・青しぐれ 汀女の墓の 手水鉢(川端 実)

・城跡へ つづく小道や 青時雨(樋口多嬉子)

2.踏絵(ふみえ)

踏絵

「踏絵」と言えば、「江戸幕府が当時禁止していたキリスト教(カトリック教会)の信徒(キリシタン)を発見するために使用した絵」のことですが、これが季語になっていたとは驚きですね。「初春」の季語です。「絵踏」とも言います。

キリシタン禁制の江戸時代、信徒が多かった長崎などで、毎年正月から三月頃まで、幕府・奉行所が住民全員にキリストや聖母マリアの描かれた絵を踏ませました。信徒か否かを確かめ、踏まなかった者は処罰しました。最初は紙や板でしたが、大勢が踏むので、擦り切れにくにように真鍮製のものまで登場しました。開国後の1858年、オランダ人の要請で中止されるまで230年間にわたって続けられました。

例句としては、次のようなものがあります。

・苗代の 泥足はこぶ 絵踏かな(正岡子規)

・足袋はかぬ 天草をとめ 絵踏かな(青木月斗)

・硯(すずり)かと 紛(まご)ふ踏絵の 減り具合(山田純子)

・金鳳華(きんぽうげ) 踏絵も光 さびにけり(水原秋櫻子)

3.百物語(ひゃくものがたり)

百物語

夏になるとテレビに怪談物や心霊物の番組がよく登場します。夏は夜が更けるまで誰もが起きているため、幽霊話がよい取り合わせになることと、背筋も凍り付きそうな話を見聞きして涼を求めたいということなのでしょう。

「百物語」は、日本の伝統的な怪談会のスタイルの一つで、「夜に数人が集まって順番に怪談を語り合う遊び」です。蠟燭(ろうそく)を百本立て、怖い話をするたびに一本ずつ消していくと、最後の一本が消えた時に本物の幽霊(化け物)が出るというものです。

当然ながら「夏」の季語です。

「現代俳句協会」が「現代俳句歳時記」で、「幽霊」とともにこの季語を採録していますが、他の歳時記で採録しているものは少ないようです。

その理由としては、日本の幽霊に付きまとう陰惨なイメージが嫌われたことと、優れた例句が少なかったからと考えられます。

例句としては、次のようなものがあります。

・百物語 はてて灯(とも)せば 不思議な空席(内藤吐天)

・髪濡れて 百物語に 加はりぬ(島紅子)

・幽霊も 鬱なるか傘 さして立つ(高柳重信)

4.日光写真(にっこうしゃしん)

日光写真ブロマイド昔の日光写真

私が子供の頃は、よくこの「日光写真」をして遊んだものです。ただし今では「日光写真」を知っている人はほとんどおらず、ピンと来ない人が大多数でしょうから、「死語」ならぬ「死季語」になっているかもしれませんね。

「日光写真」は感光紙の化学変化を利用した写真を真似た玩具です。大正時代に流行し、昭和30年代まで少年雑誌の付録によく付いていました。

「種紙」「日光感光紙」「焼き枠」の3つのパーツから構成されていました。

「種紙」は薄紙に絵を印刷したもので「ネガ」に相当し、10~20枚撮りで1シートになっていました。「日光感光紙」は感光度の低い一度しか感光できない消耗品です。「焼き枠」は写真機(カメラ)に相当するもので、写真機を真似たものから、ただの厚紙を二つ折りにしたものまでありました。

なお、撮影したものは定着液を使いませんので、数日で消えてしまいました。冬の弱い日差しでゆっくり仕上げるということで、「冬」の季語になっています。「青写真(あおじゃしん)」とも言います。

例句としては、次のようなものがあります。

・日光写真 笑ふと寒き 母ならむ(磯貝碧蹄館)

・青写真 少年の夢 育ちをり(山田聴雨)

・青写真 目当(めあて)少年 月刊誌(稲畑廣太郎)

・固定する 太陽の位置 青写真(岡田順子)

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