2022年2月の北京五輪は、中国のチベットやウイグルの少数民族弾圧(ジェノサイド)などの人権問題に抗議して、欧米諸国が「政治的ボイコット」を表明したり、中国の「ゼロコロナ政策」に基づく事前の厳重過ぎる感染予防対策やPCR検査漬けなどが話題になりました。
しかし、競技が始まってからさらに重大な問題が起きています。それは中国に有利になる「疑惑の判定」の続出です。
これは、「中立性・公平性・公正さ」が求められる審判員にあるまじき行為で、「スポーツマンシップ」や「フェアプレー精神」にも反する明らかに意図的な「悪意」を感じます。
このような「疑惑の判定」が続出するのは、中国の「戦狼外交」の表れだと私は思います。
1.北京五輪での「疑惑の判定」
「外交的ボイコット」をしたり、政府関係者を派遣しなかった欧米諸国や日本への「意趣返し」かとも思えるような「疑惑の判定」が続出しています。
(1)スキージャンプ高梨沙羅を含めたメダル候補5人が失格
日本のメダルが期待されていた競技「スキージャンプ」。
2月7日にその団体戦に登場した高梨沙羅選手でしたが、大ジャンプを決めたあと、”スーツ規定違反”という理由により1回目のジャンプが失格に終わりました。
スーツの太もも回りが規定よりも2cm大きかったというのが理由でした。
(2)スピードスケート高木菜那が中国人に進路妨害される
2018年に行われた平昌オリンピックで金メダル2つを獲得した高木菜那選手。
2022年の北京オリンピックでもメダルが期待されていましたが、出場したスピードスケート1500mで、一緒に滑っていた中国人選手に進路を妨害されたことで、最終ラップのタイムは大幅に落とすという結果になりました。
(3)スノーボード竹内智香が不可解判定で失格に
スノーボード女子パラレル大回転で2014年ソチオリンピックで銀メダルを獲得した竹内智香選手は、2月8日の決勝トーナメントに出場しました。
しかしドイツのホフマイスター選手と戦った1回戦で転倒。
起き上がった後、先にゴールしたにも関わらず、転倒したときに相手の選手を妨害したということで途中棄権扱いになりました。
(4)スピードスケート男子、中国人選手が肩を掴んだのに優勝(冒頭の画像)
スピードスケート男子1000mでは、不可解な判定が続出しました。
2月7日に行われた準決勝では2人の韓国人選手が失格処分を受けました。
1組目に出場した2018年の平昌オリンピックの銀メダリストのファン・デホン(黄大憲)選手。
そしてもうひとりは2組目に出場したイ・ジュンソ(李俊瑞)選手でした。
失格理由はどちらもレーン変更で反則をしたから。
これを受けて、次順であった中国人2選手が決勝へ進出しました。
そしてその続きがあります。
2月7日に行われたスピードスケート男子1000mの決勝では、ハンガリーのシャオリンサンドル・リュウ選手がゴールラインに入る直前、中国の任子威選手がシャオリンサンドル・リュウ選手の肩を掴んで倒した様子がはっきりと映っています。
しかもぎりぎりシャオリンサンドル・リュウ選手が1位でゴールインしたにも関わらず、ビデオ判定の結果、中国人選手の金メダルが確定しました。
(5)ショートトラック男子で米国が失格処分に
ショートトラック混合リレーの準決勝では、
- 1位:ハンガリー
- 2位:アメリカ
- 3位:中国
- 4位:ロシア
となり、上位2チームであるハンガリーとアメリカが決勝に進出すると誰もが思っていました。
しかし中国を妨害する行為があったとして、アメリカは失格処分となり、代わりに中国が決勝進出することになりました。
(6)ショートトラック女子でブロックを投げ転倒させた
2月7日に行われたショートトラック女子500m準々決勝。
中国の范可新選手はカナダのアリソン・チャールズ選手にコースの境界を示す黒いブロックを投げて転倒させました。
ただこの試合は、ブロックを当てた中国選手はタイムが遅かったため敗北、カナダ選手は救済措置で準決勝へ進出しています。
しかし、そもそも中国の范可新選手は「失格処分」に相当する悪質な妨害行為をしたにもかかわらず、不問に付されたことは大問題です。
(7)ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢の2回目の異常に低い採点
北京五輪のスノーボードハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢は、〝採点改革〟を訴えました。
現在、同種目は100点満点でジャッジされます。11日の決勝では2回目に「最高難度」の大技トリプルコーク(TC)1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)を決めるなど文句なしのランを披露しましたが、この時点で2位の91・75点で物議を醸しました。
では、いったいどのような採点方法であれば、〝フェア〟に感じられるのでしょうか?
12日の一夜明け会見では報道陣から「フィギュアスケートのように技一つひとつに点数をつけて『TCは何点』のようにして合計点数を出せば公平性は担保できるのでは」という質問が出ました。
これに対し、彼は「スノーボードって幅広くていろんなスタイルがあって、個々の魅力だったり、自由さも当然一つのカッコよさとしてあるんですけど、それはそれとして切り分けていくべきだと思っている」と、自身の見解を述べました。
続けて「感動だったり、人に与えるものは競技でしか生まれない部分もあると思っているので、その競技の部分で捉えると『高さ』『グラブ(ボードをつかむ)』とか、そういうもの(の採点基準)を整えていくべきだと思いますし、ジャッジの評価もそういう意味ではまだまだちゃんとしていない。今も最大のリスクを抱えてやっている者に対して、もっとしっかり評価をしてジャッジするべきだと思う」と改善の余地があることを強調しました。
これは、(1)~(6)の中国を有利にする「疑惑の判定」とは性質が異なりますが、「判定競技」がややもすると審判員の主観が強くなって、公平性や公正さを欠くことを鋭く指摘したものです。
2.「IOC」や各競技の「国際競技連盟」は「中国の傘下組織」なのか?
ハーフパイプは、「技」が目にも止まらないほど高度な「瞬間芸術」とも呼ぶべきもので、素人目には全くわかりません。
しかしプロの目から見れば、今まで見たこともないような高難度の技を行ったかわかるはずです。「ビデオ録画」もあるわけですから、「審判員」も当然わかるはずです。
ショートトラックやスピードスケートでの中国選手による「違反行為」も、「ビデオ録画」がない時代なら「証拠がない」として有耶無耶(うやむや)にされたかもしれません。
しかし、今や交通事故の証拠にも採用されるような「ビデオ録画」があるのですから、素人目にも明らかにわかる中国選手の違反行為を不問に付する神経を疑います。
これでは、「IOCや各競技の国際競技連盟は『中国の傘下組織』なのか?」と疑いたくなります。
日本でも、パワハラで問題になった日本体操協会の塚原副会長のクラブに所属する選手だけに不自然なほど有利な判定が行われたり、日本ボクシング連盟の山根会長による「奈良判定」というのがありました。
審判員の「中立性・公平性・公正さ」の検証とともに、今回の北京五輪での判定結果の妥当性についての第三者による検証がぜひとも必要だと私は思います。
第三者による検証が行われる可能性は限りなくゼロに近いと思いますが、そう思いたくなるほど今回の北京五輪の判定は、あまりにも無茶苦茶なように感じます。
3.日本は欧米諸国と協調して中国の「力による現状変更」などの横暴に対抗すべき
これはスポーツの世界の問題にとどまりません。
いつまでも続く「靖国神社参拝」への批判は、政治的なプロパガンダで無視しても構わないと思いますが、続発する尖閣諸島周辺での領海侵犯は許しがたいものだと私は思います。
「一帯一路構想」を掲げる習近平主席率いる中国は、「帝国主義」時代の欧米列強とよく似ています。
また「共産党一党独裁国家」である現在の中国は、「絶対主義体制」(絶対王政)とよく似ています。
日本は、欧米諸国と協調して強固な「中国包囲網」を築き、中国の「力による現状変更」などの横暴に対抗すべきだと私は思います。