時間にまつわる面白い話(その3)。「長い時間」の単位や「寿限無」の語源なども紹介

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寿限無

前に数字の単位や時間にまつわる話として、「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」「時間にまつわる面白い話(その1)。13まである時計・天上界と人間界・ジャネーの法則」「時間にまつわる面白い話(その2)。短い時間」の単位や陸上競技等の計時方法も紹介」いう記事を書きましたが、今回は「長い時間」に焦点を当てて、ご紹介します。

1.長い時間の単位

(1)太陽・月・地球・恒星に基づく長い時間の単位

①太陽

「年」は、地球が太陽の周りを回る周期(公転周期)が元になっています。年を基準にした単位には、オリンピアード(Olympiad、オリンピア紀)(4年)、五年紀(5年)、ディケイド(decade、十年紀)(10年)、インディクティオ(indictio、十五年紀)(15年)、センチュリー(century、世紀)(100年)、ミレニアム(millennium、千年紀)(1000年)などがあります。

②月

時間の単位としての「月」は、月が地球の周りを回る周期が元になっています。

③地球

日は、地球の自転周期が元になっています。日を基準にした単位には、週(7日)、旬(10日)、フォートナイト(fortnite、14日)などがあります。

また、日時計で太陽の動きを観測することにより、1日の中での時間もわかります。このようにしてできた単位には時間(1日の24分の1)、分(1時間の60分の1)、秒(1分の60分の1)、時辰(*)(1日の12分の1)、刻(1日の100分の1など)などがあります。

(*)「十二時辰(じゅうにじしん)」については、「十二支と時刻の関係とは?わかりやすくご紹介します。」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

時刻と十二支

④恒星(天球)

恒星時(sidereal time)とは、1恒星日を24時間として表した時刻で、天球の春分点が子午線を通過した瞬間を恒星時の0時とします。

ある地点の恒星時は、そこを通る子午線から西方へ測った春分点の時角に等しく、また子午線を通る恒星の赤経に等しくなっています。

グリニッジ子午線における恒星時(グリニッジ恒星時)を世界共通の恒星時としています。

(2)仏教由来の長い時間の単位

仏教の世界で時間の最長の単位は、「」です。

「劫(こう/ごう)」は、梵語のkalpaの音写で、「劫波」の略です。きわめて長い時間のことで、古代インドにおける時間の単位のうち、最長のものです。

劫には、2種類あると考えられています。

①磐石劫(ばんじゃくこう):3年に1度、天女が舞い降りて羽衣で、40里(約160km)立方の岩をなで、岩がすり切れてなくなってしまうまでの時間。

②芥子劫(けしこう):40里(約160km)立方の箱に芥子を詰め、百年に一度、一粒取り出していき、すべて取り出してしまうまでの時間。

一般に「劫」といえば、前者を指します。この単位は、有名な落語『寿限無』の主人公・寿限無の本名にも出てきます。

芥子劫

「磐石劫」は曖昧で抽象的なので計算が困難なため、「芥子劫」で考えてみます。

芥子の実は球形で、便宜上、1mm四方と考えますと、1芥子劫=409,600,000,000,000,000,000,000,000年 ということになります。

ちなみに、「ビッグバン」で誕生した宇宙の年齢は約137億年なので、宇宙の年齢は、1芥子劫の3京分の1にしか及ばないということになります。

そういえば、非常に長い時間がかかり面倒臭いことを「億劫」といいますが、これは「100,000,000劫」であり、もはや面倒とかいう問題ではない、とてつもなく長い年数なのです。

余談ですが、囲碁のルールの1つに「 コウ(こう、劫)」があります。これは「お互いが交互に相手の石を取り、無限に続きうる形」のことで、ルールによって、無限反復は禁止されています。

2.長い時間の単位に由来する言葉の語源

(1)「寿限無(じゅげむ)」の語源

「寿限無」の本名(正式な名前)は、次の通りで、「日本で最も長い名前」です。

寿限無じゅげむ寿限無じゅげむ五劫ごこうれ、海砂利かいじゃり水魚すいぎょの、水行末すいぎょうまつ雲来末うんらいまつ風来末ふうらいまつ
喰う寝るところに住むところやぶ柑子こうじ藪柑子ぶらこうじ、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、
シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの、
長久命ちょうきゅうめい長助ちょうすけ

①寿限無:「幸福(寿)」が限り無いの意。簡単に言うと寿命が無限ということ。

②五劫の擦り切れ:本来は「五劫の摺り切れず」が正しい。言い回しのために「ず」が省略されてしまったもの。天女が時折泉で水浴びをする際、その泉の岩の表面が微かに擦り減り、それを繰り返して岩が無くなってしまうまでが一劫とされ、その期間はおよそ40億年。それが5回擦り切れる、つまり永久に近いほど長い時間のこと。別の落語では、天女が三千年に一回、須弥山に下りてきて羽衣で一振りして、須弥山がなくなるまでが一劫。

③海砂利水魚:海の砂利や水中の魚のように数限りないたとえ。

余談ですが、上田晋也と有田哲平からなるお笑いコンビ『くりぃむしちゅー』の旧コンビ名は『海砂利水魚』でした。

④水行末・雲来末・風来末:水・雲・風の来し方行く末には果てがないことのたとえ

⑤食う寝る処に住む処:衣食住の食・住のことで、これらに困らずに生きて行けることを祈ったもの。

なお、『滑稽百面相』に記載の版では異なる説明がなされており、「食う寝る」とは実際には「くねる」であり、海中でくねる海藻の数のように果てしないこと、「住む処」とは「アノトコロ」なる正月の縁起物を指す掛詞で、「代々この場所に住みたい」という意味を持つ。

⑥藪ら柑子の藪柑子:藪柑子(やぶこうじ)は生命力豊かな木の名称。葉が落ちても実が生り続けることから縁起物とされる。「(や)ぶらこうじ」は藪柑子がぶらぶらなり下がる様か、単に語呂の関係でつけられたとされる。

⑦パイポ、シューリンガン、グーリンダイ、ポンポコピー、ポンポコナ:唐土(もろこし)のパイポ王国の歴代の王様の名前でいずれも長生きしたという架空の話から。グーリンダイはシューリンガンのお妃様で、あとの2名が子供(娘)達という説も。

⑧長久命:文字通り長く久しい命。また、「天地長久」という読んでも書いてもめでたい言葉が経文に登場するので、そこからとったとする説も。

⑨長助:長く助けるの意味合いを持つ。

(2)「劫」が語源の言葉

①「億劫」

一般には「非常に長い時間がかかり面倒臭いこと」を指し、「おっくう」と読みますが、仏教用語の「億劫(おっこう)」が音変化したものです。

これは、一劫の億倍、すなわち極めて長い時間のこと、永遠という意味です。

②「永劫」

「永劫(えいごう/ようこう/ようごう)」も、「未来永劫」という四字熟語でよく使いますが、「億劫」と同様に、極めて長い時間のこと、永遠という意味です。

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