1.赤ちゃんと成人の頭蓋骨の違い
人の「頭蓋骨」は、生まれた時にはたくさんのパーツに分かれていて、それが成長とともにくっついていくのだそうです。
確かに「頭蓋骨」の図を見ると、いくつものパーツからなっていて、縫合したような細かいギザギザが見えます。
成人の頭蓋骨は「頭頂骨」「前頭骨」「後頭骨」「側頭骨」「蝶形骨」「篩骨」の6つが大きな部分ですが、合計28個の骨で構成されています。
「頭頂骨」「側頭骨」など何種類かの骨は2つの部分からできていますので、合計28個の骨になります。下顎を除いて、頭蓋の骨格はすべて縫合(移動をほとんど許さない厳密な接合)によって互いに連結されています。
しかし赤ちゃんの頭蓋骨は、柔らかくて彎曲性を持ち、各頭蓋骨を結合する縫合も緩やかなために、頭蓋骨はお互いに屋根瓦のように重なりあうことができます。
骨が重なるので「骨重責」といいますが、この骨重責という技(?)を持っているがために、
赤ちゃんの頭は狭い産道を通過することができるのです。
このように細かく分かれて、しかもふにゃふにゃで柔らかくないと、赤ちゃんが生まれてくる時に、とても母胎の狭い産道を通り抜けて出てこられません。
赤ちゃんの額の真ん中から真っすぐ頭のてっぺんに向かって触ってゆくと、おでこを過ぎた辺りから骨のない、柔らかいクボミが触れてきます。前頭部の骨と側頭部の骨に囲まれたこの部分が「大泉門」と言われる場所です。「おどりこ」とか「ひよめき」とも呼ばれます。「ひよひよと踊るように動いている」ため、このように呼ばれているのです。
厳密に言えば、骨が全くないわけではありませんが、完成した骨で覆われていないので、少し窪んだ感じに柔らかく触れたり、若干周囲から盛り上がって見えたり、その部分が心拍に合わせて脈打ったりします。
セミやカブトムシの脱皮も感動的なものですが、人間の体は本当によくできているものだと感心します。
2.「脳」という漢字の成り立ち
「脳」は「会意文字」です。
「まだ上部が開いている乳児の頭蓋骨」の象形と「髪」の象形と「年老いた女性」の象形(「比」に通じ、「並ぶ、つく」の意味)から、髪と頭蓋骨が付いている「のうみそ」を意味する「脳」という漢字が成り立ちました。
なお、「年老いた女性」の象形は、のちに「切った肉」の象形に変形しました。
「脳」は「腦」の略字です。
「まだ上部が開いている乳児の頭蓋骨」というのは、上に述べた「大泉門」(おどりこ、ひよめき)を表しているようです。古代人は解剖の知識はなかったでしょうが、生まれたばかりの赤ちゃんの頭を触るとペコペコと柔らかいことから、経験的にこの事実を知っていたのでしょう。
3.「脳」を含む言葉
(1)右脳(うのう)と左脳(さのう)
脳は左右対称の臓器ですが、機能的には左右でかなり異なります。
「左脳」は、言語、計算、理論など論理的、概念的な思考を行い、「右脳」は音楽、幾何学、発想など芸術的な分野に関連しています。言語中枢があるほうの脳を優位半球(ゆういはんきゅう)といいます。
運動機能の中枢は「左脳」にも「右脳」にもあります。「左脳」は右半身の運動機能を、「右脳」は左半身の運動機能をつかさどっています。このような左右の交叉は、視覚、触覚、痛覚でも同様にあります。理由は、これらの神経が延髄で反対側に交叉しているためで、これを「錐体交叉」といいます。
脳出血や脳梗塞などの脳血管障害では、出血や梗塞によって損傷された脳と反対側に、麻痺やしびれなどが現れますが、それは「錐体交叉」があるためです。
(2)洗脳(せんのう)
その人の思想を変えること。
これには「従軍慰安婦問題」やナチスや大本営、ルーズベルト大統領などによる「プロパガンダ」やマスメディアによる「インフォデミック」のほか、戦後GHQが日本人に対する洗脳プログラムとして実施した「GWIP」などがあります。
(3)間脳(かんのう)
大脳半球と中脳との間の大脳部。視床、視床上部、視床後部、視床下部の四部からなります。
(4)樟脳(しょうのう)
楠からとれる半透明の結晶。葉や枝などを水蒸気蒸留することで結晶になります。
強い芳香があり、医薬品や殺虫剤などに使われます。
4.「脳」を含む四字熟語
(1)肝脳塗地(かんのうとち)
戦場で無残な死に方をすることのたとえ。または、忠義を尽くすためならどんな犠牲も惜しまないことのたとえ。
「肝脳」は内臓の肝臓と脳。「塗地」は土でひどく汚れること。死体の内臓が土で汚れるという意味から。
(2)頭脳明晰(ずのうめいせき)
筋道の通った、明確な考えができること。
「頭脳」は頭の働き。「明晰」は筋道が通っていてはっきりとしていること。