古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。
幕末から明治維新にかけては、鉄道用語はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。
日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。
フランス語由来の外来語(フランス語から日本語への借用語)は、日本が幕末に開国して以来、欧米列強の学問や技術を取り入れる過程で日本語になりました。日本語になった外来語には、学術的な用語から料理・美術・ファッションなどの日常的な単語まで多岐にわたります。
そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)フランス語由来の「外来語」(その7:ラ行・ワ行)をご紹介します。
1.ラタトゥイユ(ratatouille)
ラタトゥイユ(ラタトゥユ、ラタトゥーユ)とは、フランス南部プロヴァンス地方、ニースの郷土料理で夏野菜の煮込みです。
玉ねぎ、ナス、ピーマン、ズッキーニといった夏野菜をにんにくとオリーブ油で炒め、トマトを加えて、ローリエ、オレガノ、バジル、タイムなどの香草とワインで煮て作ります。
うまみを出すためにセロリ、唐辛子を用いる工夫があります。そのまま食べるか、パンと共に食べます。パスタソースにすることもあります。
ラタトゥイユの語源は「touiller」(かき混ぜる)「rata」(軍隊スラングでごった煮)で、1778年に最初に書籍に登場したと言われています。
元々軍隊や刑務所で出される料理であったため、日本語におけるいわゆる「臭い飯」と同義語として使われることがあり、「まずい料理」あるいは「粗末な料理」の代名詞としてフランス人の口に上ることもありますが、新鮮な野菜で作られたものは「ニース名物」の名に恥じません。
2.ランデヴー(rendez-vous)
「ランデヴー」(ランデブー)とは、待ち合わせ、会合、デート、会談の意のフランス語です。
なお、宇宙開発における用語としては、 人工衛星・宇宙船等が互いに接近することです。
3.ルサンチマン(ressentiment)
「ルサンチマン」は、弱者が敵わない強者に対して内面に抱く、「憤り・怨恨・憎悪・非難・嫉妬」といった感情です。そこから、弱い自分は「善」であり、強者は「悪」だという「価値の転倒」のことを指します。
フリードリヒ・ニーチェはキリスト教の起源をユダヤ人の支配者ローマ人に対するルサンチマンであるとし、キリスト教の本質はルサンチマンから生まれたゆがんだ価値評価にあるとしました。「貧しき者こそ幸いなり」「現世では苦しめられている弱者こそ来世では天国に行き、現世での強者は地獄に落ちる」といった弱いことを肯定・欲望否定・現実の生を楽しまないことを「善い」とするキリスト教の原罪の価値観・考え方、禁欲主義、現世否定主義につながっていったキリスト教的道徳はルサンチマンの産物と主張しました。
4.ルージュ(rouge)
「ルージュ」は、フランス語で赤の意味ですが、口紅(フランス語では Rouge à lèvres)を指す和製外来語でもあります。
5.ルネサンス(Renaissance)
「ルネサンス」は「再生」「復活」を意味するフランス語であり、一義的には、古典古代(ギリシア・ローマ)の文化を復興しようとする文化運動です。
14世紀にイタリアで始まり、やがて西欧各国に広まりました(文化運動としてのルネサンス)。また、これらの時代(14世紀~16世紀)を指すこともあります(時代区分としてのルネサンス)。
日本では長らく「文芸復興」と訳されており、ルネサンスの時代を「復興期」と呼ぶこともありましたが、文芸に限らず広義に使われるため、現在では訳語として文芸復興という言葉はあまり使われません。
6.ルポルタージュ(reportage)
「ルポルタージュ」は次のような意味があります。
①取材記者、ジャーナリスト等が、自ら現地に赴いて取材した内容を放送・新聞・雑誌などの各種メディアでニュースとして報告すること(「現地報告」)です。略して「ルポ」とも言います。
②事件や社会問題などを題材に、綿密な取材を通して事実を客観的に叙述する文学の一ジャンル。「報告文学」や「記録文学」とも呼ばれます。ルポルタージュを執筆する者は、ルポライターと呼ばれます。
7.ルーレット(roulette)
「ルーレット」は、回転する円盤に球を投げ入れ、落ちる場所を当てるカジノゲームのことです。ルーレットは「カジノの女王」とも呼ばれ、多くのカジノで提供されています。
19世紀初めにフランスで現在の形が完成し、「小さな輪」を意味するフランス語がゲームの名前となりました。
上記の通り「ルーレット」という用語はこのゲームのことを示し、使われる回転円盤を示す用語ではありませんが、誤用されています。
8.レアリスム(Réalisme)
「レアリスム」は、現実を空想によらず、ありのままに捉えようとする美術上、文学上の主張のことです。日本語では「写実主義」または「現実主義」と言います。
9.レジュメ(résumé)
「レジュメ」とは、 要約、大意のことです。また、研究などの要旨を印刷したものを言います。
10.レストラン(Restaurant)
「レストラン」とは、一般的には客ごとに個別のテーブルを用意し、客がメニューから料理を選択できるようにした飲食店のことです。
なお統計上などでは、専門料理店(料亭、ラーメン店、焼肉店など)は、レストランに含まれず別の区分になっています。
11.レゾン・デートル(raison d’être)
「レゾン・デートル」とは、 あるものの存在を正当化する根拠のことで、存在にとっての理性的根拠です。。日本語では「存在理由」と言います。