「柔道の父」と呼ばれる嘉納治五郎の名前にある「嘉」という漢字は、普段はあまり見かけませんね。
しかし「嘉」という漢字をじっと見つめていると、「吉のようでもあり、豆のようでもあり、下は加えるという漢字のようだ」などの疑問が湧いてきて、「ゲシュタルト崩壊」を起こしそうな不思議な字のように感じられます。
前に「嘉」とよく似た「喜」という漢字の成り立ちについての記事を書きました。
そこで今回は、「嘉」という漢字の成り立ちについてわかりやすくご紹介したいと思います。あわせて、「嘉」の意味と読み、「嘉」を含む熟語もご紹介します。
1.「嘉」という漢字の成り立ち
「会意兼形声文字」です(壴+加)。
「壁に掛けた打楽器(鼓)」の象形(「音楽」の意味)と「力強い腕の象形(「力」の意味)と口の象形(「祈りの言葉」の意味)」
「力と祈りの言葉で、ある作用を加える」の意味から、「神への供え物に音楽を演奏して美しくする」を意味する「嘉」という漢字が成り立ちました。
また、「賀(カ)」に通じ(同じ読みを持つ「賀」と同じ意味を持つようになって)、「贈物をして祝い、喜ぶ」の意味も表すようになりました。
2.「嘉」の読みと意味
(1)読み
音読み:「カ」
訓読み:「よ(い)」、「よみ(する)」
(2)意味
①「よい」
・「立派」、「素晴らしい」、「優れている」(例:嘉言)
・「美しい」
・「めでたい」(例:嘉運)
・「うまい」、「おいしい」(例:嘉肴)
②「よみする」(良いとして誉める)(例:嘉賞)
③「喜ぶ」、「楽しむ」
④「幸い(幸せ)」
⑤「五礼(吉・凶・軍・賓・嘉)の一つ。結婚式・成人式など」(例:嘉礼)
3.「嘉」を含む熟語
・嘉言(かげん):めでたい言葉。戒めとなるよい言葉。善言。
・嘉運(かうん):よいめぐりあわせ。
・嘉肴(かこう):うまい酒のさかな。おいしい料理。
・嘉賞(かしょう):よしとして、褒めたたえること。
・嘉礼(かれい): めでたい儀式、礼式。冠婚、饗宴などの類。
・嘉納(かのう):①人の箴言、意見などを喜んで聞き入れること。②進物などを喜んで受け納めること。
・嘉例(かれい):よいとされる例
・嘉月(かげつ):陰暦の3月の異称
・嘉辰(かしん):めでたい日。よい日柄
・嘉日(かじつ):よい日。めでたい日。縁起のよい日。
・嘉節(かせつ):めでたい日。祝日。