「贔屓(ひいき)」の意味と語源・由来とは?「贔屓」を含む熟語・ことわざも紹介

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贔屓・盧溝橋

1.「贔屓」の意味と語源・由来

「贔屓」は、もともとは「ひき」と読みましたが、それが転じて「ひいき」となり、「誰かを助けるために力むこと、自分の好ましく思う人をとくに引き立てること」という意味になりました。

「贔屓(贔屭、ひき)」とは、中国における伝説上の生物です。石碑の台になっているのは「亀趺(きふ)」と言います。

北京市香山公園に残る贔屓が背負う石柱

中国の伝説によると、「贔屓」は「龍が生んだ9頭の神獣・竜生九子の一つ」で、その姿は亀に似ています。重きを負うことを好むといわれ、そのため古来石柱や石碑の土台の装飾に多く用いられました。

日本の諺「贔屓の引き倒し」は、「ある者を贔屓しすぎると、かえってその者を不利にする、その者のためにはならない」という意味ですが、その由来は、柱の土台である贔屓を引っぱると柱が倒れるからです。

「贔屓」を古くは「贔屭」と書きました。「贔」は「貝」が三つで、これは財貨が多くあることを表したものです。「屭」はその「贔」を「尸」の下に置いたもので、財貨を多く抱えることを表したものです。「この財貨を多く抱える」が、「大きな荷物を背負う」を経て、「盛んに力を使う」「鼻息を荒くして働く」などの意味をもつようになりました。また「ひき」の音は、中国語で力んだ時のさまを表す「擬音語」(オノマトペ)に由来します。

明代の李東陽(1447年~1516年)が著した『懐麓堂集』や、楊慎(1488年~1559年)が著した『升庵外集』にその名が見られます。

2.「贔屓」を含む熟語・ことわざ・慣用句

(1)判官贔屓(ほうがんびいき)

とは、第一義には「人々が源義経に対して抱く、客観的な視点を欠いた同情や哀惜の心情」のことであり、さらには「弱い立場に置かれている者に対しては、あえて冷静に理非曲直を正そうとしないで、同情を寄せてしまう」心理現象」を指す言葉です。「判官」の読みは通常「はんがん」ですが、『義経』の伝説や歌舞伎などでは伝統的に「ほうがん」と読みます。「はんがんびいき」と読む人もおられますが、誤りです。

源義経は「治承・寿永の乱」後半の平家追討において活躍しましたが、「三種の神器」のうち「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ/あまのむらくものつるぎ)」を取り戻せなかったことや、兄である源頼朝の許可を得ることなく後白河法皇から左衛門少尉、検非違使に任じられ、頼朝の家来である御家人を使役・処罰するなどの独断専行を行ったことが頼朝の反感を買いました。

さらに義経の上官として平家追討を指揮した源範頼や、頼朝が義経のもとに奉行として派遣した梶原景時が、平家追討後の義経の傲慢な振る舞いについて訴えたことで頼朝の心証は一層悪くなりました。

頼朝の怒りを知った義経は起請文を献じて弁明しましたが、「これまで勝手にふるまいながら、いまさらあわてて弁明しても、もう取り上げることはできない」、「こちらが不快に思っていると聞いてはじめて、こうした釈明をするのではとても許せない」と、かえって怒りを増幅させてしまいました。

頼朝は、「壇ノ浦の戦い」で捕虜とした平宗盛らを連れて京都から鎌倉へ向かった義経の鎌倉入りを拒み、さらに義経が京都へ戻る際に「関東に恨みを成す輩は義経に属するように」と発言したとして、義経に与えていた平家の旧領を没収しました。

続いて頼朝は「仮病を使って源行家追討の命に従わなかった」として義経を追討の対象としました。義経は頼朝追討の宣旨を得てこれに対抗しようとしたものの従う武士は少なく、義経は藤原秀衡を頼って奥州へ逃亡しましたが、秀衡の没後、頼朝の圧力に屈した秀衡の子泰衡によって自害に追いやられました。

このような義経の末路は、人々の間に「あんな素晴らしい方が、このようになってしまうとは、なんて人生は不条理なものなのだろう」という共感を呼び起こし、同情や哀惜を誘いました

判官とは、源義経が左衛門府の三等官(掾、判官)である左衛門少尉であったことに、あるいは検非違使の少尉であったことに由来する呼び名です。「判官贔屓」という言葉は室町時代末期から江戸時代初期にかけて成立した(あるいは室町時代中期にはすでに成立していた)と考えられており、初めて登場する資料のひとつとして、江戸時代の俳人松江重頼編集の俳句集『毛吹草』(1638年(寛永15年)成立)に収録されている

世や花に判官びいき春の風

という俳句が挙げられます。

(2)贔屓の引き倒し(ひいきのひきたおし/ひいきのひきだおし)

「贔屓の引き倒し」とは 「特別扱いしすぎることによって、逆にその人に迷惑をかけてしまうこと」 を意味することわざです。 贔屓(ひいき)とは、気に入った相手を特別扱いして力を貸したり目をかけることです。

しかしあまりにも贔屓しすぎてしまうと、周りからの反感を買うこともあるでしょう。 また、付きまといによる相手への迷惑も考えられます。 あまりにも目をかけすぎることで「引き倒す」、つまり迷惑をかけてしまうことが「贔屓の引き倒し」の意味するところです。

由来としては、「ひいき」と「ひきたおし」という語呂によって形成されているという説もあります。 ただ本当の由来は、中国の架空の生物である「贔屓(ひき)」から来ているようです。 贔屓(ひき)は龍から生まれた9頭の神獣です。

(3)贔屓目に見る(ひいきめにみる)

「贔屓目に見る」とは、「実際よりも好意的に判断すること」です。

(4)依怙贔屓(えこひいき)

「依怙贔屓」とは、「自分 の気に入った者だけを特別に可愛がったり、肩を持つこと」です。 依怙贔屓は「依怙」と「 贔屓 」が合わさった四字熟語で、江戸時代初期から見られます。 本来、依怙は「頼ること」「頼りにするもの」の意味でしたが、中世頃から「頼りとする者を支援する」という意味でも使われるようになりました。

(5)身贔屓(みびいき)

「身贔屓」とは、「自分に関係のある人を特別に贔屓すること」です。

(6)贔屓筋(ひいきすじ)

「贔屓筋」とは、「ご贔屓にしてくれている方のこと」です。特に、歌舞伎において、後援会などに入会し、公演の度に足を運んでくれたり、花を贈ってくれたりする存在に対して使われることが多く、歌舞伎界における「熱狂的なファン」と言うことができそうです。

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