日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.絣/飛白(かすり)
「絣」とは、十文字や井げたのふちが、かすれたような模様、またその模様を織り込んだ織物のことです。
かすりは、かすれたような細かい模様が規則的に織り込まれていることからで、「かすれる(掠れる)」の他動詞形「かする(掠る)」の連用形です。
漢字の「飛白」は、刷毛状の墨でかすれ書きにした漢字の書体を「飛白(ひはく)」というところから当てたものです。
2.観念(かんねん)
「観念」とは、物事に対して抱く考えや意識、諦めること、覚悟することです。
観念は、仏教用語で「観想の念仏」の略です。
「観」は、知恵を持って観察し、悟りを得ることを意味するサンスクリット語「vipaśyanā」の漢訳。
「念」は、心に思うことを意味するサンスクリット語「smŗti」の漢訳です。
観念は瞑想法の一で、精神を集中させ、仏や浄土の姿を思念することを言い、そこから物事に対してもつ考えや意識の意味が生じました。
諦めるといった意味は、真理を会得し悟りを得るという「覚悟」の意味から転じたものです。
3.辛うじて(かろうじて)
「かろうじて」とは、やっとのことで、ぎりぎりのところで、どうにか、ようやくという意味です。
かろうじては、漢字で「辛うじて」と書くとおり、「辛い」が語源です。
「からくして(辛くして)」が「からうじて」となり、さらに「かろうじて」に音変化しました。
形容詞「からし(辛い)」の塩気が強い味の意味から転じ、心情的につらい思いや、事態が困難なことに用いられ、困難な状況からやっとのことで成し遂げるさまを表すようになりました。
4.勘定(かんじょう)
「勘定」とは、物の数量や金銭を数えること、代金を払うことやその代金、見積り、予測のことです。
勘定の「勘」は「考える」、「定」は「決める」の意味です。
漢語では、「いろいろ考え合わせたあげくの結論」の意味で「勘定」が使われていました。
古くは日本でも同様の意味で用いられましたが、平安時代から物や金銭を数える意味が生じ、江戸時代に代金や見積りの意味でも「勘定」が使われるようになりました。
5.固唾を呑む(かたずをのむ)
「固唾を呑む」とは、事の成り行きが気がかりで、息をこらして見守る様子のことです。
「固唾」は、緊張して息を凝らしている時などに、口の中にたまる固まった唾のことです。
事の成り行きを案じ、じっと見つめたりしている時は、この固唾を呑むことから、そのような様子を表すようになりました。
6.代わり番子(かわりばんこ)
「かわりばんこ」とは、交代でかわるがわる行うことです。
かわりばんこは、たたら製鉄(「たたら」と呼ばれる足を踏んで空気を送る装置を使った製鉄)で、交代制であった労働者のことを「番子(ばんこ)」と呼んだことを語源とする説が多く見られます。
しかし、この説は「かわりばんこ」という言葉が、「代わり+ばんこ」の語構成と勘違いした俗説です。
かわりばんこは「代わり番」の話し言葉で、語構成は「代わり番+こ」です。
取り替えることを「取り替えっこ」と言うのと同じく、「代わり番」に接尾語の「こ」が付いた語です。