日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.海賊版(かいぞくばん)
「海賊版」とは、著作権者に無断で複製された書籍やソフトウエアのことです。レコードやCD、DVDなどの場合は「海賊盤」とも書きます。
海賊版は、英語「pirated edition」の訳です。
「pirate」は、海賊や略奪者という意味から派生し、著作権侵害者や特許権侵害者の意味を持つようになり、著作権侵害の複製版で「pirated edition」となりました。
海賊版の「版」にレコードを意味する「盤」を当てた語が「海賊盤」で、日本固有の表現です。ちなみに英語で海賊盤は、「bootleg(ブートレグ)」と言います。
2.風(かぜ)
「風」とは、空気の動き、空気の流れのことです。
かぜの「か」は、「気(か)」で大気の動きを意味します。
「ぜ」は「風(じ)」で、風の語源は「気風(かじ)」の転です。
3.風邪(かぜ)
「風邪」とは、呼吸器系の炎症性の病気で、熱・咳・鼻水が出たり、喉が腫れたりします。「感冒」とも言います。
風邪は、昔は風が原因でなる病気と考えられていたことからの名で、「風」と同源です。
日本最古の医書『医心方』には、「風者百病之長也」とあります。
江戸時代までは、感冒のことも漢字で「風」と表記されていました。
一般的に「風邪」の表記が使われるようになったのは、明治以降のことです。
「風邪」は冬の季語で、次のような俳句があります。
・くらがりに 灯を呼ぶ声や 風邪籠り(村上鬼城)
・店の灯の 明るさに買ふ 風邪薬(日野草城)
・風邪の子や 眉にのび来し ひたひ髪(杉田久女)
4.金(かね)
「金」とは、金・銀・銅・鉄など金属一般、お金、金銭、貨幣を意味します。
金の語源は諸説ありますが、金属は叩くと「カンカン」と鳴ることから、音変化し「カネ」になったとする説が有力とされます。
その他、「か」を「堅く(古語で焼く意味)」、「ね」を「練る」とした説や、土中に兼ねてからあるものとする説などがあります。
貨幣の「お金」の語源には、通貨が何にでも物を兼ねられることから「カネ」になったとする説もありますが、金属の「金」と区別して語源を考えるのは不自然です。
5.カマトト/蒲魚(かまとと)
「かまとと」とは、よく知っていながら知らないふりをすること(また、その人のこと)です。うぶらしく振る舞う女性に対して用いられます。
今で言う「ぶりっ子」ですね。
かまととの「かま」は「蒲鉾(かまぼこ)」、「とと」は幼児語で「魚」のことで、漢字では「蒲魚」と書きます。
蒲鉾が魚から作られることを知らないふりして、わざとらしく「蒲鉾はトトからできているの?」と聞いたことから、「かまとと(かまととぶる)」という言葉が生まれました。
かまととが女性に対して多く使われる理由は、江戸末期の上方の遊郭で、うぶなふりをした遊女に対して使われ始めたことによります。
6.皮切り(かわきり)
「皮切り」とは、物事のし始め、手始めのことです。
お灸用語では、最初にすえる灸のことを「皮切り」と言います。
これは、最初の灸は皮が切られるような痛みを感じることからです。
1603年『日葡辞書』では「最初の灸」と解説していますが、「皮切りが大事」の例文では「最初が非常に大切」の説明があり、この頃には既に「皮切り」に「手始め」の意味もあったことがうかがえます。
7.学ラン(がくらん)
「学ラン」とは、詰め襟の男子学生服のことで、特に、上着の丈が長く、だぶついたズボンのものを指します。
学ランの「ラン」は、江戸時代の隠語で洋服を意味する「ランダ」が略された語です。
学生が着るランダ(洋服)という意味から「学ラン」となりました。
ランダが洋服をさす由来は、鎖国時代の日本では「西洋」と言えば「オランダ」のことであったためで、「ランダ」は「オランダ」の略です。
おおもとの語源は同じですが、一般に洋服は「蘭服(らんぷく)」と呼ばれることが多かったため、「学生蘭服」の略とも考えられます。
5.菓子(かし)
「菓子」は、「食事以外に食べる嗜好(しこう)性の食べ物のこと」です。
古くには「果物(くだもの)」のことを意味していました。江戸時代からは果物を「水菓子(みずがし)」と呼ぶようになり、「菓子」は果物以外のものを指すようになりました。