日本語の面白い語源・由来(し-②)邪魔・しまった・食堂・認める・紳士・人口に膾炙する

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邪魔

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.邪魔(じゃま)

邪魔

邪魔」とは、妨げること、妨げになるもの、また、そのさまのことです。「お邪魔する」の形で、訪問すること。

本来、邪魔は仏教語で、「よこしま(邪)な悪魔」を意味し、仏道修業の妨げになる悪魔のことでした。

『日葡辞書』(1603年)に「学問の邪魔をする、または学問の邪魔になる」の用例があることから、中世に意味が派生し、妨げとなるものを広く表すようになったと考えられます。

人を訪問することをへりくだって言う「お邪魔する」は、相手の仕事の邪魔をする意味からです。

2.しまった

しまった

しまった」とは、失敗した時などに思わず発する語です。此(こ)れはしたり。

しまったは、動詞「しまう(仕舞う)」の連用形に完了の助動詞「た」が付いた語です。
しまうは「終わりにする」「終わる」を意味するため、しまったの本来の意味は「終わった」です。

終わることを不本意に感じるところから、失敗した時に「しまった」と発するようになりました。

「しまう」から派生した語には、「〜してしまう」や「おしまい」など、不本意な気持ちを含んだ言葉が多いようです。

3.食堂(しょくどう)

食堂

食堂」とは、食事をするために設けられた部屋、また食事をさせる店のことです。

食堂は元々仏教語で、寺院で僧たちが食事をする建物を指し、呉音読みで「じきどう」といいました。

奈良県の法隆寺にある食堂が、現存する日本最古の食堂です。

現在のように、食事をする場所や食事をさせる店(「大衆食堂」など)の意味で「食堂」が使われるようになったのは、明治時代に入ってからです。
漢音読みの「しょくどう」に変化したのは、明治後期のことです。

4.認める(したためる)

したためる

したためる」とは、書き記すこと、食事をすることです。

したためるの「したた」は「したたか」と同源で、確かであること、はっきりしていることを意味します。

める」は動詞をつくる接尾語で、本来、したためるは周到な準備で確かに処理することを意味しました。

確かに処理するという動作には、「用意する」「管理する」といったことのほかに、食事の支度をすることや、手紙を書くことも含まれました。

室町時代以降、「確か」という感情的な面よりも、その動作自体に意味の重心が移っていき、したためるは「書き記す」「食べる」の意味に限って用いられるようになりました。

5.紳士(しんし)

英国紳士

紳士」とは、礼儀正しく、教養や気品を備えた男性、成人の男性のことです。

紳士は「搢紳の士(しんしんのし)」の略です。
搢紳とは、笏(束帯着用の際に手に持つ細長い板)を紳(礼装用の幅の広い帯)に搢む(はさむ)の意味から、官位・身分の高い人を意味するようになった語です。

そこから、貴人・上流社会の人を表す言葉として「紳士」が使われるようになりました。

その後、「gentleman(ジェントルマン)」の訳語として、「淑女(lady レディー)」の対語となり、知性や教養が豊かで、礼儀正しく上品な男性を表す語として定着しました。

また、身だしなみの整った成人男性の意味から、「紳士服」や「紳士用トイレ」など、品物や場所について「成人男性」の丁寧な言い方として用いられるようにもなりました。

6.人口に膾炙する(じんこうにかいしゃする)

膾炙人口

人口に膾炙する」とは、詩句などが多くの人の評判になり、広く知られることです。

人口に膾炙するの「膾炙」は、生肉を細かく刻んで酢で和えた「なます(膾)」と「炙り肉」のことです。

膾炙

なますも炙り肉も美味で、誰の口にも合い、多くの人に好まれるところから、人々にもてはやされ、広く世間に知られることを「人口に膾炙する」と言うようになりました。

四字熟語では、「人口膾炙」または「膾炙人口」と言います。