日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.ずんだ餅(ずんだもち)
「ずんだ餅」とは、茹でた枝豆をすり潰し、砂糖と塩で味付けした美味しい餡をからめた餅です。
ずんだ餅の「ずんだ」の語源は、豆を潰す意味の「豆打(ずだ)」が訛ったものです。
仙台藩伊達政宗公の陣中で、太刀で枝豆をすり潰されたことが起源とも言われ、その由来から「陣太刀」が変化し「ずんだ」になったとする説もあります。
また、地域によっては「じんだ」「じんだん」とも言うため、「甚太」という人が作ったとする説もありますが、陣太刀説も甚太説も有力とはされていません。
本来、ずんだ餅は宮城や山形を中心とした東北地方のお盆料理ですが、お店では仙台名物として一年中販売されています。
2.すっぱ抜く(すっぱぬく)
「すっぱ抜く」とは、隠し事や秘密を暴いて明るみに出すことです。
すっぱ抜くの「すっぱ」は、戦国時代、武家に仕えた忍者(スパイ)のことで、漢字では「素っ破」や「透っ波」と書きました。
忍者は密かに行動し、情報を収集して明るみに出すことや、不意に刃物を抜くことから、出し抜いて暴くことを「すっぱ抜く」と言うようになりました。
現代では使われない意味ですが、刀を不意に抜き放つことも「すっぱ抜く」と言いました。
3.杜撰(ずさん)
「杜撰」とは、いい加減で誤りが多いこと、誤りが多い著作物のことです。
杜撰の語源は、中国の『野客叢書』の説が有力とされます。
その説は、杜撰の「杜」は、中国宋の詩人 杜黙(ともく)を表し、「撰」は詩文を作ること。
杜黙の作った詩は、律(詩の様式)に合わないものが多かったという故事に由来するというものです。
この故事から、著述に誤りの多いことを「杜撰」と言うようになり、物事がいい加減で、誤りが多いことの意味でも使われるようになったといわれます。
その他、杜撰の語源には、杜撰の「杜」が本物でない仮の意味の俗語とする説や、杜黙以外の人名を表す説もあります。
日本には禅を通じて「杜撰」の語が入ったとされ、古くは「ずざん(づざん)」と「さ」が濁音で発音されていました。
4.掏摸(すり)
「スリ」とは、人混みなどで、他人のバッグや懐中から金品を巧みに盗み取ること(また、その人のこと)です。巾着切り。ちぼ。
スリは、体を擦りつけるようにして盗み取ることから、こう呼ばれるようになりました。
スリを漢字で「掏摸」と書くきますが、中国では「掏摸」を「とうばく」と言い、元の時代から使われています。
「掏」は「すくう」が原義で、他人の懐から物をすくい取る意味の俗語です。
「摸」は「まさぐる」が原義で、手探りを意味します。
「掏摸」は行為としてのスリを表し、スリをする人を表す際は「掏児」の漢字が当てられます。
スリについては「香港で抱きつきスリの被害に遭いそうになった恐怖体験」「昏睡スリの被害に遭いかけた体験をご紹介します」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください
5.図々しい(ずうずうしい)
「図々しい」とは、厚かましいことです。
図々しいは「図(づ)」を重ねて形容詞化した語で、「づうづうしい」が本来の形です。
「企み」「計画」などを意味する漢語「図」から、「図に乗る」や「図に当たる」などの日本的用法が生まれ、それに関連付けて「図々しい」の語が生まれたとされます。
「図太い」の「図」を語源とする説もありますが、この場合の「図」は当て字であるため、図々しいの語源とは関係ありません。
6.ずぼら
「ずぼら」とは、行いや態度にしまりがなく、だらしないこと。きちんとしていないこと(また、そのさま)です。
ずぼらは、近世の上方の方言で「ずんべらぼん」「ずんぼらぼん」「ずんぼらぼん」など、凸凹(でこぼこ)や突き出した部分がなく、「つるつるなさま」「のっぺりとしたさま」を表した言葉が語源です。
これらの言葉は、大坂堂島で米相場がずるずる下がることを言ったところから生まれたといわれます。
また、「ぼら」という語は、方言で「体が大きい割に気が利かない」や「馬鹿者」の意味で使う地方も多く、「ずぼ」を「大きい体」や「嘘」の意味で用いる地域もあり、上方方言の「ずぼら」や「ずんべらぼん」などは、これらの言葉と同源と考えられます。
その他、ずぼらの語源には、江戸末期、修行を怠けたり酒に溺れる坊主が目立つようになったため、庶民は嘲笑って「ぼうず」を「ずぼう」と逆に読んで言い、「ずぼう」が「ずぼら」に変化したという説もありますが、有力な説とは考えられていません。
7.助平/助兵衛/スケベ(すけべ/すけべえ)
「スケベ」とは、好色なこと(また、そのような人や、そのさま)です。好き者。すけべえ。
スケベは漢字で「助平」と書き、本来の読みは「すけべい」です。
「好き」を洒落て擬人化した「好兵衛(すきべえ)」が転じて「助平(すけべい)」となり、現代では「スケベ」と言うことが多くなりました。
「すけべい」は江戸時代に上方で使われ始めた語で、主に男性に対して用いられていましたが、江戸中期には女性に対しても使われるようになりました。