日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.算盤(そろばん)
「そろばん」とは、横長の枠に珠(たま)を数個貫いた軸を並べ、指で珠を上下させて計算する計算器です。
そろばんは、室町時代末頃に中国より日本へ伝わりました。
古代中国では、数を数えることを「算」といい、数を数える盤の意味で「算盤」となりました。
算盤を「そろばん」と読むのは、唐音の「ソワンパン」が訛ったとする説が有力とされます。
他には、琉球語の「スヌパン」や「スルバン」、「走盤(そうばん)」からといった説もあります。
そろばんの漢字表記には「十露盤」の当て字以外にも、昔は「三羅盤」や「曾呂盤」など、50種以上の当て字が使われていました。
2.素麺(そうめん)
「そうめん」とは、小麦粉に塩水を加えてこね、油を塗って細く引き延ばして干した麺です。茹でて用います。冷やし素麺。流し素麺。
そうめんは、中国から伝来したと考えられ、室町時代から「索麺(さうめん)」の名で文献に見られます。
「索」には縄をなう意味があり、その製法が名前の由来と思われます。
江戸時代以降、「さう」と「そう」の発音が混同されて「そうめん」とも言われるようになり、「素麺」の表記が一般化しました。
そうめんの「そう」に「素」の字が当てられた由来は、麺の白さからと考えられています。
「素麺」「冷素麺(ひやそうめん)」は夏の季語で、次のような俳句があります。
・文月の ものよ五色の 絲素麺(正岡子規)
・のど過ぐる 渓流の音 冷素麺(鈴木光子)
・昼餉また 冷素麺に 異存なし(高澤良一)
・冷素麺 きらら光りの 切子鉢(星川佐保子)
3.卒寿(そつじゅ)
「卒寿」とは、数え年で90歳(また、その祝い)のことです。
卒寿は、「卒」の俗字「卆」を分解すると「九十」になることから、90歳を呼ぶようになりました。
卒寿の祝い方は、基本的に還暦と同じですが、祝いの色は古希・喜寿・傘寿と同じく紫です。
4.雀斑(そばかす)
「そばかす」とは、顔や首・手など露出の多い部分にできる褐色の小斑点のことです。女子に多く、思春期に目立ちはじめ、日光に当たると増えます。
そばかすは、江戸時代から見られる語で、読みの「そばかす」と漢字の「雀斑」は、それぞれ別のものに由来します。
読みの「そばかす」は、ソバの実を粉にした後の「蕎麦殻(そばがら)」に似た斑点ができることから、「蕎麦の滓(そばのかす)」で「そばかす」と呼ばれるようになりました。
漢字の「雀斑」は、そばかすの斑点が、スズメの羽にある斑点に色や形が似ているため、当てられたものです。
そばかすには、スズメの卵にある斑点の模様に似ていることから「雀卵斑(じゃくらんはん)」、直射日光に当たる機会が多い夏に増えることから「夏日斑(かじつはん)」といった呼び方もあります。
5.染井吉野(そめいよしの)
「ソメイヨシノ」とは、サクラの一種で、オオシマザクラとエドヒガンとの雑種です。日本の代表的な桜。
ソメイヨシノは、染井村(現在の東京都豊島区駒込)の植木屋が江戸時代末期に品種改良した園芸品種で、明治以降全国に広まりました。
染井村にちなんだ名前ですが、当初は「ソメイヨシノ」でなはなく、奈良県山岳部の桜の名所「吉野山」にちなんで、「吉野桜」と命名されていました。
しかし、吉野山の桜はヤマザクラの類で、「吉野桜」の名は誤解を招くとして、明治33年(1900年)、上野公園の桜を調査した藤野寄命博士が「染井吉野(ソメイヨシノ)」と命名し、『日本園芸雑誌』に発表したことに由来します。
6.そそっかしい
「そそっかしい」とは、態度や行動に落ち着きがない、あわて者である、不注意であることです。
そそっかしいは、「そそかし(い)」を促音化し、強調した語です。
「そそかし」は、「取り急ぎ事をする」という意味の自動四段動詞「そそく」が形容詞化した語。
「そそく」は、「慌てる」「そわそわする」という意味の自動四段動詞「いすすく」に由来します。
そそっかしいは、落ち着きないさまが本来の意味ですが、そこから「不注意だ」「軽率だ」という意味も含まれるようになりました。
古くは、そそっかしいと同系の形容詞に「そそこし」「そそかはし」などがありました。