日本語の面白い語源・由来(て-⑦)天婦羅・丁稚・的屋・田楽・手塩に掛ける・天手古舞・デブ・出たとこ勝負

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天婦羅

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.天婦羅/天麩羅/天ぷら(てんぷら)

天婦羅

天ぷら」とは、魚・貝・野菜などに、小麦粉を卵・水で溶いた衣つけて油で揚げた料理です。

天ぷらは、室町時代に日本に入ってきた南蛮料理の一種です。

天ぷらの語源には、ポルトガル語で「調理」を意味する「tempero」や、スペイン語で「天上の日(鳥獣の肉が禁じられ、魚肉の揚げ物を食べる日)」を意味する「templo」のほか多くの説がありますが、決定づける文献もなく、正確な語源は分かっていません。

天ぷらの漢字「天麩羅」は、「天」が「天竺(てんじく)」、「麩」は「小麦粉」、「羅」は薄い衣を表し、天竺から来た浪人が売る小麦粉の薄物という意味で、江戸時代に戯作者の『山東京伝』が考えたものとされます。

「天婦羅」の漢字は、「天麩羅」の当て字を変えただけのものと考えられます。

2.丁稚(でっち)

番頭はんと丁稚どん・大村崑ら

私が小学生の頃、毎日放送テレビで「番頭はんと丁稚どん」という大人気コメディードラマがありました。丁稚役の大村崑主演で、番頭役の芦屋雁之助や先輩丁稚役の芦屋小雁らが出演していました。映画にもなっています。

映画・番頭はんと丁稚どん番頭はんと丁稚どん・映画番頭はんと丁稚どん・映画・3

丁稚」とは、職人や商人などの家に奉公し、雑用に従事する少年のことです。丁稚として商家などに奉公することを「丁稚奉公」といいます。

丁稚の語源は諸説あり、「弟子」が変化した「でっし」の転じた語とする説。
若者や身分の低いことを意味する漢語「丁稚(ていち)」が転じたとする説。
小さいものであることから、すごろくで二つのサイコロの目が共に「一」になる意味の「重一・調一・畳一(でっち)」が転じたとする説があります。

一般に漢字で「丁稚」と書くため漢語の説が有力ですが、「丁児」「調市」「童奴」と書かれた例も見られるため、漢語の転とは言い切れません。

すごろくも関連性が薄いことから、「弟子」の転に漢語を当てたとするのが妥当です。

「丁稚」は主に上方で使われていた言葉で、江戸では「小僧」と呼ばれていました。

3.的屋/テキ屋(てきや)

的屋

テキ屋」とは、縁日や盛り場などで品物を売る業者のことです。香具師(やし)。

テキ屋の語源は、以下の通り諸説あります。

①当れば利益を得るため、的に矢が当たることになぞらえたとする説。
②「香具師(やし)」の「や」と、似た性質を表す時に用いられる「的(てき)」から「やてき」となり、転倒して「てきや」になったとする説。
③遊技用の小弓を射させる「的屋(まとや)」の「的」を音読みしたとする説。

4.田楽(でんがく)

田楽

田楽」とは、豆腐やナス、こんにゃく、里芋などに味噌を塗って焼いた料理です。田楽焼き。味噌田楽。田楽豆腐。

この料理名は、平安時代に行われていた「田楽」という芸能に由来します。

芸能としての「田楽」は、田植えの際に豊作を祈り、田の神を祭って歌い舞った「田舞(たまい)」が発達した芸能で、鎌倉末期まで流行しましたが室町後期には衰退し、現代では民俗芸能として神社などで行われています。

その踊りを踊る芸人の姿と、豆腐を串に刺した形が似ていたことから、この料理は「田楽」と名付けられました。

「田楽」「木の芽田楽」は春の季語で、次のような俳句があります。

・田楽や 板一枚の 下は谷(永田青嵐)

・田楽に 塗りつけてある 緑かな(長谷川櫂)

・ご城下の 豆腐田楽 二本差し(田部黙蛙)

・田楽の 竹の串とは 熱きもの(佐藤一村)

5.手塩に掛ける(てしおにかける)

手塩に掛ける

手塩にかける」とは、自分で直接世話をして大切に育てることです。

手塩」の語は室町時代から見られ、元は膳の不浄を払うために小皿に盛って添えた塩のことでした。

のちに、食膳に添えられた少量の塩を「手塩」と呼ぶようになりました。

食膳の手塩は、味加減を自分で調えるように置かれたものなので、人任せにせず、自らの手をかけて面倒を見ることを「手塩にかける」と言うようになりました。

世話をする意味で「手塩にかける」が使われるようになったのは、江戸時代からです。

6.天手古舞/てんてこ舞い(てんてこまい)

てんてこ舞い

てんてこまい」とは、忙しくて休む暇もなく動き回ることです。

てんてこまいの「てんてこ」は、祭囃子や里神楽で用いる小太鼓の音のことです。
その音に合わせて慌しく舞う姿から、休む暇なく動き回ることを「てんてこ舞い」と言うようになりました。

てんてこ舞い

一説には、男装をした女性が、山車や神輿を先導をして舞った舞を「手古舞(てこまい)」と言い、「てこまい」が変化して「てんてこまい」になったとも言われます。

この舞が、てんてこまいの語源か定かではありませんが、てんてこまいに「天手古舞」の漢字が当てられたのは、「手古舞」からと考えられます。

7.デブ

デブ

デブ」とは、太っていること、また太った人のことです。

デブの語源には、「Double chin(二重あご)」が「デブちん」となり「デブ」になったとする説や、「Death and Burst(死と爆発)」からとする説があります。

「デブ」という名詞は、明治時代以降に使われ始めた言葉であるため、これらの英語語源説は完全に否定できません。

しかし、江戸時代には「デブ」を表す「でっぷり」や「でぶでぶ」という言葉が存在します。
そのため、「出っ張り」から派生した擬態語「でっぷり」や「でぶでぶ」が名詞化され、「デブ」になったと考えるのが妥当です。

その他、デブの日本語説には「出不精(でぶしょう)」の略とする説もあります。
しかし、出不精を「デブ症」と勘違いする人がいるというだけのことで、デブの語源ではありません。

8.出たとこ勝負(でたとこしょうぶ)

出たとこ勝負

出たとこ勝負」とは、計画や準備をせずに、その場の成り行きに任せて事を運ぶことです。

出たとこ勝負は、サイコロ賭博に由来します。

さいころ賭博

サイコロ賭博では、出た賽の目の数で勝負が決まりますが、どの目が出るかは予測がつきません。

そこから、何も対策などを立てずに物事を進めていくことをたとえ、「出たとこ勝負」と言うようになりました。