日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.二枚目(にまいめ)
二枚目俳優と言えば、団塊世代の我々には映画「若大将シリーズ」や「君といつまでも」というヒット曲などで有名な加山雄三さん(1937年~ )がまず思い浮かびます。
我々より少し上の世代にはフランスの映画俳優アラン・ドロン(1935年~ )が人気の二枚目でした。
「二枚目」とは、「美男子。ハンサム。男前」のことです。
二枚目は、上方歌舞伎の芝居小屋の前に掲げられた八枚看板で、一枚目に主役、二枚目に美男役、三枚目に道化役の名前が書かれていたことに由来します。
二枚目の役者には、男女間のもつれを演じる「和事師」、男女の濡れ場を演じる「濡事師」などがあります。
「二枚目」や「三枚目」の言葉は現在でも使われ、「一枚目」が使われない理由については、「一枚看板」の項をご覧ください。。
2.二の足を踏む(にのあしをふむ)
「二の足を踏む」とは、「躊躇すること。尻込みすること」です。
二の足を踏むの「二の足」とは、二歩目を意味します。
一歩目を踏み出し、二歩目を踏み出すのに思い悩んで足踏みすることから、物事を進めるのに思い切ってできないことのたとえとして、「二の足を踏む」と使われるようになりました。
3.二束三文(にそくさんもん)
最近は「不用品買い取り」が大はやりですが、高値で買った品物でも、売る時には「二束三文」にしかならないと身に染みて実感します。
「二束三文」とは、「数が多くても値段が非常に安くて値打ちがないこと。ほとんど利益なしで売るときの値段のこと」です。
二束三文の「文」は、昔のお金の低い単位です。二束三文は、二束(ふたたば)でも、三文というわずかな金額にしかならないことに由来します。
「二足三文」と書くこともあり、江戸初期の「金剛草履」の値段が、二足で三文の値段であったことに由来するともいわれます。
「二束」と「二足」のどちらが先に使われ始め、どちらが変化したものか未詳です。
「三文」という言葉は「三文判」や「三文芝居」など安物や粗末な物の意味で使われており、「二束三文」の「三文」も実際にその金額で売られていたわけではなく、安物を表していると考えられるため、「二足三文」の説はやや説得力に欠けます。
4.二進も三進も(にっちもさっちも)
「にっちもさっちも」とは、「どうにもできないさま。どう勘定しても。どう工夫しても」という意味です。行き詰ってどうにも出来ない時に「にっちもさっちもいかない」と使われます。
にっちもさっちもは、そろばん用語が語源です。
「にっち」は「二進(にしん)」、「さっち」は「三進(さんしん)」の音が変化した語。
「二進」とは2割る2、「三進」とは3割る3のことです。
ともに割り切れ、商に1が立って計算が出来ることを意味していました。
そこから、2や3でも割り切れないことを「二進も三進も行かない」と言うようになり、しだいに計算が合わないことを意味するようになりました。
さらに、商売が金銭面でうまく行かないことの意味になり、どう工夫しても身動きがとれない意味で「にっちもさっちもいかない」と使うようになりました。
5.苦汁/滷汁(にがり)
「にがり」とは、「海水から食塩を結晶させたとき、後に残る苦みをもつ溶液」です。
にがりは、口に含むと苦いことから、「苦々しい顔をする」という意味の動詞「苦る(にがる)」が名詞形になったもので、苦塩(にがしお)とも呼ばれます。
にがりは古くから、豆腐の凝固剤や建築材料に用いられています。