日本語の面白い語源・由来(は-④)パスタ・パンナコッタ・反面教師・はしたない・バナナ・馬鈴薯・鳩・ハードボイルド

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パスタ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.パスタ/pasta

パスタ

パスタ」とは、「小麦粉を水や卵などで練ったイタリア料理に用いる麺類の総称」です。スパゲッティ・マカロニ・ラビオリ・ラザニア・ニョッキなど多くの種類があります。

パスタは、イタリア語「pasta」からの外来語で、「振る」「揺すぶる」を意味する印欧祖語の「*qwēt-(*kwet-)」に由来します。

「*qwēt-」が「撒き散らす」「振りかける」を意味するギリシャ語「pásse」となり、その過去分詞「pastós」を名詞として使い、大麦のポリッジ(粥)を指す「pástē」「pastá」という語が生まれました。

これがラテン語に入って「pasta」となりましたが、「小麦粉を練ったもの」という意味での使用は、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語に入ってからのことです。

日本で「パスタ」の語が最初に使われたのは、1965年(昭和40)6月刊の『イタリアパスタの研究』で、それ以前は「マカロニ」が「パスタ」の代用となる言葉でした。

2.パンナコッタ/panna cotta

パンナコッタ

パンナコッタ」とは、「生クリームに牛乳・砂糖などを加え、ゼラチンで固めたイタリア発祥のデザート」です。

パンナコッタは、イタリア語「panna cotta」からの外来語です。
「panna(パンナ)」が「生クリーム」、「cotta(コッタ)」が「煮た」を意味しますが、ここでは「cooked」に近く、「panna cotta」は「調理済みクリーム」という意味になります。

パンナコッタの発祥は北イタリアのピエモンテ州ランゲ地方で、1900年代初頭にハンガリー出身のバレリーナが恋人のために作ったのが始まりと言われます。

パンナコッタは1990年代にアメリカで流行し、日本ではティラミス、ナタデココに続くデザートとして、1994年にブームとなりました。

3.反面教師(はんめんきょうし)

反面教師

反面教師」とは、「悪い見本として反省や戒めの材料となる人や事柄」のことです。

反面教師は、人民に正しい道を教える「正面教師」に対する言葉です。
1957年に中国の毛沢東が行った演説に由来し、中国語では「反面教员」といいます。
毛沢東は、反面教師を排除せず、「正面(正しい道)」と「反面(誤った道)」の両面教育を受けさせることで、人々は比較と対象を通じて鍛錬され、正しい方向に導かれるという、反面教師の重要な役割を説きました。

4.はしたない

はしたない

はしたない」とは、「慎みがなく無作法である。下品で見苦しい。みっともない」ことです。

はしたないは、数が揃わないことや半端なことを表す「はした」に、形容詞をつくる接尾語「ない(古くはナシ)」が付いた語で、元々は「中途半端なさま」をいいました。

そこから、「どっちつかずで収まりが悪い」「きまりが悪く、いたたまれない」という、自身の恥ずかしい感情を表す語として用いられるようになりました。

さらに転じて、「行儀が悪い」「見苦しい」といった、相手の態度に対して抱く不快な感情を表すようになりました。

これが現代の「はしたない」の用法に繋がる意味の変化ですが、これらの意味以外にも「迷惑だ」「厄介だ」「むごい」「そっけない」「物事の程度が甚だしい」「大したものだ」など、「はしたない」は様々な意味で使われていました。

5.バナナ/banana

バナナ

バナナ」とは、「バショウ科バショウ属の多年草のうち、果実を食用とするものの総称。また、その果実」のことです。

バナナは、英語「banana」からの外来語です。

バナナの語源には、足の指を意味するアラビア語「banaana」に由来する説と、この果実を指すウォロフ語「banana」とする説があります。

バナナの1本ずつを「finger(指)」と呼んだり、バナナを扱う日本の会社では房を「ハンド」と呼んだりするせいか、日本では「手足の指」を意味するアラビア語説が多いですが、英語圏の文献で見られるのはウォロフ語説のみです。

アフリカのコンゴでは、果実部分を「banaana」、木の部分を「banano」と呼ばれていたことが、1563年のポルトガルの文献に書かれています。

「バナナ」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・川を見る バナナの皮は 手より落ち(高浜虚子

・バナナ持ち 洗濯機の中 のぞきこむ(しらいししずみ)

・バナナ下げて 子等に帰りし 日暮かな(杉田久女)

・青バナナ 逆立ち太る 硝子の家(西東三鬼)

6.馬鈴薯(ばれいしょ)

馬鈴薯

馬鈴薯」とは、「ジャガイモの別名」です。

本草学者の小野蘭山が『耋筵小牘』(1808年)の中で、馬鈴薯をジャガイモ(当時の呼称はジャガタライモ)として解説したことから、ジャガイモは「馬鈴薯」と呼ばれるようになりました。

「馬鈴薯」は中国語に由来する言葉で、中国の『松渓県志』(1700年)に「馬鈴薯は、葉は樹によって生ず。これを掘り穫れば、形に大小ありてほぼ鈴の如し。色は黒く、丸く、味は苦甘し」とあります。

『松渓県志』で解説されている「馬鈴薯」は、マメ科のホドイモのことでした。
それを小野蘭山がジャガイモと誤解して紹介したもので、馬鈴薯とジャガイモは異なるものであったという指摘があります。

しかし、1800年頃の中国ではジャガイモも「馬鈴薯」と呼んでいるため、ホドイモと勘違いしたわけではなかったとの見方もあります。

馬鈴薯の語源には、馬に付ける鈴に似た形の薯(いも)からとする説と、マレー半島の薯のこととする説があります。

『松渓県志』の中でも「鈴の如し」とあるように、地下で鈴なりに生った塊茎を馬の鈴に見立てた説が有力です。

「馬鈴薯」は秋の季語で、次のような俳句があります。

・馬鈴薯の 宅送届く 紋別産(高澤良一)

・馬鈴薯の ゑくぼ大きは 男爵か(千葉仁)

・馬鈴薯の 白さを秘めし 土のまま(稲畑汀子)

・馬鈴薯を 夕蝉とほく 掘りいそぐ(水原秋桜子)

7.鳩(はと)

鳩

ハト」とは、「ハト目ハト科の鳥の総称」です。頭が小さく、ずんぐりとした体型。翼が発達してよく飛びます。

ハトの語源には鳴き声に由来する説もありますが、飛ぶ際の羽音「はたはた」か、「はやとり(速鳥)」に由来する説が有力と考えられています。

ただし、奈良時代からハト類は「はと」と呼ばれており、特定は困難です。

漢字の「鳩」は鳴き声に由来し、「九」が「クック」「クルックー」というハトの鳴き声を表すということです。

8.ハードボイルド/hard-boiled

ハードボイルド

ハードボイルド」とは、「客観的で簡潔に描く小説の文体。謎解きよりも主人公の人間的側面を中心に描く推理小説や映画のジャンル。非情なこと」です。

ハードボイルドは、英語「hard-boiled」からの外来語で、元来は、卵などの「固茹で」を意味する形容詞です。

この複合形容詞が現れるのは18世紀頃からで、当初は卵の茹で方を表すのみでしたが、しだいに「卵が固く流動しない」という意味を持つようになりました。

そこからハードボイルドは、「感情に左右されない」「非情な」といった心理面を表す言葉としても使われるようになり、第一次世界大戦後のアメリカ文学に始まった写実主義の手法や、感情に流されない主人公を描いた推理小説や映画のジャンルも表すようになっていきました。

アメリカでは俗に、ハードボイルドがワイシャツなどを「固く糊付けした」の意味でも使われます。

また、「a hard-boiled egg」は「固茹で卵」を表すほか、「非情で意志の強い男」の意味でも使われます。