日本語の面白い語源・由来(む-②)ムームー・群雀・虫の知らせ・鼯鼠・椋鳥・胸倉・虫酸が走る

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ムームー

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.ムームー/muumuu

ムームー

ムームー」とは、「ハワイの女性が着る、長くゆったりしたワンピース状の衣服」です。派手な柄の木綿地で作られます。

ムームーは、ハワイ語「muumuu」から英語を経由して日本に入った語です。
ハワイ語では「短く切る」「切り取られたもの」という意味があります。

アメリカ本土の宣教師がハワイの女性に着せた、長くゆったりとしたガウン風のドレスが始まりで、ハワイの気候に合うよう袖や襟を短くしたことから、「ムームー」と呼ばれるようになったといわれます。

日本では、昭和36年(1961年)頃から普及し始め、夏の家庭着やリゾートウェアとして着用され、健康ランドなどの女性用館内着としても用いられるようになりました。

2.群雀/金雀花(むれすずめ)

群雀

ムレスズメ」とは、「中国原産のマメ科の落葉低木」です。葉は2対の4小葉からなる羽状複葉。春、黄色から赤黄色に変わる蝶形の花が葉腋に下垂して咲きます。

ムレスズメは、蝶形の花が斜め下向きにたくさん咲き、群れたスズメのように見えることからの名です。

「金雀花」は中国名で、花を金色のスズメとたとえたものです。
日本へは江戸時代に伝来しました。

「群雀」は春の季語です。

3.虫の知らせ(むしのしらせ)

虫の知らせ

虫の知らせ」とは、「よくないことが起こりそうな気がすること。悪い予感」です。

虫の知らせの「虫」は、古く、人間の体内に棲み、意識や感情にさまざまな影響を与えると考えられていたもので、潜在意識や感情の動きを表します。

「虫がいい」「腹の虫が治まらない」などの「虫」も、この考えから生じた語です。
これら「虫」の付く言葉の多くが悪い事柄に用いられるのは、生まれた時から人体に棲み、人が眠っているすきに体内から抜け出して、その人の罪悪を天帝に知らせるという道教の「三尸(さんし)・三虫(さんちゅう)」に由来するためと考えられます。

4.鼯鼠/鼺鼠(むささび)

ムササビ

ムササビ」とは、「体長約40cm、尾長約35cmで前後肢の間に飛膜があり、木から木へ滑空する夜行性のネズミ目リス科の哺乳類」です。バンドリ。ノブスマ。

ムササビは胴体が小さいことから、「ミササビ(身細)」の意味とする説があります。
これは飛膜を広げた時と比較したものですが、鳥でもないのに飛ぶ動物を見て、体の小ささを名前とするか疑問です。

古くは「ムザサビ」とも言ったことや、妖怪の一種として恐れられていたことを考慮すると、「ムザ(ムサ)」はムジナの「ムジ」と考えられます。

t音はs音に変化しやすいことから、「サビ」は「トビ(飛び)」→「タビ」→「サビ」と変化したものと思われます。

異名の「バンドリ」は、夜行性で飛ぶことから「晩鳥」の意味です。

「ノブスマ」の「ブスマ(フスマ)」は、現在でいう掛け布団の役割をしていた「衾(ふすま)」のことで、野にいて飛膜を広げた姿が衾のようであることからの名です。

「むささび」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・むささびの 鳴く夜も廻す 艾臼(もぐさうす)(衣川砂生)

・むささびの 爪あと杉に 秋の暮(伊藤京子)

・むささびの 飛ぶ黒白の 夕景色(長谷川双)

・むささびの 顔現れし 巣箱かな(上村佳与)

5.椋鳥(むくどり)

ムクドリ

ムクドリ」とは、「全長約24センチ、黒褐色で顔と腰に白い部分が混じり、くちばしと脚は橙黄色のスズメ目ムクドリ科の鳥」です。

ムクドリはムクノキ(椋木)の実を好んで食べることからの名というのが定説となっていますが、ムクノキ以外の種子や果実、昆虫なども食べます。

ムクドリの大群

ムクドリの特徴は、何万羽ともいわれる大群をつくって「リャーリャー」と鳴くところにあるため、「群木鳥(ムレキドリ)」や「群来鳥(ムレキドリ)」の略転説があります。

ムクドリには「群れ」に通じる方言も多いことから、ムクドリの語源も「群れ」で、そこにムクノキの実を食べるところが関連づけられたと考えるのが妥当です。

「椋鳥」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・椋鳥や 枝に来るほど 木の葉散る(桃水)

・椋鳥や 分れて戻る 二羽三羽(鈴木花蓑)

・椋鳥百羽 命拾ひし 羽音かな(炭太祇)

・一山の 椋鳥集め 椋大樹(力丸青花)

6.胸倉/胸座/胸ぐら(むなぐら)

胸倉

胸ぐら」とは、「着物を着たとき、左右の襟が重なる合わせ目のあたり」のことです。

胸ぐらの「むな」は、複合語の中で「胸」が使われるときの形です。
胸ぐらの「ぐら」には、「がら」の変化で「外皮」「外殻」など「殻(から)」の意味とする説。
着物の襟が重なり合う部分で、他よりも盛り上がっていることから、漢字表記のとおり「倉・座(くら)」の意味、もしくは「やぐら」の意味。
左右の襟が重なる部分で絡み合っているところから、「絡む・搦む(からむ)」の意味など諸説あります。

胸ぐらの古い言い方には、「むながら」「むなづから」「むながらみ(胸搦み)」「むながい(胸交い)」「むなづくし(胸尽くし)」などがあります。

中でも、「むながら」が比較的古くから見られ、「むなづから」の「づ」は格助詞の「の」の意味と思われるため、「殻」の説が有力です。

ただし、「むながらみ」や「むながい」の語も存在することから、胸ぐらの「ぐら」は「からむ」の意味とも考えられます。

7.虫酸が走る/虫唾が走る(むしずがはしる)

虫唾が走る

虫酸が走る」とは、「胸がむかむかするほど不快でたまらない」ことです。

虫酸が走るの「虫酸(虫唾)」は、胸がむかむかした時に胃から口に出てくる酸っぱい液のことで、「走る」は口に出てくることです。

虫酸が走るは、虫酸が口に出てくるほど、不快でたまらないという意味になります。

虫酸の語源には、胃の中にいる寄生虫が出す唾液と考えた「虫の唾」とする説と、寄生虫による酸っぱい液なので「虫の酸」とする説があります。

そのため、漢字も「虫酸」と「虫唾」の表記があり、歴史的仮名遣いも「むしづ」と「むしず」の二説あります。