牛が付く言葉(その2)ことわざ・慣用句

フォローする



子牛

前に「猫が付くことわざ・慣用句」「犬が付くことわざ・慣用句」「豚が付くことわざ・慣用句」についての記事を書きましたが、牛が付くことわざ・慣用句もたくさんあります。

そこで今回は「牛が付くことわざ・慣用句」をご紹介したいと思います。

1.「牛」が付くことわざ

・商いは牛の涎(あきないはうしのよだれ)

商いは牛の涎

商売のこつは牛のよだれのように細く長く切れ目なく、気長に辛抱して続けることだということ。

・牛売って牛にならず(うしうってうしにならず)

見通しを立てないで買い換えると損をすること。買い替えると損をすることのたとえ。

牛を売った代金で、代わりの牛を買おうとしても金が足りないこと。 だれでも自分の物は高く評価しがちで、売り値は安く買い値は高くなり、人に儲けられるだけだということ。

・牛に経文(うしにきょうもん)

牛に経文

いくら言い聞かせてみても、何の効果もないことのたとえ。「馬の耳に念仏」と同義。

・牛に対して琴を弾ず(うしにたいしてことをだんず)

牛に対して琴を弾ず

愚か者にいくら立派な道理を説いても何の役にも立たないことのたとえ。牛に琴を聞かせても反応がないことから。

・牛に引かれて善光寺参り(うしにひかれてぜんこうじまいり)

牛に引かれて善光寺参り

人に連れられてある場所へ出かけて行くこと。また、自分の意思ではなく他人の誘いによって、よい方向に導かれることのたとえ。

「善光寺の近くに住んでいた不信心な老婆が布をさらしていると、その布を牛が角にひっかけて逃げてしまった。老婆は牛を追いかけて善光寺に着き、その縁によって信仰するようになった」という故事から。

・牛の角を蜂が刺す(うしのつのをはちがさす)

牛の角を蜂が刺す

なんとも感じないこと、あるいは効果がないことのたとえ。牛は蜂に角を刺されても、全く痛くもかゆくも感じないことから。

・牛は牛連れ馬は馬連れ(うしはうしづれうまはうまづれ)

同類は同類同士で集まりやすく、その仲間同士で物事を行えばうまくいくということ。

・牛も千里馬も千里(うしもせんりうまもせんり)

早い遅い、上手い下手の違いがあっても結局は同じところに到達するというたとえ。牛がゆっくりと歩いても馬が早く走っても千里の道のりはやはり千里で、同じ目的地に着くことから。

・牛を馬に乗り換える(うしをうまにのりかえる)

不利な方から有利な方へ乗りかえることのたとえ。
足ののろい牛から足の速い馬に乗り換えることから。

・馬に乗るまでは牛に乗れ(うまにのるまではうしにのれ)

高い地位につくためには、まず低い地位で力をつけよということ。また、最善の策がとれない時は、次善の策をとれということ。
馬は牛よりも速いが乗るのが難しいので、ひとまず牛に乗って練習せよとの意から。

・馬を牛に乗り換える(うまをうしにのりかえる)

優れたものを捨て、劣っているものに換えること。
足の速い馬から足の遅い牛に乗り換えることから。

・遅牛も淀、早牛も淀(おそうしもよど、はやうしもよど)

早い遅いの差はあっても、結果は同じだからあわてることはないということ。
「淀」は京都市伏見区にある地名で、集荷場として栄えた場所。
荷物を運ぶ牛の歩みに多少の差があっても、結局行き着く所は淀であるとの意から。
「早牛も淀、遅牛も淀」とも言います。

・女賢しゅうして牛売り損なう(おんなさかしゅうしてうしうりそこなう)

女は利口そうに見えても、目先の利にとらわれて大局を見通せずに失敗するというたとえ。
女が出しゃばり過ぎて売り物の牛について余計なことを言い、売り損なってしまったという話から。

・蝸牛、角上の争い(かぎゅう、かくじょうのあらそい)

狭い世界でのつまらない争いのこと。
「蝸牛」はかたつむり、「角上」はつのの上のこと。
かたつむりの左の角の上にある触という国と右の角の上にある蛮という国が、領土を争ったという寓話から。
「蝸角の争い(かかくのあらそい)」とも言います。

・食ってすぐ寝ると牛になる(くってすぐねるとうしになる)

食べてすぐ横になる行儀の悪さを戒める言葉。

・暗がりから牛を引き出す(くらがりからうしをひきだす)

区別がつきにくいこと。また、動作が鈍いこと。
暗い所に黒い牛がいても姿がはっきりしないことから。

単に「暗がりから牛」、または「暗がりの牛」「闇から牛を引き出す」「暗闇から牛を引き出す」とも言います。

・鶏口となるも牛後となるなかれ(けいこうとなるともぎゅうごとなるなかれ)

たとえ小さな集団でもその頭になるほうが、大きな集団で人の尻についているよりもよいというたとえ。
「鶏口」は、鶏の口のことで小さな集団の長のたとえ。
「牛後」は、牛の尻のことで強大な者につき従って使われる者のたとえ。

略して「鶏口牛後(けいこうぎゅうご)」とも言います。

・呉牛、月に喘ぐ(ごぎゅう、つきにあえぐ)

取り越し苦労をするたとえ。

「呉牛」は、中国の呉地方にいる水牛のこと。呉牛は暑さが苦手で、月を太陽と見誤って喘いだということから。

・卵を盗む者は牛も盗む(たまごをぬすむものはうしもぬすむ)

小さな悪事をはたらいた者は、いずれ大きな犯罪を犯すようになるということ。そのためにも、ちいさな悪事も見逃さずに戒めるべきであるということ。

・角を矯めて牛を殺す(つのをためてうしをころす)

わずかな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにしてしまうたとえ。
「矯める」は、矯正すること。
曲がっている牛の角をまっすぐに直そうとして、牛を死なせてしまうことから。
「角を直して牛を殺す」とも言います。

・年寄りの言うことと牛の鞦は外れない(としよりのいうこととうしのしりがいははずれない)

経験豊富な年寄りの意見に間違いはないということ。
「鞦」は、馬や牛の尻にかけて鞍を固定する紐のこと。

・鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん(にわとりをさくにいずくんぞぎゅうとうをもちいん)

小さな事柄を処理するのに、大がかりな手段は必要ないということ。

「焉んぞ」は、どうしての意。「牛刀」は、牛を料理するときに使う大きな包丁。
鶏をさばくのに、どうして牛刀を使う必要があるだろうかという意味から。

・羊を以て牛に易う(ひつじをもってうしにかう)

小さな物を大きな物の代わりにするたとえ。また、本質に変わりがないが、工夫して少しでも良くしようとするたとえ。

いけにえの牛を憐れんで羊を代用するということから。

・人の牛蒡で法事する(ひとのごぼうでほうじする)

人の物を利用して自分の義理を果たすことのたとえ。

他人が持ってきた牛蒡を使って精進料理を作り、法事のもてなしをすることから。

・風する馬牛も相及ばず(ふうするばぎゅうもあいおよばず)

たがいに遠く離れていることのたとえ。転じて、自分とは無関係であること。また、そのような態度をとること。「風馬牛(ふうばぎゅう)」とも言います。

「風」は盛りがつくこと。盛りのついた馬や牛が、雌雄互いに求め合っても遠く隔たっていて会うことが出来ないとの意から。

・牝牛に腹突かれる(めうしにはらつかれる)

油断していた相手に不意打ちされ、ひどい目に遭うたとえ。
雄牛に比べておとなしい牝牛に、突然腹を突かれることから。

2.「牛」が付く慣用句

・牛の歩み(うしのあゆみ)

ゆっくりと歩く牛のように、ものごとの進み方が遅いことのたとえ。

・牛の一散(うしのいっさん)

日頃は決断の遅い人が、深く考えもせずむやみに行動することのたとえ。

歩みののろい牛が、何かのはずみで一目散に走り出すことから。

・牛の糞(うしのくそ)

①つまらないもののたとえ。

②表面は剛直に見えるが、内側は柔らかい人。殊に、女にとって油断のならない男を言います。

③ (牛の糞が段々になっているところから)ぐるぐる巻きに結った女性の髪形。また、物事には順序、段階があることのたとえ。

・牛の角突き合い(うしのつのつきあい)

仲が悪く、何かにつけて争い合うこと。

・牛の骨(うしのほね)

素性の知れないもののたとえ。「馬の骨」と同じ。

・牛の涎(うしのよだれ)

細く長くだらだらと続くことのたとえ。

・牛負けた(うしまけた)

馬勝った(旨かった。おいしかった)という洒落の言葉。

・牛を食らうの気(うしをくらうのき)

幼い頃から大きな目標を持っていることのたとえ。
虎や豹は、子どもの時から自分より大きな牛を食おうとするほどの激しい気性を持っているの意から。
「食牛の気(しょくぎゅうのき)」とも言います。

・牛耳る(ぎゅうじる)

団体や組織を支配し、思いのままに動かすこと。「牛耳 (ぎゅうじ) 」の動詞化。

「牛耳を執(と)る」とも言います。

・草木も眠る丑三つ時(くさきもねむるうしみつどき)

江戸時代の時刻制度・不定時法

気味が悪いほど、ひっそりと静まりかえっている真夜中のたとえ。

「丑三つ時」とは、昔の時刻で丑の刻を四つに分けたうちの三番目のこと。
現在の時間では、午前2時から2時半頃で、化け物や幽霊が出る時言われているいます。

・牛蒡抜き(ごぼうぬき)

①牛蒡を引き抜くように、棒状のものを力を入れて一気に引き抜くこと。

②多くの中から一つずつを勢いよく抜くこと。座り込みの人などを一人ずつ排除したり、人材を引き抜いたりする場合に用いる。(例文:ピケ隊を牛蒡抜きにする)

③競走などで、数人を一気に抜くこと。(例文:10人を牛蒡抜きにして堂々入賞する)