神田松之丞は、2020年2月に「真打昇進」することが決定しました。
先輩9人をごぼう抜きです。これからも、新しい講談ファンを増やしてくれることを期待したいと思います。
神田松之丞は、2020年2月11日付けで、講談の大名跡である「神田伯山」を六代目として襲名(六代目神田伯山)しました。
1.講談とは
皆さんは、「講談」と聞いてどんなイメージをお持ちでしょうか?「落語とどう違うの?」「浪曲(浪花節)とどう違うの?」「講談も落語も浪曲も古臭い演芸!」という印象をお持ちの方も多いと思います。
確かに「雅楽」「歌舞伎」「文楽」「能」「狂言」「日本舞踊」「邦楽」などの「古典芸能」と同じように、あるいはそれ以上に馴染みが薄いかも知れません。
講談とは、「高座に置かれた『釈台』と呼ばれる小さな机の前に座り、張り扇(はりおうぎ)でそれを叩いて調子を取りつつ、軍記物(軍記読み)や政談など主に歴史にちなんだ読み物を観衆に対して読み上げる芸」のことです。
実は私は、子供の頃、風邪をひいて寝込んだ時などにNHKラジオの「講談」をよく聞いたものです。
私の特に印象に残っている演目は、「義士伝」(仇討物。赤穂義士を読んだ講談で、「本伝」「銘々伝」「外伝」からなる大長編)、「太閤記」(軍談。豊臣秀吉の伝。「長短槍試合」、「桶狭間の戦い」、「墨俣一夜城」、「天王山」など)、「柳田格之進(やなぎだかくのしん)」(端物。五十両を盗んだとの嫌疑をかけられた浪人格之進は娘を売って償うが、のち碁に夢中になった商人が失念したためとわかる。格之進は商人の代わりに碁盤を斬る)です。
なお「柳田格之進」は元々は講釈ネタですが、落語の演目にもなっています。
「義士伝」の中では、「銘々伝」にある「赤垣源蔵の徳利の別れ」と「外伝」の「赤穂浪士の脱落者の話」、「太閤記」では「長短槍試合」が好きでした。
私の「歴史好き」「歴史上の人物のエピソード好き」の性格は、この頃に育まれたのかも知れません。
2.大人気の若手講談師神田松之丞とは
さて、前置きが長くなりましたが、今人気の神田松之丞(現在、六代目神田伯山)とはどんな人物で、なぜそんなに人気が出ているのでしょうか?
彼は、1983年生まれの35歳です。メディアで紹介される時、「今最もチケットが取れない講談師」や「若き天才講談師」「講談界の風雲児」という枕詞が付き、「講談というジャンルを知らない人でも、一度ライブで松之丞の高座を聞けば、その魅力に取りつかれてしまう」と言われています。今年に入ってからは、客席に若者の姿も目立って来たそうです。
ということは、彼のライブを聞かないとその魅力はわからないということですね。
しかし、インタビュー記事などを見ると、若々しく颯爽としていて、「古臭い講談師」のイメージは全くありません。「講談師は絶滅危惧職」と言ったり、キャパ1,100席のよみうりホールで「芸歴11周年記念」という何とも中途半端な昼夜興行を打ったり、東京・渋谷の「シブゲキ!!」で五夜連続の「寛永宮本武蔵伝」完全読み通しをしたり、現在「二ツ目」ながら「二年後には真打にさせろ」と発言するなど、行動力があり発言がユニークでインパクト・迫力のある魅力的な人物のようですね。ただ者ではないような眼光の鋭さも印象的です。
私のイメージとしては、橋下徹さん(弁護士。元大阪府知事、元大阪市長)によく似たタイプだと思います。
彼が演芸の世界に目覚めたのは、高校生の時、ラジオで六代目三遊亭圓生(えんしょう)の「御神酒徳利(おみきどっくり)」を聞いた時だそうです。その後、浪人時代に聞いた七代目立川談志の「らくだ」が、その後の人生を方向づけたそうです。大学時代に、講談師の六代目神田伯龍の「村井長庵・雨夜の裏田圃(あまよのうらたんぼ)」を聞いた時、「江戸時代の空気感が伝わって来た瞬間」があったとのこと。
落語の世界では、自分が理想とする方法で演じている先人・名人がいるが、講談の世界はまだ知らない人が多い「宝の山」だと直感して、講談師の道に進んだそうです。
確かに、彼は他の講談師に比べると落語家的雰囲気がありますね。若い頃に落語を熱心に聞いた素地がそんな所にも現れているのかも知れません。
彼の祖父母の「ラブストーリー」を題材にした「新作講談」も手掛けているそうですよ。
いつか、機会があれば、彼の高座を聞いてみたいものです。もちろん「チケットが取れれば」の話ですが・・・