1.振り込め詐欺:「成りすまし詐欺(オレオレ詐欺)・還付金詐欺・融資保証金詐欺・架空請求詐欺」の総称
「オレオレ」と電話で言って息子を装い、会社の金の使い込みの弁償金や交通事故の示談金名目などで高齢者から多額の金を騙し取る「オレオレ詐欺」が問題になり始めてから、15年ほど経ちます。
2003年のNHKニュースでは、「高齢者を狙い、『おれおれ』『わたし、わたし』などと(息子や娘などの)縁者を装って、口座に送金させ、金銭を騙し取るという振り込め詐欺の被害が多発している。今年10月までに3,800件余り、被害額は22億6千万円に上る」と伝えています。
2004年11月までは、「オレオレ詐欺」と呼ばれていましたが、手口の多様化で、名称と実態が合わなくなったため、2004年12月からは、特殊詐欺のうちの四つの型(成りすまし詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺、架空請求詐欺)を総称して、「振り込め詐欺」に統一することに警察庁が決定したそうです。
2.複数の人間による組織的な劇場型犯罪
先日、テレビのニュースで「振り込め詐欺」の新しい手口として、「果物を送った」とまず電話を入れて、安心させ、その後「農園の人」役の人物から「果物を送るので住所を教えてほしい」と電話をかけさせ、しばらく経ってからまた電話して、今度は「本題」の金の無心の話を始める手口が、最近多発していると伝えていました。「農園の人から電話があったことで、すっかり信用してしまった」と被害者は語ったそうです。
一つの詐欺の「類型」を作って、それが成功したら、一気に多くの人間を使って同様の電話をかけさせているということでしょう。
「金銭授受の方法」も、「振込」だけでなく、宅配便や郵便で「私設私書箱へ送付させる」方法、「バイク便業者や代理人が被害者の自宅近くや指定場所で受け取る」方法など多様化しています。
犯人も最初は「一人の単独犯」だったものが、「二人以上の組織による犯罪」に変貌して来ています。「多額の現金がすぐ必要な理由」も「交通事故」「痴漢」「横領」「暴行・傷害事件」「借金返済」など沢山用意しており、「息子」役のほかに、「交通事故の相手」役「警察官」役「駅員」役「弁護士」役「悪徳金融業者」役など複数人が電話に出て脅す手口が増加しています。
電話をかける役の「かけ子」、現金やキャッシュカードを受け取る役の「受け子」、ATMで現金を引き出す役の「出し子」という役割分担もあります。まさに「劇場型(劇団型)犯罪」です。
初期には単独犯や数人での「荒っぽい犯行」であったものが、徐々に大掛かりな組織によってシステム化された犯行となり、対象者の名簿(カモリスト)が存在したり、組織内でマニュアルを作成して訓練を行っている事例もあるそうです。
つい最近の新聞では、中国を拠点にした「振り込め詐欺」グループが、架空名義の携帯電話で、中国から日本人の「かけ子(電話をかける役)」を使って、日本の高齢者に電話をかけ、「あなたの口座が振り込め詐欺に使用されている。暗証番号の変更が必要なので、現在の暗証番号を教えてほしい。口座変更の手続きが必要なので銀行協会の者がキャッシュカードを取りに行く」とか言葉巧みに言って、暗証番号を聞き出した上で、高齢者からキャッシュカードを日本人の「受け子」に受け取らせたり、日本人の「出し子」にATMで出金させていると報じています。騙し取った金は、「受け子・出し子」の報酬を差し引いて、「換金所」と呼ばれる在日中国人が中国のトップへ送金しているそうです。(取材源は、この犯罪組織の元グループ指示役の日本人)
日本の警察の捜査が、中国などの海外では難しく(逮捕権がない)、また日本と中国との間には「犯罪人引き渡し条約」が締結されていないという盲点を突いたものらしいです。
2017年の「特殊詐欺」の被害額は、約395億円にも上るそうです。
3.被害に遭わないための対策
(1)自分は大丈夫(騙されない)と過信しないこと
昨年だったと思いますが、私が自動車教習所主催の「交通安全教室」に参加した時、警察の「生活安全課」の担当者の方から、「振り込め詐欺などの特殊詐欺には絶対に遭わないという自信がある人ほど危ない」と言われました。
一見逆説的のようですが、「自分をあまり過信せず、いつも詐欺に遭わないか用心している方が安全だ」ということでしょう。
(2)正しい知識を持つこと
①役所からの還付金の連絡が電話で来ることはない、ATMで還付金は戻らない
②料金未払いの督促メールは100%振り込め詐欺(身に覚えがない限り)
③訴訟提起のメールや「民事訴訟管理センター」からのハガキも100%振り込め詐欺
(3)録音電話の活用
実際に録音電話を取り付けるのがベストの方法ですが、それがない場合は怪しいと思ったら「この電話は録音していますよ」と一発ハッタリをかますのも、相手をひるませる意味でよい方法です。
電話を受けた時点で「この通話は録音されています」という警告メッセージ」を流すサービスもあるそうです。これは、たとえばパナソニックのファックス「おたっくす KX-PD604シリーズ」とコードレス電話機「RU・RU・RU VE-GD24シリーズ」にある「迷惑防止機能」です。電話帳に登録していない相手からかかって来た場合のみメッセージを流す設定も可能で、メッセージが流れた通話は実際に録音されます。
4.私の個人的体験
私も先日、スマホに「この端末の利用者へ。当選おめでとうございます。〇〇万円当たりました。」というメールが入ってきました。言葉の使い方が少し変ですし、「応募」した覚えもないし、私の使っている携帯電話会社の名前も出てきませんので、「詐欺」だと思い、即削除しました。これと同じメールが、その後も何回か届きました。
もう一つ、パソコンを見ていると、突然「ポップアップ画面」が出てきて「Google」の表示とともに、「おめでとうございます。Googleをお使いのあなた。Googleギフトが当選しました」という画面が出ました。しかし、グーグルの「ロゴマーク」が本物と少し違っていますし、何の「応募」もしていないので、これも「詐欺」だと思い、即刻画面を閉じました。
この二つは、「還付金詐欺」に似た「当選金詐欺」とでも言うのでしょうか?多分、画面を順番に進んでいくと、「個人情報」が盗み取られる仕組みになっているのではないかと思います。
また、ある時は、スマホを見ていると突然画面が赤色になり、「ウィルスに感染している」旨の警告表示が出ました。これは大変と思い、午前10時早々にauショップに駆け込みました。ショップ店員によると、これも詐欺で、このような警告画面を表示して、「ウィルス除去ソフト(そもそもウィルスに感染していないので、効果があるのか不明)のサイト」に誘導するものだそうです。
パソコンでも、「Windowsセキュリティシステムが破損している」旨の警告表示が出たことがあります。この場合も、不用意にそこに表示された「修復ソフト」をダウンロードしないことです。これも上記のスマホの例と類似の詐欺サイトです。
最近、ますます「特殊詐欺」が色々な所で増えているようなので、 皆さんも、くれぐれもご用心下さい。怪しいと思ったら、慌てて指示された行動を起こす前に、必ずご家族や信頼できる専門家に相談してください。