皆さんは「チェアリング」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?まだあまりなじみがない言葉だと思います。
しかし、「新型コロナウイルス肺炎」騒動の結果、キャンプ用テントなどのアウトドア製品の売れ行きが好調なようで、「チェアリング」もじわじわと人気が出てきたようです。
そこで今回は、チェアリングについてご紹介したいと思います。
1.チェアリングとは
「チェアリング」とは、「仲間とアウトドア用の軽量化された椅子を持って、川辺や公園に出かけ、話し込んだり軽く一杯を楽しんだりすること」を表す造語です。
気軽なアウトドアのアクティビティーとして、今注目を集めています。
このチェアリングは、2016年にフードライターのパリッコさんとスズキナオさんのユニット「酒の穴」が提唱した比較的新しいアクティビティーですが、既に「JCA」(日本チェアリング協会)という愛好家団体も出来ているそうです。
わざわざ椅子を持ち歩かなくても、公園のベンチとか河原の土手に座ってもよさそうなものですが、お二人によれば、「自らが選んだ場所、空間を椅子によって切り取り、ひとときパーソナルスペースにする喜びがある」のだそうです。
なお、「JCA」という略称の団体は、「日本サイクリング協会」「日本協同組合連携機構」「日本消費者協会」「日本クレジット協会」「日本チェス協会」などたくさんありますのでお間違いのないように・・・
(提唱者のパリッコさんとスズキナオさん)
2.チェアリングの定義とルール
(1)1人1脚、折り畳み椅子を持参
(2)装備が多すぎるとキャンプ/アウトドアに近付いてしまうので、なるべく手軽に
(3)酒やつまみも現地調達が望ましい
(4)モラルやマナーはきちんと守る
3.チェアリングの魅力
私は生来スポーツは苦手な方ですが、家の中に閉じこもっているよりも屋外に出る方が好きでした。
ですから、正岡子規の「病床六尺」のように、床に伏せって咳や痰に苦しみながら、同じ庭を眺め続ける苦痛には到底耐えられません。
スポーツジムでバイクにまたがって汗を流している人を見ると、よく飽きないものだと変に感心します。私なら、ママチャリでゆっくりしたサイクリングでもいいから、戸外で移り変わる景色を楽しみながら走る方を選びます。
私が子供の頃は、家にベンガラ色の縁台(我が家では「床几(しょうぎ)」と呼んでいました)がありました。数人が腰掛けられるので、中庭に持ち出して家族で夕涼みをしたり、花火を楽しんだりしたものです。
また一人掛けの「籐椅子」もあり、これは私一人が庭に持ち出して座り、夜空の星を眺めたり、虫の声に耳を澄ませたりしたものです。こんな風に「ぼんやりする時間」を持つことはとても大切だったように思います。
テレビで「小さな村の物語イタリア」や「世界街歩き」などを見ていると、ヨーロッパの人々は、特別のお金持ちでなくても、お洒落であくせくせず、優雅にのんびり暮らしているように見えます。
このような「心のゆとり」を取り戻すためにも、チェアリングでぼんやりする時間を持つのも魅力的だと私は思います。拡大解釈になるかもしれませんが、別に一人でチェアリングしても問題ないと思います。
もともとの提唱者は「どこでも酒場にしてしまえるんじゃないか?」という発想だったそうですが、「Hanako」2018年6月14日号で「アウトドア用の椅子を持ち歩いて、お気に入りの場所でくつろぐベンチいらずの『チェアリング』という新カルチャー」と紹介されていることから、今では座りながら何をするかは自由とされているようです。
私も、チェアリングを厳格に定義通りやることを勧めるよりは、広く緩やかに解釈してよいとする方が、多くの人に受け入れられると思います。私はどちらかと言えば「戸外でぼんやりとホッと一息つく時間を持つ、心のゆとりを持つ習慣を付ける」ことが、今の日本人には必要な気がします。
私が若いサラリーマンの頃、同僚の一人が仕事のストレスからノイローゼ気味になった時、上司が、「仕事のことは忘れて、河原の土手にでも寝転んで一日中雲でも眺めていれば治るよ」とアドバイスしていましたが、今思うと上に述べたようなことの「処方箋」だったのかもしれません。
「建物探訪」や「住人十色」などいろいろなお家を紹介する番組で、屋上で椅子に座って夜景を楽しみながらビールを飲むというシーンがよくありましたが、これなども典型的な「チェアリング」と言えるでしょう。