「サザエさん」と言えば世代を超えて愛され続けて来たアニメで、昭和・平成・令和を通じて変わらぬ人気を誇っています。
私にとっては、子供の頃我が家で購読していた朝日新聞の朝刊の「四コマの連載漫画」の印象が強いのですが、若い世代は毎週日曜日午後6時30分から「東芝」一社提供(現在は複数のスポンサー)のテレビアニメ「サザエさん」を思い浮かべる人が多いでしょう。
原作者の死後の今も、アニメとして生き続けている「サザエさん」はとてもすごい作品です。
今回はこんな「サザエさん」にまつわる面白い話をご紹介したいと思います。
1.「サザエさん」とは
(1)原作者
原作者は、日本初の女性プロ漫画家の長谷川町子(1920年~1992年)です。ほかにも「いじわるばあさん」「エプロンおばさん」などの作品があります。「いじわるばあさん」は、放送作家で参議院議員や東京都知事も務めた青島幸男(1932年~2006年)が演じたテレビドラマでも有名ですね。
(2)愛される「サザエさん」のキャラクター
サザエさんの魅力の一つは、サザエさんをはじめとする登場人物の「愛すべきキャラクター」「憎めないキャラクター」です。
「サザエさん」の性格は、社交的(おしゃべり好き)、おっちょこちょい、そそっかしい、お世辞に弱い、老人に優しい、お人好し、短気、家族思い、思い込みが激しく単純、先入観にとらわれて勘違いしやすい、お茶目、野次馬根性が強いなどです。
この主人公を取り巻く「脇役」の登場人物の性格も面白いのです。
サザエさんの夫の「マスオさん」の性格は、生真面目で不器用、心配性、気が弱い、優しい、誠実、優柔不断、婿養子なので舅・姑に遠慮して気を使う、お人好し、頼まれるとイヤと言えないなどです。
サザエさんの父の「磯野波平」の性格は、昭和の頑固親父、かなり短気、お茶目なところもある、プライドが高い、怒ってもすぐに忘れる、小心者、妻のフネには頭が上がらない、子供や孫には甘い、家族思いなどです。
「タラちゃん」は、サザエさんとマスオさんの長男(3歳)でおとなしく物分かりの良い「いい子」ですが、私などはその可愛い声にいつも癒されます。
サザエさんの弟の「カツオ」(小学校5年生)は、勉強はあまり得意ではなさそうですが、頭の回転が早く口が達者なお調子者です。野球や外での遊びが大好きで、イタズラ好きでもあります。
サザエさんの母の「磯野フネ」は、割烹着のよく似あうやさしいお母さんです。家族のことをいつも温かく見守っていて、みんなから一目置かれる存在です。
(3)「サザエさん」の人気の理由
①古き良き昭和時代のほのぼのとした家族の風景
団塊世代の私にとっては懐かしい、つつましくも理想的な温かい家庭生活、良識や節度のある社会生活がそこにはあります。平凡な中に今の日本人が忘れかけている生活が描かれていることが郷愁を誘うのではないかと思います。
「ご近所付き合い」「親子の会話」「友達との外での遊び」「帰りを待つ優しいお母さん」「お父さんの威厳・存在感」「家族揃っての食事」「一家団欒」・・・
若い世代にとっては、現代の生活との違いに驚きながらも、そのような温かい幸せな家族の生活に憧れる面もあるのではないでしょうか?
②登場人物の「愛すべきキャラクター」「憎めないキャラクター」
サザエさんをはじめ、上に述べたような魅力的な脇役の登場人物がたくさんいるからです。
③年配の声優が多く、落ち着いたセリフ回しで和む
やはり年配の声優(と言っても、放送開始当時はもう少し若かったですが)の落ち着いたぬくもりのある声は、私のように70歳を超えた人間には特に心地よく、安心して聞いていられるのです。
森繁久彌と加藤道子の二人だけが出演したNHKラジオドラマ「日曜名作座」を思い出すのは私だけでしょうか?ちなみに「日曜名作座」とは、二人が声色を変えて登場人物を演じ分けるユニークなラジオドラマで、1957年から2008年まで51年間にわたって放送されました。
(4)「サザエさん」の声優
「サザエさん」の声優には高齢の人が多いのが特徴です。
「サザエさん」の声の加藤みどりさんは1939年生まれです。1969年の放送開始以来、「サザエさん」の声を担当しています。「大改造!!劇的ビフォーアフター」のナレーションを今も担当しているので、なじみ深い声優さんです。
「タラちゃん」の声の貴家堂子(さすがたかこ)さんは1941年生まれの78歳です。78歳のおばあちゃんがあんな可愛い声を出していたとは驚きですね。彼女は加藤みどりさんと同様1969年の放送開始以来、「タラちゃん」の声を担当しています。2019年には、「最も長くテレビアニメシリーズにおいて同じ役を演じ続ける声優」として、加藤みどりさんとともに「ギネス世界記録」に認定されています。
「マスオさん」の声を2019年まで40年間も務めた増岡弘さんは1936年生まれですが、2020年3月に83歳で亡くなりました。
「磯野フネ」の声を2015年まで46年間も務めた麻生美代子さんは1926年生まれですが、2018年8月に92歳で亡くなりました。「和風総本家」のほっこりしたナレーションでもおなじみでした。柴犬の「豆助」に呼びかける時の彼女の優しい声が今も耳に残っています。
「カツオ」の声を1998年まで28年間も務めた高橋和枝さんは1929年生まれですが、1999年3月に70歳で亡くなりました。
「磯野波平」の声を2014年まで44年間も務めた永井一郎さんは1931年生まれですが、2014年1月に82歳で亡くなりました。
「ワカメ」の声を2005年まで29年間も務めた野村道子さんは1938年生まれです。彼女は「ドラえもん」の「しずかちゃん」の声も担当していました。
(5)原作者の死後も「サザエさん」が作り続けられる理由
現在放送されているテレビアニメの「原案」「脚本」は、当然ながら原作者ではなくアニメーションスタッフが作っています。
ただ、サザエさんは登場人物のキャラクターが上に述べたように比較的明確(一部、キャラクターの性格が原作と異なってきている部分もありますが)なため、原作者でなくても新しい時代の流行なども取り入れながら、ずっとサザエさんを作り続けられるわけです。
これは、藤子・F・不二雄(1933年~1996年)原作の「ドラえもん」とよく似ていますね。
2.「サザエさん症候群」
「サザエさん症候群」とは、日曜日の夕方から深夜、「翌日(月曜日)からまた通学や仕事をしなければならない」という現実に直面して憂鬱になり、体調不良や倦怠感を訴える症状」のことです。いわゆる「ブルーマンデー(Blue Monday)症候群」の俗称です。「憂鬱な月曜日」ということで、これは多かれ少なかれ誰しも経験することでしょう。
私の高校時代の友人がある時、「僕は土曜日が一番楽しい。でも日曜日はとても憂鬱になる」と話していましたが、彼も「サザエさん症候群」だったのかもしれませんね。
3.「東京サザエさん学会」
ロンドンに「シャーロック・ホームズ」のファン(シャーロキアン)たちが集まってホームズを研究する団体「シャーロック・ホームズ協会」があるように、「サザエさん」についても「東京サザエさん学会」という研究団体があります。「磯野家の謎」などの本も出版しています。
なお、「サザエさん」のファンは「イソニアン」と呼ぶそうです。
4.磯野家の家系図
いくつもの「磯野家の家系図」が作られています。磯野家のことをまだ詳しくご存知のない方は、ぜひ参考にしてください。
蛇足ながら、「タラちゃん」(タラオ)と「イクラちゃん」との親戚関係は「はとこ」と呼びます。