最近「日本の一人親世帯の貧困率が先進国の中では高い方だ」「日本の子供の貧困率が年々高くなっている」という話をよく聞くようになりました。これはどういうことでしょうか?またなぜでしょうか?
「貧困問題は発展途上国だけの問題」と思っている方も多いと思いますので、今回は「日本の貧困問題」についてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.「貧困」と「貧困率」とは
貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があり、日本で問題視されている貧困は「相対的貧困」です。
「絶対的貧困」とは、「生活や生命を維持することが難しいほどの貧困状態」のことで、「相対的貧困」とは、「その国の生活水準や文化水準を下回る状態に陥っている貧困状態」のことです。
それぞれの比率が「絶対的貧困率」「相対的貧困率」です。
2.日本の「相対的貧困率」
(1)日本の「相対的貧困率」の推移
かつて日本は「一億総中流」とも言われるほど、貧富の差が少なくなっていたと思いますが、最近は貧富の格差が増えて、相対的貧困率が高まっているようです。
1985年から2012年にかけて相対的貧困率は緩やかに上昇しています。
「子供の貧困率」が高いのは、非正規雇用で給与や待遇面で不利益を受けワーキングプアに陥りやすい「一人親世帯」の貧困率が高いのが大きな要因です。
(2)先進国における順位
2019年にOECDが発表した世界の相対的貧困率比較では、日本は世界でワースト11位の15.7%(約2000万人)となっています。先進国の中では中国・アメリカに次いで3番目となっており、先進国の中でも相対的貧困率が高いと言えます。
また「一人親世帯の相対的貧困率」は、冒頭の画像の通り、2015年で50.8%となっており、OECD加盟の先進国の中でワースト1となっています。
日本では、一人親世帯の半数が「相対的貧困」状態となっているということです。
(3)日本の相対的貧困率が高い原因
原因として一般に指摘されているのは、「65歳以上の年金暮らしの世帯が増えたこと」です。
しかし私は次のようなことも原因ではないかと思います。
①企業が人件費削減のために「正社員」を減らし、「非正規社員」の比率が高まったこと
これは小泉元首相と竹中平蔵氏による「構造改革・規制緩和」の影響も大きいと思います。
②企業が「低価格競争」に走り過ぎて、利益の「労働分配率が低すぎる」こと
③企業が「低品質で安価の中国や東南アジア製の商品や部品」に依存しすぎていること
新型コロナウイルス肺炎の発生で、この「中国偏重のサプライチェーン」の問題点が表面化しました。
④日銀の長期に及ぶ「マイナス金利政策」で、預貯金の金利がほとんどゼロになっていること
3.日本政府は汚職など弊害の多い「発展途上国支援」より国内の貧困問題解決に注力すべき
貧困家庭の子供たちへは、「こども食堂」「放課後教室などの教育支援」「児童扶養手当や医療費無料化などの保護者への経済的支援」の動きもあります。
しかし政府・日銀は、日本の貧困問題をもっと深刻に受け止め、「発展途上国への支援の見直し」や、「マイナス金利政策の見直し」のほか、構造的・根本的原因となっている上記の問題点についての「民間企業への働きかけ」を強めるべきだと思います。