私は現役サラリーマンの頃、豊中市での仕事が終わった後、「大阪大学総合学術博物館」に立ち寄りました。平日の午後だったため、来館者はほとんどおらず、ゆっくり見て回ることができました。日本人初のノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士関係の資料、緒方洪庵の史料や、キャンパスの所在地である待兼山(まちかねやま)から出土した「マチカネワニ」の化石標本や、昆虫などの資料もあり、興味深く閲覧しました。しかも「無料」で開放されていて感激しました。
そこで今回は全国の大学の博物館や資料館についてご紹介したいと思います。一度お近くの大学の博物館を訪ねてみられてはいかがでしょうか?
1.日本全国の大学博物館
(1)東京大学総合研究博物館
「本郷本館」は耐震改修工事のため、2019年8月10日から長期休館となっています。再開館は2020年度の予定です。「小石川分館」は開館しています。
東京大学の設立以来収集されてきた地学系・生物系・文化史系の各分野の学術標本・資料を保管し、分類・整理して教育・研究活動に役立てています。
(2)京都大学総合博物館
自然史・文化史・技術史の展示物があり、国宝や重要文化財も含まれています。展示スペースは自然史展示室が最も広く、標本作製などの体験学習もできます。
(3)大阪大学総合学術博物館
先史時代の出土品から最近の先端研究の機器や標本など、様々な学術資料を展示しています。1964年にキャンパス付近の地層から発見された「マチカネワニ」の化石の標本も展示されています。これは約45万年前の新生代更新世にこの付近に生息していたワニです。
(4)名古屋大学博物館
名古屋大学にゆかりのあるノーベル賞受賞者の野依良治博士、小林誠博士、益川敏英博士、下村脩博士、赤﨑勇博士、天野浩博士の業績を紹介する展示があります。
(5)九州大学総合研究博物館
自然史・文化史・技術史の展示物があります。特に昆虫については、400万点を超える膨大な昆虫コレクションがあります。
(6)東北大学総合学術博物館
標本、考古学、歴史資料、地図、発明品など総数約242万点にのぼる学術資料が保管されています。
なお、「東北大学附属図書館」には、夏目漱石の旧蔵書などを保管する「漱石文庫」があります。これは漱石の弟子で「三四郎」のモデルとしても知られる小宮豊隆(東北大学教授も歴任)が、漱石の旧蔵書のほとんど(洋書1650冊、和漢書1200冊)をはじめ、日記・ノート・試験問題・原稿などの自筆資料等を収集したものです。
(7)北海道大学総合博物館
約300万点の貴重な学術標本を収蔵しています。
(8)北里研究所北里柴三郎記念室(北里大学)
新千円札の肖像に選ばれた北里柴三郎に関する史料が揃っています。
(9)津田梅子資料室(津田塾大学)
新五千円札の肖像に選ばれた津田梅子に関する史料が揃っています。
(10)新渡戸記念室(東京女子大学)
現在の樋口一葉の前に五千円札の肖像になった新渡戸稲造に関する史料が揃っています。
2.大学博物館の収蔵品の「Web上での公開」拡大
上に紹介した以外にも、全国の多くの大学には規模の大小はあっても博物館や資料館があります。
ただ、地理的・時間的制約もあり、興味はあってもなかなか現地に行くことが難しい場合が多いと思います。
現代は「インターネットの時代」です。自宅に居ながらにして、世界各地の政治・経済情勢や、自然・文化・科学技術・歴史などあらゆる情報が検索・閲覧できると言っても過言ではありません。
そこで、全国の大学博物館におかれましては、広く一般国民がパソコンやスマホでも大学博物館の収蔵品を閲覧したり体感したりできるように、「Web上での公開」の拡大や「VR動画での公開」の検討をぜひ推進してほしいと思います。
インターネット上の「アーカイブ」として、日本人の文化的教養の向上や、青少年の自然史・文化史・科学技術史に対する興味喚起に役立てられるのではないかと思います。