小学校で「交番」や「工場」「発電所」「桑畑」などの「地図記号」を習いましたね。しかし正確に覚えている人は少ないのではないかと思います。確かにすぐわかるものもありますが、その施設を連想しにくい記号も多くて、覚えにくいですからね。
ところでこの「地図記号」には、現在は使われなくなったものや、最近新しくできたものもあるのをご存知でしょうか?
そこで今回は「地図記号」にまつわる面白い話をご紹介したいと思います。
1.地図記号とは
「地図記号」とは、「地図において、地形・道路・施設・土地の状況などを表すための記号」です。
狭義では、冒頭に掲げた画像のような「シンボルマーク」だけを指しますが、広義では、「等高線」や「行政界を示す境界線」なども含みます。
日本では現在、「国土地理院」が「地図記号」を定めています。
2.現在は使われなくなった地図記号
「地図記号」は各時代の世相を映す鏡でもあります。時代の変化で施設が使われなくなったり、ほとんどなくなれば、その記号も地図上からひっそりと姿を消します。
「古戦場」「牧場」「塩田」「電報・電話局」などはその例です。「工場」「桑畑」「採石地」も使われなくなりました。
「銀行」の地図記号が使われなくなった理由は、銀行の統廃合で銀行名が変わったり、支店が廃止になったりすることに加え、スマホで位置を確認できることや、スマホで決済や振込ができるため地図を頼りに銀行に行く人が減ったためだと思います。
「都道府県庁」の地図記号が使われなくなった理由は、私の推測ですが、この記号を見ただけでは意味がわからないし、かえって紛らわしいからではないかと思います。
3.最近新しくできた地図記号
「なくなる物があれば生まれる物がある」のが世の常です。
(1)自然災害伝承碑
令和元年に生まれた「自然災害伝承碑」は、「過去に起きた津波、洪水、火山災害、土砂災害等の自然災害の情報を伝える石碑やモニュメント」を表します。
地図記号は、「従来の『記念碑』の記号に碑文を表す縦線を加えた形」となっています。
東日本大震災や土砂災害など最近の相次ぐ大規模自然災害を踏まえた地図記号です。
(2)老人ホーム
平成18年に生まれた「老人ホーム」は、急激な高齢化の進展で増え続ける老人ホーム(養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム)に対応した地図記号です。
(3)風車
同じく平成18年に生まれた「風車」は、言うまでもなくドン・キホーテの物語に出て来るような古典的な風車ではなく、「風力発電用の風車」です。
「自然エネルギー(再生可能エネルギー)発電」の流れに乗って、風力発電用の風車が増加してきたことに対応した地図記号です。
(4)博物館
平成14年に生まれた「博物館」は、「博物館法という法律に基づく博物館・美術館、およびそれと同じような施設で一般に公開しているもの」を表します。
今までなかったのが不思議な気もしますが、最近博物館に類似のいろいろな施設が増えてきたためでしょうか?
なお、水族館・動物園・植物園は、名称を表示するだけで地図記号はありません。
地図記号は、「博物館や美術館などの建物のイメージ」を表しています。
(5)図書館
同じく平成14年に生まれた「図書館」は、「公立の図書館」を表します。これも今までなかったのが不思議な気もしますが、最近市町村で公立図書館を整備するところが増えてきたからでしょうか?
(6)電子基準点
平成9年に生まれた「電子基準点」は、「GNSS(人工衛星)の電波を受けて正確な測量を行うために、国土地理院が作った基準点の場所」を表します。
「電子基準点」は全国に約1,300点あります。GPSを利用して位置を正確に連続して測定するための基準点で、データは測量の基準や地殻変動の観測などに用いられます。
「電子基準点」の記号は、「三角点」と「電波塔」の記号を合わせたものです。
4.外国人向け地図記号作成の取り組み
「国土地理院」が定めた現在の日本の「地図記号」の中には、我々日本人でもそれが何を指しているのかわからないものが少なくありません。小学校の時によく勉強しておかなかった自分が悪いのかもしれませんが・・・
そこで、万国共通のマークである「ピクトグラム」と同じ発想で、国土地理院では「外国人向け地図記号」作成の取り組みを始めています。
なお、上の画像の中の「観光案内所」の「クェスチョンマーク(?)」は、外国人にはそれこそ「これは何?意味がわからない」と不評だったため、諸外国と同様の「インフォメーションマーク」が多くなってきました。
コロナが終息すれば、また外国人観光客の増加が予想されますので、このような取り組みは今後もぜひ続けてほしいものです。
5.郵便局の記号「〒」の由来
上の「外国人向け地図記号作成の取り組み」でもご紹介した郵便局の記号「〒」ですが、これは日本独自の記号です。
この記号の由来は、1887年(明治20年)にさかのぼります。当時の逓信省(後の郵政省、現在の総務省)がアルファベットの頭文字「T」をとって、逓信省の記章としました。
しかし、「T」というマークは外国では「郵便料金の不足を表す記号」だったため、「T」を「〒」に変更しました。
ちなみに「〒」は「テイシンショウ」の「テ」を図案化したものです。