最近、「HR」とか「HRテック」という言葉をよく聞くようになりました。今回はこれについて紹介したいと思います。
1.HRテックとは
「HRテック」とは、「テクノロジーの活用によって、人材育成や採用活動、人事評価などの人事領域の業務の改善を行うソリューション(解決策)群のこと」です。
これは「HR(人事・人材)」(Human Resources)と「テクノロジー(技術)」(Technology)を組み合わせた造語です。
ここでいう「テクノロジー」とは、「クラウド」や「人工知能(AI)」「ビッグデータ解析」などです。
2.HRテックで何がどう変わるのか
データ(事実)に基づいた客観的な基準をもとに、PDCAサイクル(品質管理手法としての「計画(p)」「実行(D)」「評価(C)」「改善(A)」のサイクルのこと)を回し、組織としての判断精度を向上させ、経験と勘だけに頼らない意思決定を目指すものとされています。
(1)採用ツール・採用管理システム
複雑化する採用プロセスの一元管理を目指すものです。「採用」は「人材を採る」から「人材を生かす」へ認識を転換することが求められています。
(2)人事・配置、育成・定着(エンゲージメントやモチベーション向上)
データの可視化と最適な人員配置を目指すものです。
(3)労務・給与管理クラウド
労務・給与管理の自動化や省力化を目指すものです。
従来は「採用」「人事評価」「優秀な人材か否かの判定」などが、人事部などによって秘密裡に行われていました。ただこのHRテックの導入で客観的データに基づき可視化されると言っても、果たして公正な評価が担保されるのか、疑問が残ると私は思います。
3.HRテック導入加速の背景
日本はかつては「終身雇用制」が定着しており、「雇用の流動性」が低かったため、HRテックへの関心はあまり高くありませんでした。
しかし今や、豊田章男トヨタ自動車社長ですら「終身雇用は難しい」と発言する時代ですし、「新入社員の3割は3年後に退職(転職)する」と言われる世の中になりましたので、HRテック導入機運が高まって来たわけです。
4.あるべき人事の姿
HRテックを導入する企業は今後増加が予想されますが、私は人事のあるべき姿は、「1on1」のように、上司と部下との「信頼関係」を前提にして、上司は部下に改善すべき点を指摘してその改善状況。・成長を確認するとともに、部下からの要望事項も聞き入れ、組織全体を活性化させ業績向上を図るというのが理想だと思います。
お互いの信頼関係のないまま、非情な早期退職勧奨やリストラを行うのは、企業として最も避けなければならないことだと思います。
せっかく私情を排除した先進的なHRテックを導入するのであれば、そういう点にも配慮して労使関係の改善を図るべきだと思います。「仏作って魂入れず」にならないようにしてほしいものです。