サンドリヨン(シンデレラ)にまつわる面白い話。グリム版は残酷で怖い内容!

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シンデレラ

2019年8月に女子プロゴルファーの渋野日向子選手が「全英女子オープンゴルフ」に優勝した時、海外メディアから「スマイルシンデレラ」(You are Smile Cinderella.)というニックネームが付けられました。

1.サンドリヨン(シンデララ)とは

フランスの詩人シャルル・ペローの「童話集」(1697年)に収められた童話Cendrillonの女主人公の名前がサンドリヨン(サンドリオン)です。英語表記ではシンデレラ(Cinderella)となります。「灰かぶりのエラ」(*)という意味です。

継母にいじめられていた娘が妖精の手を借りて舞踏会に出て王子に見初(みそ)められ、後に残したガラスの靴が手掛かりとなって王子と再会し、結婚して幸福をつかむという「シンデレラストーリー」です。

(*)「灰かぶりのエラ」の由来

美しい娘シンデレラの本名は「Ella(エラ)」です。エラは父親が亡くなった後は、継母からすべての家事を押し付けられるようになり、屋根裏部屋へと追いやられます。

そして、暖炉の掃除をしている時に身体中が灰まみれになってしまったため、意地悪な継母から「cinders(灰)」と「Ella(エラ)」を合わせて「Cinderella(灰にまみれたエラ)」というあだ名をつけられたのです。シンデレラは決して「キラキラネーム」ではなかったのです。

サンドリヨン(シンデレラ)の物語は、東洋に起源を持ち、全世界で500もの変形物語があります。日本の「鉢かづき」もその一つです。

西洋ではシャルル・ペローによる「サンドリヨン」と、グリム兄弟による「灰かぶり姫」が有名ですが、彼ら以前に、17世紀のイタリアのジャンバティスタ・バジーレによる「灰かぶり猫(Cenerentola)」という類似の物語があります。

2.ジャンバティスタ・バジーレによる「灰かぶり猫」

バジーレ

ジャンバティスタ・バジーレ(1575年?~1632年)は、イタリアの詩人・軍人で、説話集「ペンタメローネ(五日物語)」の作者として知られています。

「シンデレラ」に当たる主人公の名前は「ゼゾッラ」です。

「物語の中の物語。即ち幼い者達のための楽しみの場」と名付けられたこの説話集は、彼の死後の1634年に、ボッカチオの「デカメロン(十日物語)」に倣って、「ペンタメローネ(五日物語)」と改称されて刊行されました。

「ペンタメローネ」はヨーロッパにおける童話集の先駆けとなりました。

3.シャルル・ペローによる「サンドリヨン」

シャルル・ペロー

シャルル・ペロー(1628年~1703年)は、フランスの詩人・童話作家で、「ペロー童話集」の作者として有名です。中でも「サンドリヨン」がよく知られています。

原題は、「サンドリヨン、または小さなガラスの靴」です。ガラスの靴を履かせ、カボチャの馬車に乗せるというモチーフを付け加えたのはペローです。

彼はパリのブルジョワ階級の家庭に生まれ、1651年にオルレアン大学の法学の学位を取得し弁護士となりましたが、二度弁護しただけでその職に再び戻ることはなかったそうです。

1671年にはアカデミー・フランセーズ会員に選ばれています。

ルイ14世の財務大臣であったコルベールに認められ、ルイ14世に仕えました。

4.グリム兄弟による「灰かぶり姫」

グリム兄弟

グリム兄弟は、19世紀にドイツで活躍した言語学者・文献学者・民話収集家・文学者の兄弟です。兄がヤーコプ・グリム(1785年~1863年)で、弟がヴィルヘルム・グリム(1786年~1859年)です。

グリム童話は、ペローの影響を強く受けていると言われますが、「シンデレラ」に関しては、ペローの物語よりも原話に近い(残酷な内容)と言われています。

ペローの物語との主な違いとしては次のようなものがあります。

(1)魔法使いが登場しない(カボチャの馬車も登場せず、代わりに白鳩が主人公を助ける)

(2)美しいドレスと靴を持ってくるのは、母親の墓のそばに生えたハシバミの木に来る白い小鳥

(3)ガラスの靴ではなく、1晩目は銀、2晩目は金の靴である

(4)シンデレラが靴を階段に残したのは偶然脱げたのではなく、王子があらかじめピッチ(樹脂)を塗っておいたため靴が絡め取られたから

(5)王子が靴を手掛かりにシンデレラを捜す際、連れ子の姉たちは靴に合わせるためにナイフで足(長女は爪先、次女は踵)を切り落とす。しかしストッキングに血が滲んで見抜かれる

(6)物語の終わり、シンデレラの結婚式で姉二人はへつらって両脇に座るが、シンデレラの両肩に止まった白鳩に両目ともくり貫かれ失明する

(7)シンデレラの結婚式の日、姉たちは足を切り落とされて松葉杖の生活になり、主人(継母)は首を吊って自殺してしまう。シンデレラは彼女たちが今までの報いを受けた事に満足し、うれしさに満面の笑みを浮かべた(「世にも恐ろしいグリム童話」より)

上のような事実を知ると、シンデレラの「黒歴史」「裏の顔」を見たように感じる方も多いかもしれませんが、昔の原形の説話・民話は概して残酷なものが多いものです。

それを現代の日本の童話ではカットしてしまっています。これは子供たちに厳しい現実から目を背けさせているのではないかと私は感じます。

以前「トロッコ問題」という思考実験をある教師が小中学生に考えさせたところ、批判が集中しました。吉本興業の芸人小藪千豊を起用した厚生労働省の「人生会議」ポスターが非難を浴びたことも記憶に新しいところです。

このような最近の日本の社会風潮はどこかおかしいと私は思っています。

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