前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。
ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。
私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。
そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。
そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。
なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。
「秋」は旧暦7月~9月にあたり、「初秋」(立秋・処暑)、「仲秋」(白露・秋分)、「晩秋」(寒露・霜降)に分かれます。
今回は「晩秋」(寒露・霜降)の季語と俳句をご紹介します。
・寒露(かんろ):新暦10月8日頃です。「九月節」 秋が深まり野草に冷たい露が結びます。
・霜降(そうこう):新暦10月23日頃です。「九月中」 霜が降りる頃です。
7.植物
(1)あ行
・会津身知らず(あいずみしらず):会津を代表する柿の品種。「身不知柿」(または「味不知柿」)(みしらずがき)とも言う。枝が折れそうなほどに大粒の身をつける(身のほど知らずな)ことや、これほどの味の柿は知らないと言わしめるほどに美味しいことから名づけられたといわれている。
・青松笠(あおまつかさ):晩秋に新しくできた青い松の実(松毬)のこと
・赤柿(あかがき):柿の品種の一つ
・赤茯苓(あかぶくりょう):赤松に生える茯苓のこと
・秋茱萸(あきぐみ):グミ科の植物で、山野に自生する落葉低木。秋、小粒の果実が赤く熟し甘くなる
・秋咲きサフラン(あきざきさふらん):秋に花の咲くサフランのこと
・朝顔の実(あさがおのみ):一日花の朝顔は、花を終えるとすぐに青々とした実を結ぶ。秋も深くなり蔓が枯れてくるにしたがって、実は茶褐色に熟し、薄い皮に包まれた黒又はこげ茶色の種を実らせる。この種は、翌年、 朝顔を咲かせるために採取するほか、生薬にも利用する
槿(あさがほ)の 実をとる人の ゆふべかな(椎本才麿)
・麻の葉かえで(あさのはかえで):ムクロジ科の落葉高木。関東以西の深山に生える。葉は五つに裂けていて麻の葉に似る。雌雄異株。春に淡黄色の小花が総状につく。実には2枚の翼片がある
・蘆の穂(あしのほ):晩秋、蘆の花穂が熟して、白色の絮を吹き、風に吹かれて飛び散るもの
・蘆の穂絮(あしのほわた):熟した蘆の花穂には長い白綿毛が生えており、風をとらえて遠くまで飛んでゆく
高水や 蘆の白穂に 雲おこる(加舎白雄)
蘆の穂に 家の灯つづる 野末かな(富田木歩)
・厚岸草(あつけしそう/あっけしそう):北海道の厚岸で発見されその名がある。アカザ科の一年草で、高さは10~30cmほど。円柱形で多くの節があり、そこから枝が対生する。北海道、東北、四国の沿岸部で見られる、塩生植物。花期は8月から10月で微小。茎は直立しはじめは濃い緑色だが、秋になると赤く色づく
・油桐の実(あぶらぎりのみ):油桐はトウダイグサ科アブラギリ属の落葉高木。暖地に植えられ、高さは15mにもなる。5月から6月にかけて五弁の白い花を咲かせ、秋に2cmほどの扁球形の実をつける。種からは 油が採れる
・甘柿(あまがき):渋みがほとんどなく,そのまま食べられる甘い柿。御所柿・富有柿・次郎柿など
・甘干(あまぼし):色づきはじめた渋柿の皮をむき、串に刺したり吊るしたりして乾燥させ渋をぬき甘くしたもの。干された柿は水分が抜け実がしまり、やがて表面に白い粉を吹き始め、中は飴色に仕上がる。干柿は古くから甘味の代表で、重宝されてきた
釣柿や 障子にくるふ 夕日影(内藤丈草)
甘干へ 東山から 雀蜂(飴山實)
・あららぎの実(あららぎのみ):一位の実の別称。晩秋になると赤く透きとおるように熟し、甘くなる。「あららぎ」は、正岡子規門下の伊藤左千夫・斎藤茂吉らが興した短歌の「アララギ派」の名前の由来となった木
・あんらん樹(あんらんじゅ):カリンの別称。主に実を指し、季語としては秋
・飯桐の実(いいぎりのみ):飯桐はイイギリ科イイギリ属の落葉高木。高さは20mにもなり、各地の山地に自生する。4月から5月にかけて、枝先に緑黄色の萼片をつけ、晩秋に赤い実を葡萄状にみのらせる。その大きな葉でおにぎりを包んだことからこの名がついた
・イェローデリシァス:北アメリカ原産の林檎の品種の一つ。果実は大きく、甘味が強く、果肉はやや柔らかい
・毬栗(いがぐり):いがに包まれているままの栗
毬栗の 蓑 (みの) にとどまる 嵐かな(加舎白雄)
・蚊母樹の実(いすのきのみ):蚊母樹はマンサク科の常緑高木。実は晩秋に実り、巣くっている虫がでてしまうと空洞ができており、口をあてて吹くとよく鳴る
・板屋かえで(いたやかえで):ムクロジ科の落葉高木。山地に自生。葉は手のひら状に浅く切れ込み、秋に黄葉する。花は淡黄色。実には翼が二つある。ときわかえで。つたもみじ
・一位の実(いちいのみ):イチイ科の木に生る果実。9月頃に赤く熟す。食べると甘いが、種子に毒がある。木は庭木や生垣にも用いられる。正一位、従一位などの高官が儀式のときに持つ笏の素材にこの木が使われたことから「一位」と名付けられた。鉛筆の材として日本産中最良で、その他建築、器具、彫刻に利用される
・無花果(いちじく):全国各地で栽培されるクワ科の落葉小高木。花を付けずに実がなるように見え、無花果の字が当てられているが、実際には春から夏に花嚢の中に無数の白い花が咲き、それが秋に熟れて暗紫色の実となる
無花果に 塀の外なる 大水車(原石鼎)
無花果食ふ 月に供へし ものの中(石田波郷)
八雲たつ 出雲無花果 作るかな(長谷川櫂)
・銀杏散る(いちょうちる):黄色く色づいた銀杏が落葉すること。みるみる散ってゆく様は壮観であり、地面は黄色一色になる
・銀杏の実(いちょうのみ):銀杏の葉が落ちる晩秋の頃に、銀杏の実も落果する。外皮は黄色で多肉、内皮は白色で二、三の稜線があり、なかにある胚乳は焼いて料理に用いる
・銀杏黄葉(いちょうもみじ):銀杏が色づくこと。晩秋の公園や街路をあざやかに彩る。日を浴びて黄落するさまは荘厳でさえある
いてふ葉や 止(とど)まる水も 黄に照す(三宅嘯山)
北は黄に いてふぞ見ゆる 大徳寺(黒柳召波)
・犬梨(いぬなし):山梨の別称。秋に直径2~3cmの小さな梨に似た果実が熟する
・茨の実(いばらのみ):野茨の実のこと。初夏に白く香りのいい花をたくさんつけたあと実を結ぶ。実は小ぶりで光沢のある紅色。葉が落ちたあとも実は残るが、冬ざれてくるにしたがって黒ずんでくる
・色変えぬ松(いろかえぬまつ):晩秋に樹々が紅葉、落葉しても松は美しい緑の色を保っている
色かへで 空をさしけり 松の針(三宅嘯山)
神代より 色替へぬかな 松と浪(小林一茶)
色変へぬ 松を土産や 小倉山(永田芙雀)
色変へぬ 松にかたまる 日和哉(祐昌)
色変へぬ 松や主は 知らぬ人(正岡子規)
・色づく草(いろづくくさ):秋もすっかり深まるころ、ときに薄霜の降りるころになると、もろ草はさまざまに彩づく
・色ながら散る(いろながらちる):「紅葉かつ散る」に同じく俳句独特の用語。紅葉しながら、かつ散るのをいう
・いろはかえで:ムクロジ科の落葉高木。関東以西の山地に自生。葉は手のひら状に五~七つに裂け、秋に紅葉する。花は春につけ、暗紅色。名は、葉の裂け目を「いろはにほへと」と数えたことによる。庭によく植え、材は建築・器具用。たかおかえで。いろはもみじ
文ならぬ いろはもかきて 火中哉(松尾芭蕉)
・色葉散る(いろはちる):「紅葉かつ散る」に同じく俳句独特の用語。紅葉しながら、かつ散ることをいう
・色見草(いろみぐさ):紅葉の別称
・岩茸(いわたけ):地衣類イワタケ科で日本各地の山地の岩上に生ずる。地衣体は扁平な楕円状で径は5~10cmくらい。色は光沢のない灰褐色である。古くから食用として知られているが、切り立った岸壁などに生えるため、採取はきわめて危険な作業となる。三杯酢や和え物にして食す
・岩茸採り(いわたけとり):切り立った崖などでロープを使って岩茸を採取すること。たいへん危険な作業
・印度苹果(いんどりんご):リンゴの一品種。アメリカ合衆国のインディアナ州原産。果実は背が高く、左右不均整で果肉がかたく、甘く、酸味がない
・萍紅葉(うきくさもみじ):水田・溝川・沼・湖などに成育している萍が、晩秋に入ると、そこはかとなく色づいてくること
・薄黄木犀(うすぎもくせい):仲秋、淡黄色の小花を開く木犀
・打栗作る(うちぐりつくる):大きい搗栗を蒸して、砂糖で味をつけ、紙に包んで圧して平たくした食べ物
・うべ:郁子(むべ)の別称
・うみ柿(うみがき):木の上で熟しすぎて、晩秋、内部が透きとおるようになった柿の実
・梅擬/梅嫌/落霜紅(うめもどき):モチノキ科の落葉低木で、北海道を除く日本各地の山地に自生する。とくに、谷筋や湿地に多い。庭木としても鑑賞し、初夏に薄紫の小さな花が咲く。実ははじめ青いが晩秋には深紅となる
残る葉も 残らず散れや 梅もとき(野沢凡兆)
十人の 殿等強し 梅もとき(天野桃隣)
折りくるる 心こぼさじ 梅もどき(与謝蕪村)
・梅紅葉(うめもみじ):梅の葉が色づくこと。色づいてもほとんど目立たず、過ぐに散ってしまう
打過ぎて 又秋もよし 梅紅葉(天野桃隣)
散り行くも 二度の歎きや 梅紅葉(服部嵐雪)
涼しさや 風の色さす 梅もみぢ(志太野坡)
・末枯るる(うらがるる):晩秋、草の葉も木の枝も先のほうから徐々に枯れ始めること
・末枯(うらがれ):木々の枝先や葉の先の方から枯れること。「末」とは、「先端」の意。秋から冬へと季節が変わりつつあることを感じさせてくれる
うらがれや 馬も餅くふ 宇津の山(宝井其角)
うら枯や からきめ見つる うるしの木(与謝蕪村)
うら枯れて いよいよ赤し烏瓜(炭 太祇)
末枯れや 諸勧化(しょかんげ)出さぬ 小制札(小林一茶)
末枯れも 一番はやき 庵哉(小林一茶)
海へむく 山末枯れを いそぎけり(岡崎如毛)
・漆の実(うるしのみ):漆はウルシ科ウルシ属の落葉高木。5月から6月にかけて黄緑色の小さな花が咲き、秋に淡黄色の扁球形の実が熟す。実は7~8mmくらいで光沢がある。果皮から蝋が採れる
・漆紅葉(うるしもみじ):晩秋、漆の葉が紅葉することで、古くから賞美された。最初は黄色く、しだいに美しい朱色に色づく。山漆はことに美しい
もみづるも よの木々よりや はや漆(安原貞室)
楓稀に 漆多くは 紅葉す(福田把栗)
・虚抜き大根(うろぬきだいこん):中抜大根の別称。晩秋、ある程度まで生長した段階で間引いた細い大根のこと
・榎の実(えのきのみ):榎はニレ科エノキ属の落葉高木。本州、四国、九州の山地に自生する。4月から5月にかけて、淡黄色の花を咲かせる。実は直径7mmくらい。球形で10月頃赤く熟す。甘いので鳥に好まれる
木にも似ず さてもちいさき 榎の実かな(上島鬼貫)
榎の実散る 椋鳥の羽音や 朝嵐(松尾芭蕉)
・笑栗(えみぐり):熟して毬(いが)が開いている栗。栗の毬が割れてまるまると太った艶やかな実がのぞいている様子
・楝の実(おうちのみ):楕円形でサクランボぐらいの大きさの楝の実のこと。秋に熟して黄色くなり、つるつるしているので、俗に栴檀坊主ともいう
・おく:晩稲のこと
・晩稲(おくて):晩秋に実る稲のこと。11月に入り、霜や雪に遭遇することもある。秋の深まった中での刈り取りは、あわただしくまた侘しい。それがこの季題の本意である
・おしね:晩稲のこと
・落栗(おちぐり):落ちた栗の実
・落椎(おちしい):晩秋、落果する椎の木の実。子供が拾って食べたりした
・落穂(おちぼ):刈り取った後の田や畦・稲架の下に落ちている穂のこと。一粒の米も無駄にしないという思いから、落穂拾いは大事な仕事
いたゞいて おち穂拾む 関の前(松尾芭蕉)
庭鳥の 卵うみすてし 落穂哉(宝井其角)
落穂拾ひ 日あたる方へ あゆみ行く(与謝蕪村)
あしあとの そこら数ある 落穂かな(黒柳召波)
痩臑に 落穂より行く 聖かな(高井几菫)
旅人の 垣根にはさむ おち穂かな(小林一茶)
・落穂拾(おちぼひろい):晩秋の落穂を拾い集めること
・鬼胡桃(おにくるみ):クルミ科の落葉高木。渓谷沿いの山林中に多い。新しい枝には黄褐色の毛が密に生え、葉は羽状複葉。5月ごろ、新葉とともに緑色の雄花と雌花とが穂状につく。実は球形で、核にしわが多い。やまぐるみ
・万年青の実/老母草の実(おもとのみ):ユリ科の多年草。鉢植え、盆栽として葉と赤い実を鑑賞する。青い実が、秋が深まるにつれて深紅に熟す。濃い緑色で光沢を持つ葉と鈴なりの深紅の実が嘉祝にふさわしく、お祝いの席に用いられることが多い
草の葉の 岩にとりあふ 老母草(おもと)哉(上島鬼貫)
花の時は 気づかざりしが 老母草の實(黒柳召波)
鵯(ひよどり)の 今年も知らぬ 老母草かな(田川移竹)
愚を守る 庵に一鉢 老母草の實(松瀬青々)
望月の 玉とやいはむ おもとの子(東走)
万年青の実 楽しむとなく 楽しめる(鈴木花蓑)
・オリーブの実(おりーぶのみ):モクセイ科の常緑樹。地中海地方の原産で、日本では小豆島などで栽培されている。初夏に花をつけ、その後青い実を結ぶ。オリーブオイルをとったり、青い果実はピクルスなどに利用する
・疎抜き大根(おろぬきだいこん):中抜大根の別称。晩秋、ある程度まで生長した段階で間引いた細い大根のこと
・おんこの実(おんこのみ):一位の実の別称。晩秋になると赤く透きとおるように熟し、甘くなる
(2)か行
・海棠木瓜(かいどうぼけ):カリンの別称。主に実を指し、季語としては秋
・楓(かえで):楓は色づく樹々の中で特に美しく代表的なもの。その葉の形が蛙の手に似ていることから古くは「かえるで」とも。秋もさることながら春の緑も美しい
楓橋は 知らず眠さは 詩の心(各務支考)
紅楓深し 南し西す 水の隈(高井几菫)
沼楓 色さす水の 古りにけり(臼田亜浪)
・かえるで:楓(かえで)の古名
・火焔菜(かえんさい):アカザ科の一、二年生の根菜。地中海沿岸が原産で、サトウダイコンの変種。赤い色をしたカブのような形で、独特の甘みがり、鉄分・ビタミンなどを豊富に含む。赤蕪のように酢漬けなどにしたり、スープの具材などとして食す
・柿(かき):カキノキ科の落葉高木。東アジア温帯地方固有の植物で、果実を食用にする。かたい葉は光沢がある。雌雄同株。富有、御所、次郎柿などの甘柿は熟すると黄色が赤くなりそのまま食する。渋柿は、干し柿にすると甘くなる。青い実の渋柿からは、防水防腐に使われる「柿渋」がとれる
里古りて 柿の木持たぬ 家もなし(松尾芭蕉)
祖父(おほぢ)親 まごの栄や 柿みかむ(蜜柑)(松尾芭蕉)
蔕(へた)おちの 柿のおときく 深山(みやま)かな(山口素堂)
柿ぬしや 梢は近き 嵐山(向井去来)
別るるや 柿喰ひながら 坂の上(広瀬惟然)
柿売の 旅寝は寒し 柿の側(炭 太祗)
嵯峨近う 柿四五本の 主かな(万古)
渋かろか 知らねど柿の 初ちぎり(加賀千代女)
渋いとこ 母が喰ひけり 山の柿(小林一茶)
柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺(正岡子規)
三千の 俳句を閲(けみ)し 柿二つ(正岡子規)
よろよろと 棹がのぼりて 柿挟む(高浜虚子)
釣鐘の なかの月日も 柿の秋(飯田龍太)
存念の いろ定まれる 山の柿(飯田龍太)
柿食ふや 命あまさず 生きよの語(石田波郷)
昨日より 今日むさぼりぬ 次郎柿(石田波郷)
丸くして 四角なるもの 富有柿(長谷川櫂)
・柿吊す(かきつるす):秋、渋柿を干して干柿を作ること
・柿なます(かきなます):柿と大根から作られた日本の伝統的な漬物で、特に秋の美味しい味覚として知られている
・柿の秋(かきのあき):柿の実が赤色に熟れた美しい秋
・柿の蔕落(かきのほぞおち):柿がよく熟して、自然に蔕(へた)から落ちること
・柿干す(かきほす):秋、渋柿を干して干柿を作ること
・柿店(かきみせ):柿を売る店。柿は晩秋の季語
・柿紅葉(かきもみじ):柿の葉が紅葉すること。柿の葉の本来の緑に赤や黄や茶などさまざまな色が入り混じって美しく色づく
渋柿は おのが手染めか 村紅葉(山崎宗鑑)
あと先に 人声遠し 柿紅葉(加藤暁台)
祭にも 鐘つく村や 柿紅葉(宮 紫暁)
渋柿も 紅葉しにけり 朝寝坊(小林一茶)
降つてすぐ 乾く瓦や 柿紅葉(長谷川櫂)
・柿羊羹(かきようかん):生干しにした柿をすり潰したり、柿を煮てペースト状にしたり、やわらかくした後、煮溶かした寒天に混ぜて、容器に流し込んで棹状にしたもの
・樫の実/橿の実(かしのみ):樫は、ブナ科コナラ属の落葉高木アカガシ、シラカシ、ウラジロガシなどの総称である。褐色の硬い実は秋に熟し地上に落ちる。くぬぎの実同様どんぐりとも呼ばれる
樫の実の 落ちて駆け寄る 鶏三羽(村上鬼城)
・柏黄葉(かしわもみじ):柏の葉が色づくこと。黄色から褐色になる。柏紅葉自体にあでやかさはないが、木が大きくなるだけに紅葉山の彩りになる
・搗栗作る(かちぐりつくる): 殻付き栗を干し、臼で搗き、殻と渋皮を取り除いたものが「搗栗」。 保存が利き栄養価も高いことから戦国時代によく用いられた。また「搗ち(かち)」が「勝ち」につながることから縁起がよいとされた
・桂の花(かつらのはな):秋、葉のわきに小花を群がりつけ芳香を放つ木犀の花
・莢蒾の実(がまずみのみ):がまずみはスイカズラ科ガマズミ属の落葉低木。日本の各地に広く自生する。5月から6月にかけて白い小花を散房状にびっしりと咲かせる。果実は直径5mmほどの球形で、9月から10月にかけて赤く熟す。甘酸っぱく果実酒に利用される
・萱(かや):ススキ、カルカヤ、茅などのイネ科の多年生草木の総称。刈り取って屋根を葺くのに用いたり、茅などは夏越の祓いになくてはならない
わが書きし 文字さへふりぬ 萱薄(蝶夢)
・萱の穂(かやのほ):刈萱(かるかや)、白茅(ちがや)、芒(すすき)などの萱と呼ばれる植物の秋の穂
・榧の実(かやのみ):榧はイチイ科の針葉樹で、高さ30mにもなる。4月頃開花し、雌株に2~3cmの楕円形の実がつく。10月に緑色の外皮が紫褐色となり、裂けて種子が落ちる。独特の芳香があり、炒って食べる
榧の実に 富あらそふや 八荘(悠哉)
榧の木に 榧の実のつく さびしさよ(北原白秋)
・萱原(かやはら):刈萱、白茅、芒などの萱と呼ばれる植物が生えた秋の原っぱ
・烏瓜/玉瓜(からすうり):ウリ科の多年草。山野に自生する蔓草。夏に白いレースのような花を咲かせ秋に実をつける。実は卵形で、縞のある緑色から熟して赤や黄に色づく
竹藪に 人音しけり 烏瓜(広瀬惟然)
まだき冬を もとつ葉もなし からす瓜(与謝蕪村)
くれなゐも かくてはさびし 烏瓜(大島蓼太)
溝川や 水に引かるる 烏瓜(小林一茶)
行く秋の ふらさがりけり 烏瓜(正岡子規)
夕日して 垣に照合ふ 烏瓜(村上鬼城)
枯れきつて 中の虚ろや 烏瓜(長谷川櫂)
・枳殻の実(からたちのみ/きこくのみ):枳殻の春に咲いた白い花は秋になると芳香のある小さな果実となる。黄熟するが食べられない。未熟のうちに乾かし健胃剤とする
平城の うしろたのめる きこくかな(炭 太祇)
枳穀(きこく)の実 冷たき雨の 降る日かな(刺風)
・唐梨(からなし):カリンの別称。主に実を指し、季語としては秋
・榠樝の実/花梨の実(かりんのみ):中国原産の果実。春に淡い紅色の花をつけ、秋には黄色ででこぼこした実をつける。香りはよいが、すっぱく硬いため生では食さない。砂糖漬けや榠櫨酒にする。咳止めの薬や利尿剤として効能がある
榠櫨の実 刃を入れて刃の 動かざる(長谷川櫂)
・かわらふじのき:皀角子(さいかち)の別称
・観音草(かんのんそう/かんおんそう):吉祥草の別称。晩秋、薄紫の小花をつける
・祗園坊(ぎおんぼう):広島県芸北地方から産する渋柿。また、その干し柿
・菊残る(きくのこる):秋も終わろうとする時期にまだ咲き残っている菊
・きざ柿(きざがき):甘柿の別称
・木大角豆/木豇豆(きささげ):ノウゼンカズラ科の落葉高木。別名では、カミナリササゲ、カワギリ、ヒサギとも呼ばれる。生薬名で梓実(しじつ)と呼ばれる。日本で「梓(し)」の字は一般に「あずさ」と読まれ、カバノキ科のミズメ(ヨグソミネバリ)の別名とされるが、本来はキササゲのことである。和名は、果実がササゲ(大角豆)に似るのでキササゲ(木大角豆)と呼ばれる
・きざらし:きざわしに同じ
・きざわし:木になったまま熟して甘くなった柿。きざがき。きざらし
・木酢(きず):酢橘の別称
・吉祥草(きちじょうそう):ユリ科キチジョウソウ属の多年草。本州、四国、九州の湿り気のある山地の日陰に自生する。葉は線形で長さ20cmくらい。根本から叢生する。9月ころ葉の中から10cmほどの花茎を伸ばし淡紅色の花を穂状につける。この花が咲くといいことがあるというので、吉祥草の名がある
・茸(きのこ):晩秋山林の湿地や朽木などに生える大型の菌類の俗称。傘の形をしていて種類が多く、美しい色を持つ毒茸もある。椎茸、舞茸、しめじ、榎茸などは味も良く人工栽培が可能で市場に出荷されている
初茸や まだ日数へぬ 秋の露(松尾芭蕉)
君見よや 拾遺の茸の 露五本(与謝蕪村)
海見ゆる 芝に坐とるや 焼菌(小林一茶)
白雲に 人家二三の 茸山(松瀬青々)
茸狩り 山浅くいくちばかりなり(正岡子規)
爛々と 昼の星見え 菌生え(高浜虚子)
・茸売(きのこうり):晩秋、茸を売る人
・茸番(きのこばん):晩秋、茸が生えている所を見張る人のこと
・茸飯(きのこめし):秋の松茸などの茸を炊き込んだ御飯
・伽羅柿(きゃらがき):柿の一品種で、別名「元山(がんざん)」とも呼ばれ、佐賀県原産で北九州の宅地内で栽培されていたが、30年以上の古木にならないと本来の甘味が出ないことから、戦後の急速な都市化の流れで衰退してしまった
・伽羅木の実(きゃらぼくのみ):一位の実の別称。晩秋になると赤く透きとおるように熟し、甘くなる
・金柑(きんかん):ミカン科キンカン属の常緑低木。3cmほどの大きさの実の表面は艶やかで金色に光る。たわわに実っている様子が美しい。またビタミンCが豊富なため、砂糖などで煮て風邪薬として用いられる
金かんや 南天もきる 紙袋(小林一茶)
・金橘(きんきつ):金柑(きんかん)の別称。晩秋に熟する果物の一つ。果実は小さく、球形または長球形。晩秋に熟し金色になる。香りが高く、生食用にもなる
・銀杏(ぎんなん):銀杏(いちょう)が黄葉する頃、雌の株に黄色く熟す丸い実。落ちて臭気を発し、触れるとかぶれることがある。果肉の中に堅い種子があり、これを取り出して食用とする
青々と 池持つ寺や 銀杏の実(原石鼎)
寺の井に 竹簀の蓋や 銀杏の実(原石鼎)
子等に落ちて 黄なる歓喜や 銀杏の実(原石鼎)
・金木犀(きんもくせい):モクセイ科 クセイ属の常緑小高木で、 モクセイ (ギンモクセイ)の変種 。庭木として栽植される。葉は長楕円形ないし披針形で革質。雌雄異株。10月頃,葉腋ようえきに芳香のある橙黄色の小花を密に束生する
中国では、正しくは丹桂がこれに当たるが、一般には桂花の名で呼ばれることがある
・銀木犀(ぎんもくせい):晩秋、白色の小花を開く木犀
・枸橘(くきつ):カラタチの実。花の後で球形の実を結び、晩秋に熟して黄色くなる。ただし食べられない
・枸杞子(くこし):枸杞の果実のこと。10月頃になると赤く熟する
・枸杞酒(くこしゅ):10月頃、赤く熟した枸杞の実を漬けた果実酒
・枸杞の実(くこのみ):ナス科クコ属の落葉小低木。夏から秋にかけ淡紫の小花をつけ、その実は10月頃赤く熟して人目をひく。果実を採り枸杞酒を作る
・常山木の実/臭木の実(くさぎのみ):臭木はクマツヅラ科クサギ属の落葉小高木。日本各地の山野に自生する。8月から9月にかけて白い花をつけ。晩秋に光沢のある実が青紫色に熟す。実は、6~7mmくらいの球形
常山の実 こぼれ初めけり 夜の雨(魯竹)
・草の錦(くさのにしき):秋の野山のはなやかにいろどられた美しさを錦にたとえた言葉
・草の紅葉(くさのもみじ):草紅葉に同じ
・くさびら:きのこ類のこと
・草木瓜の実(くさぼけのみ):花が終わった後の草木瓜の実。秋になると黄色く熟すが、堅く酸味が強い。摣子の実(しどみのみ)
・草紅葉(くさもみじ):晩秋に山野の草々が色づいて紅葉のように見えること。古くは草の錦と呼んだ。「草木の紅葉を錦にたとへていふなり」と「俳諧歳時記栞草」に載っている
酒さびて 螽(いなご)やく野の 草紅葉(宝井其角)
魚汁の とばしる草も 紅葉かな(小林一茶)
佇(た)ち尽す 御幸(みゆき)のあとは 草紅葉(杉田久女)
一雨に 濡れたる草の 紅葉かな(日野草城)
眠るものの はらやはらかき 草紅葉(高田正子)
・串柿(くしがき):渋柿の皮をむき、1本の竹串に数個刺して干したもの
・串柿作る(くしがきつくる):渋柿の皮を剥き、串に刺して乾燥させる。表面がしわしわになり、 白い粉を吹いた状態になれば甘くなる
・梔子の実/山梔子の実(くちなしのみ):梔子は、アカネ科クチナシ属の常緑低木。6月から7月枝先の葉腋に香りのよい白い花を咲かせる。秋から冬にかけて、小さな種が詰まった黄赤色の実が熟す。実の大きさは2cmくらい。薬用になる
・櫟の実(くぬぎのみ):俗にいう団栗のこと。団栗は秋の季語
・茱萸(ぐみ):高さ3mほどになる落葉高木である。初夏に花が咲き、10月ごろに紅い実をつける。食べると甘酸っぱく、口中に渋みが残る。茱萸は春茱萸や夏茱萸、唐茱萸や箱根茱萸など種類が多い。単に「茱萸」といえば秋茱萸のことをさす
いそ山や 茱萸ひろふ子の 袖袂(加舎白雄)
・茱萸酒(ぐみざけ):秋茱萸の実で造った果実酒
・栗(くり):ブナ科。密生したとげの毬の中で実が生育する。山野に自生し古くからその実は食用とされてきた。6月頃に強い芳香を持つ花を咲かせる。材は耐湿性、耐久性にすぐれ家の土台枕木杭木などに用いられてきた
夜ル竊(ひそか)ニ 虫は月下の 栗を穿(うが)ツ(松尾芭蕉)
古寺や 栗をいけたる 椽の下(上島鬼貫)
山川や 梢に毬毛は 有ながら(宝井其角)
栗備ふ 恵心の作の 弥陀仏(与謝蕪村)
栗拾ひ ねんねんころり 言ひながら(小林一茶)
毬栗の 蓑にとどまる あらしかな(加舎白雄)
毬栗に 鼠の忍ぶ 妻戸かな(黒柳召波)
・栗鹿の子(くりかのこ):餡をまるめた上に、栗の甘煮を載せた菓子。栗は秋の季語
・栗きんとん(くりきんとん): 栗を用いた和菓子。 京都では似た形式の菓子を「栗茶巾 (くりちゃきん)」とも呼ぶ。 炊いた栗に砂糖 を加え、 茶巾で絞って形を整える 。 近年では 平仮名表記の「栗きんとん」が多く用いられるが、 漢字では一般的に「栗金飩」と表記する 。 「飩」の字には「蒸し餅」という意味があり、読みが同じ栗金団とは「飩」の字のとおり製法や食感が異なる
・栗茸(くりたけ):モエギタケ科の茸。栗、楢、櫟などの倒木にかたまって生える。高さは5~10cmくらい。傘は3~6cmくらいで色は茶褐色。食茸ではあるが、それほどおいしい茸ではない
・栗林(くりばやし):栗の生えた林
・栗饅頭(くりまんじゅう):栗あん、または蜜漬けの栗をまぜた白あんを皮で包み、上面に卵黄を塗ってつやよく焼き上げた和菓子
・栗飯(くりめし):鬼皮、渋皮をむいた栗を米とあわせ、塩、酒を加えて炊いたごはんのこと。むいた栗を焼いてから炊く場合もある。もち米を使って、おこわに炊くこともある
栗めしや 根来法師の 五器折敷(与謝蕪村)
栗飯や 目黒の茶屋の 発句会(正岡子規)
栗飯や 水上泊りの 二三日(松瀬青々)
栗飯や 人の吉凶入りみだれ(日野草城)
推敲の 力やしなへ 栗の飯(長谷川櫂)
・栗もたし(くりもたし):晩秋、栗や楢の切り株などに群生するマツタケ科の小さい茸
・栗山(くりやま):栗の木の植わっている山
・栗羊羹(くりようかん):蜜栗をいれた蒸羊羹がよく知られるが、栗餡を寒天で固めた煉羊羹もある
・胡桃(くるみ):クルミ科の落葉高木の実。日本に自生するのは鬼胡桃。果実はほぼ球形で、直径約3cmほど。細かく毛が密生し、殻はきわめて固い。中には白い子葉の脂ののった果肉があり、和え物や菓子などに利用される
暫く聞けり 猫が転ばす 胡桃の音(石田波郷)
・胡桃割る(くるみわる):胡桃の堅い殻を割ること
・君遷子(くんせんし):信濃柿の別称
・鶏栖子(けいせいし):皀角子(さいかち)の別称。秋に、長さ30cmくらいの豆莢が垂れる
・解夏草(げげそう):吉祥草の別称
・懸崖菊(けんがいきく):菊を盆栽仕立てにして、幹や茎が根よりも低く崖のように垂れ下がらして作ったもの
・玄圃梨/枳梖(けんぽなし):クロウメモドキ科の落葉高木。山野に自生。葉は広卵形で先がとがる。夏に淡緑色の小花を多数つけ、球形の果実がなる。秋に果実の柄が肥大し、甘く食用となる
・香円(こうえん):マルメロの別称。10月頃、果実が熟して黄色くなる。固くて生食にはむかず、砂糖漬けや缶詰めを作る。味は甘酸っぱい
・紅玉(こうぎょく):リンゴの一品種。果皮は真紅色、果肉は薄黄色。酸味がやや強い
・柑子(こうじ):ミカン科ミカン属の常緑樹。温州蜜柑などよりも皮が薄い。最初は酸味があるが、熟すにしたっがって甘みが増してくる。蜜柑などより完熟期が早い
仏壇の 柑子を落す 鼠かな(正岡子規)
・柑子蜜柑(こうじみかん):柑子の果実で、ミカンよりやや小型。熟すると黄色くなり酸味が強い。晩秋に出回る
・紅楓(こうふう/べにかえで):アメリカハナノキの別称。カエデ科の落葉高木
・紅葉(こうよう):落葉樹の葉が赤や黄色に色づき、野山の秋を飾る。紅葉といえば主に楓のことをいう。紅葉を愛でるという習慣は平安の頃の風流から始まったとされている
・黄葉(こうよう):木の葉が黄色く色づくこと。銀杏、櫟、欅などの黄葉をいう。古くは、晩秋の落葉樹が紅色、黄色に色づくのをすべて黄葉と記し、「もみぢ」と読んでいた
・黄落(こうらく):広葉樹が黄色く色づいて落ちることをいう。欅やくぬぎ、ぶな、銀杏など、日を浴びながら落ちるさまは美しい
・黄落期(こうらくき):晩秋、銀杏、楢、櫟などの木の葉が黄落する時期のこと
・小柿(こがき):小アジア原産で、日本に古くから栽培され、ことに信濃に多い
・小式部(こしきぶ):紫式部のことで、晩秋になって小さな丸い実が群がり、紫色に熟するのが美しい
・御所柿(ごしょがき):、奈良県御所(ごせ)市原産の完全甘柿の品種。
甘柿のルーツと言われる柿で、「五所柿」や「やまとがき」、「ひらがき」などとも呼ばれる。 江戸時代初期、大和国御所町で、褐班(ゴマ)がなく樹上で自然に甘くなる完全甘柿が突然変異によって生まれた。それ以前の柿といえば、渋柿か、受粉して種が入り褐班ができて初めて甘くなる不完全甘柿しかなかった。 甘味が強くて粘り気のある食感は「天然の羊羹」ともたとえられ、極上の「御所柿」として幕府や宮中にも献上されていた
・国光(こっこう):リンゴの一品種。果皮は紅黄色で、比較的酸味が少ない。晩生で収穫量が多く、貯蔵がきく
・小梨(こなし):山梨の別称。秋に直径2~3cmの小さな梨に似た果実が熟する
・木練(こねり):甘柿の別称
・木の葉かつ散る(このはかつちる):「紅葉かつ散る」に同じく俳句独特の用語。紅葉しながら、かつ散ることをいう
・五倍子(ごばいし/ふし):白膠木の葉に五倍子虫が卵を産みつけ、晩秋、その刺激によって葉にできた瘤のようなもの
・ころ柿/転柿/枯露柿(ころがき):干柿の別称
(3)さ行
・さいかし:皀角子に同じ
・皀角子/皀萊(さいかち):マメ科の落葉高木。高さは10mほどで、山野に自生する。初夏には四弁で淡緑色の細かい花を穂状につける。晩秋にねじれた莢豆が生り、それは長さ30cmほどにもなる。莢は乾くと 黒ずみ、振ると音をたてる
さしかしや 吹きからびたる 風の音(呉江)
・皀角子の実(さいかちのみ):秋、皀角子(さいかち)にできる豆莢状の実のこと
・西条柿(さいじょうがき):広島県西条付近から産する柿の一品種。渋柿のため干し柿にする
・ささ栗/笹栗/小栗(ささぐり):シバグリの別称。小さい栗のこと
・南五味子(さねかずら):モクレン科の常緑つる性植物。秋に実が熟すると、青から赤、やがて黒へと色が変わる。この実を乾燥させて漢方薬として使う。
サネカズラ(真葛)、ビナンカズラ(美男葛)の名は樹皮から粘液をとって整髪料としたため。関東以西の山地に自生する蔓性の木本。8月ころ白い小さな花をつけるがあまり目立たない。
・真葛(さねかずら):マツブサ科の蔓性 (つるせい) の常緑低木。暖地の山野に自生。葉は楕円形で先がとがり、つやがある。雌雄異株で、夏、黄白色の花をつけ、実は熟すと赤くなる。樹液で髪を整えたので、美男葛 (びなんかずら) ともいう。さなかずら
・洎夫藍(さふらん):クロッカス科の植物。秋に開花し、香辛料、薬用に利用されてきた
・サフランの花(さふらんのはな):アヤメ科サフラン属の球根植物。初秋に球根を植えると晩秋に花を咲かせる。花は六弁の漏斗状で紫色。黄色のおしべと赤いめしべをそれぞれ三本づつ持つ。めしべを摘んで薬用、染料にする
・猿柿(さるがき):信濃柿の別称
・猿瓢/笛瓢(さるひょう):マンサク科の常緑灌木で、葉に虫瘤ができ易く、幼虫がでてしまうと、空洞が開き、口をあててふくとよく鳴る
・猿笛(さるぶえ):瓢の実(ひょんのみ)の別称。晩秋に実り、巣くっている虫がでてしまうと空洞ができており、口をあてて吹くとよく鳴る
・沢胡桃(さわくるみ/さわぐるみ):クルミ科の落葉高木。深山の渓谷に多く、高さ約25mに達する。葉は細長い卵形の小葉からなる羽状複葉。5月ごろ、淡黄緑色の花穂をつける。果実は堅く、翼片がある。材は家具に利用。かわぐるみ。ふじぐるみ
・残菊(ざんぎく):陰暦九月九日の重陽の節句以降に咲く菊のことをいう。盛りを過ぎた晩秋の菊をさすこともある
残菊や 昨日迯(にげ)にし 酒の礼(炭 太祇)
・珊瑚樹(さんごじゅ):珊瑚樹はスイカズラ科ガマズミ属の常緑低木。暖地の沿岸部に自生するほか、庭木や生垣としても植えられる。6月ごろ、白い花を咲かせる。実は秋に赤く熟し、しだいに藍黒色に変わる。美しい実を珊瑚にたとえて珊瑚樹の名がついた
・珊瑚草(さんごそう):厚岸草の別称。深緑色の茎が秋が深まると次第に紅紫色に変わっていく
・椎の実(しいのみ):ブナ科シイ属とマテバシイ属に属する樹木を椎といい、それらの実のこと。形は小粒の球形とやや大振りな細長の二種。炒ると香ばしく甘い。生食も可。古く縄文の頃より親しまれてきた
丸盆の 椎にむかしの 音聞かむ(与謝蕪村)
椎の実の 落ちて音せよ 檜笠(高井几董)
椎の実の 板屋をはしる 夜寒かな(加藤暁台)
牛の子よ 椎の実蹄に はさまらん(加舎白雄)
椎の実を 拾ひに来るや 隣りの子(正岡子規)
わけ入りて 独りがたのし 椎拾ふ(杉田久女)
・椎拾う(しいひろう):晩秋、落果する椎の木の実を、子供が拾って遊んだり食べたりしたこと
・下紅葉(したもみじ):木々の下葉の紅葉したもの。また、物の下に散っている紅葉
・摣子の実(しどみのみ):バラ科の落葉低木、草木瓜の実のをいう。冬から春にかけて木瓜よりも小さめなオレンジ色の花を咲かせ、秋に実をならせる。果実は梅の実のような球状で、香りは高いが渋く酸味が強い。果実酒などに利用される。漢方薬にもなる
・地梨(じなし):草木瓜の実の別称。秋になると黄色く熟すが、堅く酸味が強い
・信濃柿(しなのがき):カキノキ科の落葉小高木。雌雄異株。6月頃淡い黄色の花を咲かせ、10月頃に褐色の実をみのらせる。実の大きさは百円玉くらい。未熟果から渋が取れる
・芝栗(しばぐり):クリの一品種。果実が小さい。山野に自生。小栗(ささぐり)
・渋柿(しぶがき):(古くは「しぶかき」とも)実が赤く熟しても渋みの抜けない柿。さわし柿や干し柿にして食用、また、柿渋の原料とする
渋柿の 滅法生(な)りし 愚かさよ(松本たかし)
・占地/湿地茸(しめじ):マツタケ科。灰または淡灰色の茸。秋、雑木林や松林にかたまって生える。美味で、俗に「におい松茸、味しめじ」といわれる
・霜茱萸(しもぐみ):茱萸の実が霜が降りるたびに赤さと甘みを増すこと
・熟柿(じゅくし):紅く熟した柿。渋柿をさわして熟柿にして食べる場合もある。果肉はゼリー状になり、甘味が強い
木伝うて 穴熊出づる 熟柿かな(内藤丈草)
寂しさの 嵯峨より出たる 熟柿かな(各務支考)
歯にしみて 秋のとどまる 熟柿かな(大島蓼太)
日あたりや 熟柿の如き 心地あり(夏目漱石)
日がさして 熟柿の中の 種みゆる(長谷川櫂)
・数珠玉(じゅずだま):熱帯アジア原産のイネ科の多年草。水辺や畑地などに自生し高さは1mくらい。雌花の小穂に、包鞘から先だけを出した雌花が受粉する。数珠玉はこの雌花と雄花を包んでいた包鞘が秋になり硬くなったもの。お手玉などに入れて用いられた
・白樺黄葉(しらかばもみじ):白樺の木の葉が、晩秋に黄葉すること
・次郎柿(じろうがき):カキの一品種。実は扁平でやや角ばり、果肉は粗いが甘い。静岡県の原産
・白式部(しろしきぶ):紫式部のうち白果種のもの
・白茯苓(しろぶくりょう):黒松に生える茯苓のこと
・新榧子(しんかや):新しく採った榧の実のこと。初めは緑色だが、10月頃熟して紫褐色に変わり、食用にもなる
・新松子(しんちぢり):今年できた松毬(まつかさ)をいう。鱗片がすきまなくきっちりとつまり、匂いたつようである。瑞々しく、清しい
かしこまる 膝の松子ぞ こぼれける(椎本才麿)
松笠の 青さよ蝶の 光り去る(北原白秋)
・杉鉄砲(すぎでっぽう):子供達が作る玩具で、細い篠竹などに晩秋の杉の実を詰めて撃ち遊ぶ
・杉の実(すぎのみ):杉はスギ科スギ属の常緑高木。春に多くの花粉を飛ばし、10月ころ2~3cmくらいの球果を結ぶ。最初は緑色をしているが、しだいに褐色に変わる
日々好日 と杉の実 干してあり(石井露月)
・数珠子(ずずこ):数珠玉の別称
・スターキング:スターキング デリシャス(Starking Delicious)のことで、アメリカ合衆国ニュージャージー州で1921年に デリシャスの着色系枝変わりとして発見されたリンゴの品種である。
果実は長円錐形で濃紫紅色であり、大きさは280~300g程度で縦に縞が入る。果肉は緻密で甘く、芳香もあり食味は良好である。軟らかくシャリッと崩れるような食感で、常温下では軟化しやすい。アメリカ国内では広く普及しているが、日本では下火となっている
・酢橘(すだち):ミカン科の常緑樹で高さは2~3mになる。5月から6月にかけて白い花を咲かせ、7月から8月にかけて実を収穫する。実は徳島県の特産物。秋刀魚や松茸の土瓶蒸しに絞ったりと用途は広い
・禅寺丸(ぜんじまる):柿の品種の一つ。禅寺丸柿は川崎市麻生区原産の柿で、1214年(建保2年)に星宿山王禅寺の山中で発見されたと言われている。当時一般に柿といえば渋柿しかなく、甘柿としては日本最古のものとして2007年(平成19年)には麻生区内の禅寺丸柿の木7本が国の登録記念物に指定されている
・栴檀の実(せんだんのみ):センダン科の落葉喬木。樹高は5~15mほど。5、6月ころ淡い紫色の花をつける。鈴なりになる実は10月ころ黄熟する。葉が落ちても梢に果実が残り、鵯(ひよどり)などが啄ばんだりする
・雑木紅葉(ぞうきもみじ):名のある木の紅葉と異なり、雑木林の紅葉を言う。楢やぶな、くぬぎに楓などさまざまな色合いが重なり合う
(4)た行
・高尾かえで(たかおかえで):高尾紅葉の別称
・高尾紅葉(たかおもみじ):楓の一種。京都・高尾山に多い楓で、葉は五裂または七裂で、鋭い鋸葉がある
・高嶺岩茸(たかねいわたけ):岩茸のこと。地衣類の一種で、茸ではない。山地の古生層または花崗岩地帯の岩壁などについて自生する
・茸山(たけやま):晩秋、茸の生えている山
・橘(たちばな):日本原種の野生の柑橘類。比較的暖かい地方に生育する常緑低木。白色の花は五弁で5、6月に咲く。秋、棘のある枝に淡黄色の3cmほどの実を結ぶ。酸味が強く生食には向かない
・龍田草(たつたぐさ):紅葉の雅名
・谿紅葉(たにもみじ):紅葉で色どられた谿
・種朝顔(たねあさがお):実から種をとる朝顔
・種茄子(たねなす):種をとるため、もがずに晩秋まで残した茄子。肥大し、紫褐色に熟れ、その肌には罅(ひび)や傷がついている。その姿たるや独自。開花後2ヶ月を過ぎれば採種できる
・種瓢(たねふくべ):種を採取するための瓢。ほかの実は瓢箪にするために早々に採ってしまうが、来年の瓢苗のために、一つ二つはそのまま棚において完熟させる
種瓢 斑(まだ)らなつらを 見はやさん(黒柳召波)
・玉章(たまずさ):烏瓜の別称。実に入っている種の形からの名
・玉水木(たまみずき):玉水木はモチノキ科モチノキ属の落葉高木。5月から6月にかけて葉腋に白い花を多くつける。実は直径3mmくらい。枝を覆うようにびっしりとつき、秋から冬にかけて真つ赤に熟す
・樽柿(たるがき):渋柿を空いた酒樽に詰め、樽に残るアルコール分で渋を抜いて甘くした柿。樽抜き
・丹波栗(たんばぐり):丹波地方産の大粒の栗。おおぐり
・縮緬かえで(ちりめんかえで):高尾紅葉の一変種
・椿の実(つばきのみ):椿は夏、翠色の艶やかな実をむすぶ。この球状の実はやがて紅を 帯び、秋には褐色となり成熟を迎える。熟すと背が三つに割れて、 硬い暗褐色の種が二、三個飛び出る。この種を絞ったものが椿油で、古くから食用や髪油として用いられてきた
実椿や 立つるによわき 蜂の針(志太野坡)
・妻恋草(つまこいぐさ):高雄紅葉の別称
・蔓梅擬/蔓落霜紅(つるうめもどき):ニシキギ科の落葉低木で、幹は蔓になる。山野に自生し、5月ごろ黄緑色花をつける。豌豆ぐらいの球形の実は熟すと三つに裂け、中から黄赤色の種がのぞく。生花に用いられる
霧ひらく 山径にして 蔓もどき(臼田亜浪)
・吊し柿(つるしがき):干柿の別称
・鶴の子(つるのこ):柿の品種の一つ。鶴の子柿(つるのこがき)は京都宇治田原の特産、古老柿として有名な干し柿に使われている小ぶりの柿
・つるもどき:蔓梅擬のこと
・蔓茘枝(つるれいし):茘枝に同じ。ウリ科の蔓性の一年草。葉は巻きひげと対に出て、手のひら状に裂けている。夏から秋、黄色い花を開く。実は長楕円形でこぶ状の突起があり、熟すと黄赤色になる。若い実を食用にするが、果皮は苦い。熱帯アジアの原産で、栽培される。にがうり。ごおやあ
・定家葛(ていかかずら):山地に多い木に纏いつく常緑の葛。藤原定家が「色まさりゆく」と歌ったことから秋の季語になった
・出落栗(でおちぐり):自然に落ちた栗
・デリシァス:リンゴの一品種。北アメリカの原産で、果実は大きく、甘味が強く、果肉はやや柔らかい
・照葉(てりは):紅葉した葉が光を反射して照り輝いていること。真っ青な空を 背景に照り映えている紅葉はことのほか美しい
岸なだれ 踏止める樹の 照葉かな(三宅嘯山)
迷ひ出る 道の藪根の 照葉かな(炭 太祗)
から堀の 中に道ある 照葉かな(与謝蕪村)
・照紅葉(てりもみじ):秋の晴れた日、太陽に照りかがやいている紅葉のこと
・唐かえで(とうかえで):ムクロジ科の落葉高木。葉は浅く三つに裂けており、秋に紅葉。4、5月ごろ、淡黄色の花がつき、翼のある実を結ぶ。中国の原産で、街路樹や庭木にする
・唐柿(とうがき):無花果の別称
・冬青(とうせい/そよご):黐の木の別称。実は通常秋に赤く熟するが、黄色く熟する種類もある
・満天星紅葉(どうだんもみじ):満天星躑躅(どうだんつつじ)の木の葉が、晩秋に紅葉すること。生垣や公園など身近なところで目にできる紅葉である
・唐麦(とうむぎ):イネ科大型多年草の数珠玉の別称。秋に結実する
・常盤通草(ときわあけび):郁子(むべ)の別称
・栃の実/橡の実(とちのみ):栃の木の実。丸く厚い三裂する殻の中に栗に似た種がある。縄文時代から食用にしてきた。丹念にあく抜きする必要がある。今も栃餅や栃の実煎餅などにして食す
木曽の橡 浮世の人の 土産かな(松尾芭蕉)
うらやまし 君が木曽路の 橡の粥(八十村路通)
橡の実や 幾日ころげて 麓まで(小林一茶)
栃老いて あるほどの実を こぼしけり(前田普羅)
栃の実の つぶて颪(おろし)や 豊前坊(杉田久女)
・海桐の実(とべらのみ):海桐はトベラ科トベラ属の常緑低木。暖地の沿岸部に自生し、高さは3mくらい。4月から6月にかけて、枝先に芳香のある白い花をつける。直径1.5cmほどの黄色の実は晩秋に裂けて、十粒ほどの赤い種があらわになる
・桐油の実(とゆのみ):花が終わると雌花が実ってできる果実。10月頃熟して、なかに三個の丸くなめらかな種ができる。種からは油を絞る
・団栗(どんぐり):楢、樫、柏などのブナ科の落葉樹の実を総していうが、狭義では櫟の実のこと。拾ってきて独楽にしたり、人形を作ったりする
団栗や 熊野の民の 朝餉(あさがれい)(野沢凡兆)
団栗の 寝ん寝んころり ころりかな(小林一茶)
団栗の 己(おの)が落葉に 埋れけり(渡辺水巴)
・団栗独楽(どんぐりごま):団栗で作った独楽
・団栗餅(どんぐりもち):団栗の澱粉をさらして作った餅
(5)な行
・中稲(なかて):早稲と晩稲の間に稔る稲。収穫は10月下旬
・中抜大根(なかぬきだいこん):二度目に間引いた大根のこと。大根は、秋に種をまいて発芽したあとすぐに間引くが、大きくなる前にもう一度間引いて、その成長を促す。二度目に間引かれた大根は、太さが小筆くらいになっており、その葉と共に漬物や味噌汁の具に利用する
・七竈/野槐(ななかまど):バラ科の落葉高木。山野に自生する。燃えにくい木で、七度竈に 入れても燃え残るといわれたところから名が付いた。秋が深まると葉が真っ赤に紅葉し美しい。また丸い実も赤く熟し、目をひく
・ななかまどの実(ななかまどのみ):小豆ほどの大きさの実が房状にでき、晩秋には真っ赤に熟する
・名の木散る(なのきちる):ぶなや柞(ははそ)、櫨(はぜ)など、その名が一般に知られている木が葉を落とすこと。俳句に詠む場合は、「柞散る」とか「櫨散る」というように具体的な名を当てはめて詠むこととなる
・名木紅葉(なのきのもみじ):名のあるの木の葉が、晩秋に紅葉すること。紅葉の美しい木を一括していう言葉
・楢の実(ならのみ):楢は、ブナ科コナラ属の落葉高木。ミズナラ、コナラなどの総称である。夏に紐状の花が咲き、秋に硬い実が熟す。くぬぎの実同様どんぐりとも呼ばれる
・楢紅葉(ならもみじ):晩秋、楢の葉が紅葉したもの。山林中に最も普通に見られる紅葉の一つ
楢もみぢ 蓑乾き行く 山表(存亜)
・南京豆(なんきんまめ):落花生の別称。花が終わると子房が伸びて地中にはいり莢となる珍しい習性がある。晩秋収穫する
・南天桐(なんてんぎり):飯桐の別称。実は晩秋、真赤に熟し、落葉後も落果せずに残る
・苦瓜(にがうり):ウリ科ニガウリ属の蔓性一年草。ゴーヤの名で親しまれている沖縄を代表する野菜。夏、胡瓜に似た黄色の花をつけ、秋、表面が 突起に覆われた緑色の実をつける。完熟しない実を採って食材とする
・錦木/鬼箭木(にしきぎ):ニシキギ科の落葉低木。紅葉が見事で、赤い実が鮮やかなので秋の季語となる。庭木や生垣に植えられ、端山などにも自生する。枝にコルク質の翼が出ている
錦木は 朽ちてうらみの 蛍かな(勝見二柳)
・錦木の実(にしきぎのみ):秋に熟して真っ赤になり、二つに割れて黄赤色のつややかな種が出る
・錦木紅葉(にしきぎもみじ):晩秋、錦木の葉が紅葉したもの。紅葉は美しく、古くから賞美された
・庭紅葉(にわもみじ):紅葉で色どられた庭
・白膠木紅葉/白膠紅葉(ぬるでもみじ):晩秋、ぬるでの木が色づくこと。いくらか黄味がかった朱色の葉はあざやかで美しく、紅葉山でも鮮烈な色を放つ
散り懸る 中にぬるでの 紅葉かな(左流)
・合歓の実(ねむのみ):合歓はマメ科ネムノキ属の落葉高木。6月から7月にかけて、枝先に刷毛状のピンクの花をつけ、夕方に開花させる。豆果は秋に 実り、莢の長さは10cmくらい。広線形で中に十数個の種を持つ
・合歓紅葉(ねむもみじ):合歓の木が色づくこと。黄色く色づいてもすぐに落葉する。銀杏や楓のような鮮やかさはない
簗守が 酒ほしがるや 合歓紅葉(須田柿麿)
・野茨の実(のいばらのみ):茨の実に同じ
・野胡桃(のくるみ/のぐるみ):クルミ科ノグルミ属の落葉高木。名前は葉や樹形がオニグルミなどのクルミに似ていて山野にみられることに由来する。
・残る菊(のこるきく):秋も終わろうとする時期にまだ咲き残っている菊
・野ばらの実(のばらのみ):野茨の実のこと。秋になると真紅色に熟して、冬に葉を落としても赤い果実は枝に残る
(6)は行
・羽団扇かえで(はうちわかえで):楓の一種。葉が掌状に浅く九片ないし十一片に裂け、羽団扇に似ている
・白英(はくえい):鵯上戸の漢名。花が白いことによる名。実は晩秋に赤く熟する
・麻疹木(はしかのき):水木の別称。八、九月ごろ実が熟する
・はじの実(はじのみ):櫨の実に同じ
・榛の実(はしばみのみ):榛はカバノキ科ハシバミ属の落葉低木。3月から4月にかけて紐状の褐色の花を咲かせる。黄褐色の実は硬く、1~2cmくらいの大きさ。総苞に包まれている。生食も可能
榛を こぼして早し 初瀬川(梅里)
・芭蕉の破葉(ばしょうのやれは/ばしょうのやれば):芭蕉の大きな葉が、晩秋にもなると風雨に傷んで裂けてくること
・芭蕉破るる(ばしょうやぶるる):芭蕉の大きな葉も、秋の末になると、風雨に傷んで、平行した葉脈に添い、縦に裂けてくること
・櫨の実(はぜのみ):櫨はウルシ科の落葉高木。高さは10mくらいになる。紅葉が美しく庭木として植えられるが、果皮から蝋をとるためにも栽培される。実の大きさは5~15mmくらいの扁平形。緑色から濁ったような黄色に変色する
・櫨紅葉(はぜもみじ):櫨の木が紅葉すること。実も葉も真紅に色づく。山野に自生するが、その紅葉の美しさから、庭木や花材にも用いられる
畠から 畠へ櫨の もみぢかな(吾友)
遠望に 櫨の早紅葉(さもみじ) 稲筵(いなむしろ)(鈴木花蓑)
・蜂屋柿(はちやがき):柿の一品種。岐阜県美濃加茂市蜂屋町原産の渋柿。果実は長楕円形で頂部がとがる。干し柿にする
・初滑子(はつなめこ):10月頃に出回る滑子の初物のこと。榎茸(えのきたけ)の方が栽培もし易いためか、榎茸のことを呼んでいることもある
・初滑茸(はつなめたけ):10月頃に出回る滑子の初物のこと
・柞の実(ははそのみ):小楢の実の別称。晩秋にお椀に入った堅い実が熟する
・柞紅葉(ははそもみじ):ブナ科コナラ属の落葉高木の紅葉を総称していう。高さ15~20m程の雑木で、小楢、くぬぎ、大楢など
ははそちりて 小袖にもろし 露泪(安原貞室)
かヾやける 柞紅葉や 長者が田(雨上)
・浜万年青の実(はまおもとのみ):浜木綿の実の別称。花が終わると、乳白色で球形の実を結び、晩秋に熟して裂け砂上に種を散らす。果実は丸く、種は大きい
・浜杉(はますぎ):厚岸草の別称。深緑色の茎が秋が深まると次第に紅紫色に変わっていく
・浜木綿の実(はまゆうのみ):ヒガンバナ科の花。日本では関東以西の温暖な地の海岸に咲く。万年青のような葉であるが大きく、7、8月頃傘形の白い花を咲かせる。花のあと茎の頂点にたまねぎ形の実を7~8個実らせる
・隼人瓜(はやとうり):熱帯アメリカ原産。ウリ科の蔓性多年生。夏から秋に白い小さな花をつけ、秋に果実を実らせる。一株からたくさん採れる洋ナシ形の果実は、20cmくらいの大きさになり、漬物、炒め物などにして利用する。はじめて鹿児島に渡って来たため隼人瓜と名づけられた。一個の実をそのまま植えて発芽させる
・晩菊(ばんぎく):晩秋に咲く菊をいう。畑などで栽培される供花などの小菊にその趣が濃い。菊は花期が長いので切られずに残れば、そのまま冬の菊となる
・ピーナツ:落花生に同じ
・楸(ひさぎ):トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木。日本各地の山地に自生する。夏、枝先に円錐花序を延ばし、そこに小さな白色の花をびっしりつける。秋に柔らかいとげで覆われた実をつける。実は熟すと裂けて暗紫色の種をこぼす。俳句では、初秋に葉が散るものとして秋の季語に分類される
枝おほふ 楸や山を かくし題(井原西鶴)
村雨の 夜まぜになりて 散る楸(谷川護物)
・菱紅葉(ひしもみじ):菱はアカバナ科ヒシ属の水生一年草。泥の中に根を張り、夏に白い可憐な花を咲かせる。水面を覆う葉は秋に赤く色づき美しい
・穭(ひつじ):稲を刈り取った後の切り株に、再び稲が青々と芽を伸ばす。これを穭という
・穭稲(ひつじいね):晩秋、稲を刈った後の切り株から伸びた稲の新芽のこと
・穭田(ひつじた):刈り取った後の稲の切り株一面に、青々とした稲がふたたび生え出た田をいう
ひつぢ田に 紅葉ちりかかる 夕日哉(与謝蕪村)
ひつぢ田の 案山子もあちら こちらむき(与謝蕪村)
ひつぢ田や 青みにうつる 薄氷(小林一茶)
・羊穂(ひつじほ):イネを刈ったあとの切り株から伸びた新芽
・一ツ栗(ひとつぐり):毬のうちにクリが一つのもの
・一つ葉かえで(ひとつばかえで):ムクロジ科の落葉高木。本州中部地方の深山に自生。葉は倒卵形で、切れ込みはない。5、6月ごろ、淡黄色の花が小枝の先につく。まるばかえで
・美男葛(びなんかずら):真葛(さねかずら)の別称
・姫橘(ひめきつ/ひめたちばな):金柑(きんかん)の別称
・姫胡桃(ひめくるみ):北海道~九州の各地に分布するクルミ科の落葉樹。山地の沢沿いや湿った林縁などに自生するオニグルミの変種で、果実がより小さいためヒメグルミ(姫胡桃)と呼ばれる。果実の殻が割りやすいため果樹として普及し、各地で食用に栽培される
・百目柿(ひゃくめがき):甲州百目柿は、その特徴的な形状で知られている。赤橙色の果皮を持ち、釣鐘のような形状をしている。この形状が美しく、一目で識別できる特徴である。
この柿は、福島県、宮城県、山梨県、愛媛県など、日本各地で栽培されている。地域によっては異なる呼び名で知られており、福島県や宮城県では「蜂屋(はちや)」と呼ばれ、愛媛県では「富士柿」とも呼ばれている。
・鵯上戸(ひよどりじょうご):日本全国の山野に自生するナス科の蔓性多年草。鵯がこの実を好んで食べることから名づけられたが有毒。8月頃五裂の花びらが反り返った白く小さい花をつける。互生した葉や、茎には柔らかい毛が密生する
はや色に 出づるひよどり 上戸かな(秀暁)
赤い実が ひよを上戸に したりけり(小林一茶)
・瓢の実(ひょんのみ):実といわれているが果実ではなく、マンサク科のイスノキの葉に生じる虫瘤をいう。大きさは鶉の卵くらいになる。虫が出たあと穴に口を当てて吹くと、ひょうひょうと音が出る
ひよんの実や 聖(ひじり)訪(と)はるる 片折戸(文川)
・茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科のキノコの一種。アカマツとクロマツの根に寄生するもので形はキクイモに似る。漢方薬として利尿剤や健胃剤、鎮静薬などに用いられる
・五倍子/付子(ふし):ヌルデシロアブラムシがぬるでの葉に寄生してできた虫こぶのこと。タンニンを豊富に含んでおり、染料などに利用される。虫が瘤を破って出てくる前に採取される
・藤の実(ふじのみ):山野に自生したり、庭や盆栽で栽培される藤は、晩春、花が散ったあと、長さ10~20cmほどの大きな豆莢をつける。それが晩秋になって完熟し、灰緑色の固い果肉になる
藤の実は 俳諧にせん 花の跡(松尾芭蕉)
藤の実に 小寒き雨を 見る日かな(加藤曉台)
・葡萄柿(ぶどうがき):信濃柿の別称
・葡萄紅葉(ぶどうもみじ):葡萄の葉が紅葉すること。いくらかくすんだ感じに色つくが、広大な葡萄畑のそれは壮観である。
山葡萄の紅葉(下の写真)は栽培種よりも鮮やかに色づく
・富有柿(ふゆがき/ふゆうがき):甘柿の代表的品種。岐阜県原産の甘柿で、実は橙黄色の扁球形
・蚊子木(ぶんしぼく):マンサク科の蚊母樹(いすのき)の別称。実は晩秋に実り、巣くっている虫がでてしまうと空洞ができており、口をあてて吹くとよく鳴る
・朴の実(ほおのみ):朴はモクレン科モクレン属の落葉高木。5月ころ、枝先に白い芳香のある大きな花を咲かせる。実は集合果で、熟すと袋果が裂けて赤い種が垂れ下がる
・木瓜の実(ぼけのみ):バラ科ボケ属の木瓜の木になる実のこと。7~9月ころ4~10cmくらいの梨の果実に似た黄色い実をつける
木瓜の実や 事そともなく 日の当る(松瀬青々)
・干柿(ほしがき):秋、渋柿の皮をむいて干し、渋味を除いたもの
・菩提子(ぼだいし):シナノキ科の落葉高木の菩提樹の実。釈迦が悟りを開いたと伝えられるのはインド菩提樹で別の種類。6月ごろ淡黄色の花を咲かせ秋に直径7~8mmの球状の実をつける。乾燥させた実は数珠玉などに利用する
菩提子や 人なき所に よく落つる(岡 井眉)
・菩提樹の実(ぼだいじゅのみ):狭い舌形をした葉状苞についたままで、小さい球形をした菩提樹の実のこと。秋に熟した果実がいくつもたれ下がる。この実から念珠をつくる
・菩提の実(ぼだいのみ):菩提樹の実に同じ
・鬼目(ほろし):鵯上戸の別称。晩秋、実が赤く熟する
(7)ま行
・柾の葛/正木の鬘(まさきのかずら):定家葛の別称。キョウチクトウ科テイカカズラ属の常緑蔓性植物である。5月から6月にかけて淡黄色の花を咲かせる。細い管状の果実は15~25cmくらいの長さ。熟すと袋果が縦に裂けて、糸状の種を風に飛ばす。
弓の木の 久しき柾の かづらかな(椎本才麿)
・柾の実(まさきのみ):柾はニシキギ科ニシキギ属の常緑小高木。日本各地の沿岸部に自生し、高さは2~5mくらい。6月から7月に 緑白色の花をつけ、秋に7~8mmくらいの実をつける。実は熟すと縦に裂け中から赤い種が現れる。葉も実も美しいので生垣にもなる
・松茸(まつたけ):秋を代表する茸の王様。独特の芳香があり吸い物、土瓶蒸しなどにして楽しむ。近年赤松林の手入れが行き届かないため収穫が減っている。外国産のものや香りを添加したものも出回っている
まつ茸や しらぬ木の葉の へばりつく(松尾芭蕉)
松茸や かぶれた程は 松の形(松尾芭蕉)
松茸や 人にとらるゝ 鼻の先(向井去来)
松茸や 都に近き 山の形(広瀬惟然)
松茸は 京の荒砂 こぼしけり(長谷川櫂)
・松ふぐり(まつふぐり):松毬(まつかさ)の別称。晩秋に新しい松の実ができる
・松ぼくり(まつぼくり):松毬(まつかさ)の別称。晩秋に新しい松の実ができる
・間引大根(まびきだいこん):中抜大根の別称。晩秋、ある程度まで生長した段階で間引いた細い大根のこと
・豆柿(まめがき):信濃柿のうち、果実がやや大きくて球形のもの。柿渋を採取し、また甘柿の台木にする
・檀の実/真弓の実(まゆみのみ):ニシキギ科の落葉小高木。初夏に花をつけ秋に実を結ぶ。熟すと四つに裂け、赤い種子が現れる。昔この木で弓を作ったので、真弓の名がついた
・まるめいら:榲桲に同じ
・榲桲(まるめろ):バラ科マルメロ属の落葉低木、小高木。高さは7~8mになる。5月ごろ枝先に白または淡紅色の花を一つつける。実は9月から10月に黄熟する。香りがよく、生食するほか、果実酒やジ ャムなどに利用する。咳止めの薬にもなるめの薬にもなる
・マロングラッセ:栗の砂糖漬け。ゆでた栗を砂糖液に漬けたのち表面の糖液を洗い乾燥させたもの
・水木の実(みずきのみ):水木はミズキ科ミズキ属の落葉高木。5月から6月にかけて、枝先に白い花を密集させる。果実は直径5mmくらいの球形で、10月から11月にかけて黒く熟す
・水草紅葉(みずくさもみじ):萍や睡蓮、菱など水草が紅葉すること。水面に映える紅葉は、地上の紅葉とはまた違った趣を持つ
・見せばや(みせばや):ベンケイソウ科の多年草で古くから観賞用として栽培されてきた。多肉質の輪生した三枚の葉が垂れ下がり、秋、茎頂に桃色の球形の花を多数つける。冬には全体に紅葉する。
「見せばや」は「見せたい」の意で、高野山の法師が和歌の師匠の冷泉為久卿にこれを贈り、「君に見せばや」と詠んだことが名前の由来といわれています
・三ツ栗(みつぐり):毬の中に栗が三つ入ったもの
・三つ手かえで(みつでかえで):ムクロジ科の落葉中高木。深山に自生。葉は3枚の小葉からなる複葉。小葉は長楕円形で縁に粗いぎざぎざがあり、先がとがる。雌雄異株。春、黄色い花を穂状につける
・虚栗(みなしぐり):殻だけで中に実のない栗
・嶺かえで(みねかえで):ムクロジ科カエデ属の落葉高木。本州中北部から北海道の亜高山帯に分布する。標高1,400 m~1,600 mから出現し、森林限界付近まで生える
・実の椿(みのつばき):椿の実のこと
・実紫(みむらさき):紫式部のことで、晩秋になって小さな丸い実が群がり、紫色に熟するのが美しい
・椋の実(むくのみ):椋はニレ科ムクノキ属の落葉高木。5月ころ葉と一緒に淡緑色の花を咲かせる。晩秋に卵形球状の実が黒く熟す。甘みがあって食べられる
椋の実や 一むら鳥の こぼし行く(漢水)
・木患子/無患子(むくろじ):ムクロジ科の落葉高木。高さは10~15m。比較的暖かい地方の山地に自生する。6月ころ淡緑色の花を咲かせ、秋、茶色に実が熟れる。実の中には黒い種が一つ入っており、羽子突きの羽子の球に用いられる
・無患樹の実(むくろじのみ):大木となる落葉高木である無患子の球形果実のこと。晩秋、熟するにしたがい黄色・褐色と変わり、なかにまっ黒な堅い種が発育し、果実が裂けると落下する。羽子つきの羽子に用いた
・郁子(むべ):アケビ科トキワアケビの実。山野に自生する蔓性の木本。熟すと暗紫色になる。通草のように裂けない。果肉は甘く古くから食用、薬用に利用されてきた
・紫式部(むらさきしきぶ)/紫式部の実(むらさきしきぶのみ):クマツヅラ科の落葉低木。秋、紫や白のあざやかな球形の実を結ぶ。山地に自生、観賞用にも栽培される。名は『源氏物語』の作者、紫式部に由来する
いとほしや 人にあらねど 小紫(森澄雄)
・むら紅葉(むらもみじ):紅葉の群がり
・室のおしね(むろのおしね):晩稲の別称。晩秋、霜の降りる頃に収穫する
・名月かえで(めいげつかえで):羽団扇楓(はうちわかえで)の別称
・木犀(もくせい)/木犀の花(もくせいのはな):金木犀は橙黄色の花。銀木犀は白色の花。9月、中秋のころに花をつける。花は小さいが香りは高く、庭木に広く用いられる。芳香は金木犀の方が強い。爽やかな風に漂う香りは、秋の深まりを知らせてくれる
木犀の 昼は醒めたる 香炉かな(服部嵐雪)
木犀に かしらいたむや たたみさし(安井大江丸)
木犀の 香に染む雨の 鴉(からす)かな(泉鏡花)
木犀に 土は色濃うして 膨らめる(原月舟)
木犀や 屋根にひろげし よき衾(ふすま)(石橋秀野)
天つつぬけに 木犀と豚にほふ(飯田龍太)
・もちの木の実(もちのきのみ)/黐の実(もちのみ):小さい球形をした黐の実のこと。通常秋に赤く熟するが、黄色く熟する種類もある
・もみいづる/もみいづ:もみずに同じ
・紅葉/黄葉(もみじ):落葉樹の葉が赤や黄色に色づき、野山の秋を飾る。紅葉といえば主に楓のことをいう。紅葉を愛でるという習慣は平安の頃の風流から始まったとされている
蔦の葉は むかしめきたる 紅葉哉(松尾芭蕉)
静かなり 紅葉の中の 松の色(越智越人)
山くれて 紅葉の朱(あけ)を うばひけり(与謝蕪村)
二荒(にっこう)や 紅葉が中の 朱の橋(与謝蕪村)
紅葉して 寺あるさまの 梢かな(与謝蕪村)
暮れさむく 紅葉に啼くや 山がらす(加舎白雄)
かざす手の うら透き通る もみぢかな(安井大江丸)
紅葉折る 音ひと谷に ひゞきけり(桜井梅室)
障子しめて 四方(よも)の紅葉を 感じをり(星野立子)
激(たぎ)つ瀬を あらおもしろの 紅葉舟(長谷川櫂)
・紅葉かつ散る(もみじかつちる):紅葉しながら、ちりゆく紅葉のこと
・紅葉川(もみじがわ):紅葉で色どられた川
・黄葉する草木(もみじするくさき):晩秋気温が下がると、葉が黄色くなる草木
・紅葉の笠(もみじのかさ):一面に紅葉(こうよう)した美しいさまを笠に見立てていう言葉
・紅葉の帳(もみじのとばり):一面に染まった紅葉を、「帳」に見立てた言葉
・紅葉の淵(もみじのふち):紅葉の葉の落ちた淵
・もみじ葉(もみじば):晩秋気温が下がると、落葉木の葉が赤く色を染めたり、種類によって黄色に変わること
・紅葉山(もみじやま):木々が紅葉した山
・紅葉ず/黄葉ず(もみず):秋になり草木の葉が紅や黄色に色づくこと。四段動詞「もみつ」の変化した語
・もみづる:もみずに同じ
・文殊蘭の実(もんじゅらんのみ):浜木綿の実の別称。花が終わると、乳白色で球形の実を結び、晩秋に熟して裂け砂上に種を散らす。果実は丸く、種は大きい
(8)や行
・焼栗(やきぐり):炒(い)ったり焼いたりした栗の実
・谷地珊瑚(やちさんご):厚岸草の別称。深緑色の茎が秋が深まると次第に紅紫色に変わっていく
・山柿(やまがき):山に自生する柿
・山栗(やまぐり):野生の小さな栗
・山梨(やまなし):山梨はバラ科ナシ属の落葉高木。果樹として栽培されている梨は、この山梨を品種改良したもの。4月から5月にかけて白い花を咲かせ、秋に直径7cmほどの実をつける。果肉は固く、生食には適さない
・山錦木(やまにしきぎ):檀(まゆみ)の別称。紅葉が美しいことによる名
・山紅葉(やまもみじ):山にある紅葉。山の紅葉
・破芭蕉(やればしょう):芭蕉のみずみずしい大きな葉が秋の風雨にさらされ、葉脈に沿って裂けている状態をいう
鶴鳴や 其声に芭蕉 やれぬべし(松尾芭蕉)
芭蕉葉や 音も聞かさず 破尽す(梅室)
やれ芭蕉 こころ此ほど ものぐさき(加舎白雄)
荒寺や 芭蕉破れて 猫もなし(正岡子規)
芭蕉破れて 繕ふべくも あらぬ哉(正岡子規)
芭蕉破れて 書(ふみ)読む君の 声近し(正岡子規)
絣着て いつまで老いん 破芭蕉(原石鼎)
・敗荷(やれはす):秋口には風に葉を翻していた蓮も、日に日に色褪せ、風雨に打たれて破れてゆく。寂しくわびしい秋の風情そのもである
さればこそ 賢者は富まず 敗荷(やぶれはす)(与謝蕪村)
敗荷や 雨は静かに 降りつづく(淡嵩)
・破蓮(やれはちす):敗荷(やれはす)に同じ
・夕紅葉(ゆうもみじ):晩秋の夕方の紅葉
・柚子(ゆず):蜜柑より粗野であるが、独特の香りと美しい黄色の皮が、昔から料理に欠かせない薬味として愛されてきた。その芳香や色合いがもたらす食欲増進効果に加え、風邪の予防や疲労回復に効果があるとされる
子籠(こごもり)の 柚の葉にのりし 匂ひ哉(宝井其角)
柚の色に 心もとりぬ 魚の店(うおのたな)(市原多代女)
精進日や 厨きよらに 柚の匂ひ(梧堂)
荒壁や 柚子に梯子す 武者屋敷(正岡子規)
古家や 累々として 柚子黄なり(正岡子規)
騒然と 柚の香放てば 甲斐の国(飯田龍太)
柚子打の 出てゐる愛宕 日和かな(長谷川櫂)
・ゆで栗(ゆでぐり):茹でたクリの実
(9)ら行
・落花生(らっかせい):南米原産のマメ科の植物。日本には明治の初め頃伝わった。晩夏から初秋にかけて黄色の花を咲かせる。その後、地中に子房がのびて莢をつける。実は、長楕円形で中がくびれた小さなひょうたん型。炒るか茹でるかして食べる。千葉や茨城が主産地
・薤の花/辣韮の花(らっきょうのはな):晩秋、葉の間から花茎をのばし、紫色の小花を半球状につけるもの
・林檎(りんご):バラ科。ヨーロッパが原産地。秋の果物の代表のひとつ。ふじ、紅玉、王林、つがる、ゴールデンデリシャス、などの品種がある。産地は青森、長野が有名
わくらばの 梢あやまつ 林檎かな(炭 太祇)
世の中の 色に染めたる りんごかな(与謝蕪村)
歯にあてゝ 雪の香ふかき 林檎かな(渡辺水巴)
空は太初の 青さ妻より 林檎うく(中村草田男)
金釘の 曲りて抜けし 林檎箱(長谷川櫂)
・茘枝(れいし):蔓茘枝に同じ
・檸檬/レモン(れもん):夏に花をつけ、秋に楕円の実をつける。実は鮮やかな黄色で強い酸味と香りが特徴。調理のほか、果肉を絞ってジュースにしたりスライスして紅茶に浮かべたりと用途が広い
(10)わ行
・吾亦紅/吾木香/我毛香(われもこう):バラ科の多年草。山野に自生する。9月ころ茎の上部が枝分かれし、その先に小さな暗紅色の楕円球の花をつける。「吾木香すすきかるかや秋草のさびしききはみ君におくらむ」(若山牧水)と歌われるように、さびしい花である
哀れにて やさし竃馬 吾木香(伊藤信徳)
しやんとして 千種の中や 吾亦紅(八十村路通)
浅間越す 人より高し 吾亦紅(前田普羅)
折とつて 珠のゆれあふ 吾亦紅(高橋淡路女)