非難を表す四字熟語(その2)無礼・下品・見識が狭い

フォローする



慇懃無礼

漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。

そこで今回は、「非難」を表す四字熟語のうち、「無礼・下品」「見識が狭い」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。

1.無礼・下品

(1)慇懃無礼(いんぎんぶれい)

言葉や態度などが丁寧すぎて、かえって無礼であるさま。

あまりに丁寧すぎると、かえって嫌味で誠意が感じられなくなるさま。また、表面の態度はきわめて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げているさま。

「慇懃」は非常に丁寧で礼儀正しいさま。

(2)俗臭芬芬(ぞくしゅうふんぷん)

俗っぽく下品であること。世俗にまみれていること。金銭欲や名誉欲が強く、それを隠そうともしないこと。

「俗臭」は、下品な俗っぽいこと。「芬芬」は、においが強いさま。

(3)袒裼裸裎(たんせきらてい)

衣服を脱ぎはだかになること。転じて、はなはだ無礼な振る舞いのこと。

「袒裼」はひじをあらわす、肌脱ぎになる意。「裸裎」は身をあらわにする、はだかになる意。

(4)跛立箕坐(はりゅうきざ)

礼儀作法に外れていて、失礼な態度のこと。

「跛立」は片足で立つこと。「箕坐」は足を投げ出して座ること。

(5)不埒千万(ふらちせんばん)

はなはだしく法や道理から踏み外れていること。非常にけしからぬこと。

「埒」は、馬場などの外囲い。「不埒」は、法や道理に外れていること。「千万」は、程度のはなはだしいこと。

(6)無礼千万(ぶれいせんばん)

はなはだしく礼儀にはずれていること。このうえなく失礼なこと。

「千万」は、はなはだしいことを強調する副詞。

(7)放飯流歠(ほうはんりゅうせつ)

下品な食べ方をいう言葉。

「放飯」は口を大きく開けてかき込むように飯を食うこと。
「流歠」は音を出してすすりながら流し込むように汁を飲むこと。

口を大きく開き、ほしいままに飯を食べ、音を立ててすすりながら流し込むように汁を飲むことから。

(8)野蛮草昧(やばんそうまい)

文明や文化がなく、秩序がない様子。

「野蛮」は文明がないこと。「草昧」は物事の始めで、秩序がなく乱れている様子。

(9)野卑滑稽/野鄙滑稽(やひこっけい)

下品でばかばかしくてくだらないこと。

「野卑」は品がなく卑しい様子。「滑稽」はくだらなくてみっともない様子。

2.見識が狭い

(1)夏虫疑氷/夏虫疑冰(かちゅうぎひょう)

見聞が狭いことのたとえ。見聞の狭い人は広い世界を理解しえないたとえ。見識の狭い人が自分の知らないことを信じようとしないこと。

冬を知らない夏の虫は、冬に氷というものがあるのを信じない意から。

見識や見聞が狭い人を卑しめていう語。

「夏虫(かちゅう)、氷(こおり)を疑(うたが)う」と訓読します。

(2)管窺蠡測(かんきれいそく)

見識がきわめて狭いことのたとえ。

「管窺」は、細い管を通して天を見ること。「蠡測」は、小さなホラ貝で海の水を測ること。

「管(かん)もて窺(うかが)い蠡(れい)もて測(はか)る」と訓読します。

略して「管蠡(かんれい)」ともいう。

(3)管中窺天(かんちゅうきてん)

見識が狭いことのたとえ。

細い管を覗いて天を見るという意味で、管を覗いて天を見ても、天の一部分しか見ることは出来ないということから。

「管中(かんちゅう)より天(てん)を窺(うかが)う」と訓読します。

(4)管中窺豹(かんちゅうきひょう)

見識が非常に狭いことのたとえ。

管を通して動物の豹を見ても、一つの斑文しか見ることが出来ず、全体はわからないという意味から。

「管中(かんちゅう)より豹(ひょう)を窺(うかが)う」と訓読します。

(5)区聞陬見(くぶんすうけん)

学問や見識がきわめて狭く、かたよっていること。

「区」は、小さいこと。「聞」も「見」も、見識のこと。「陬」は、かたよる。「陬見」は、かたよった見識のこと。自分の学問や見識を謙遜する場合にも用いる言葉。

(6)孤陋寡聞(ころうかぶん)

知識が偏っていて、見識が狭いこと。

「孤陋」は他人の考えを聞かず、視野が狭いこと。「寡聞」は見聞が狭いこと。

(7)蜀犬吠日(しょっけんはいじつ)

無知な人は、当たり前の事柄にも、怪しんで恐れること。また、見識もなく劣った者が、他人の言動をむやみに批判すること。

「蜀犬(しょっけん)、日(ひ)に吠(ほ)ゆ」と訓読します。

中国の蜀(しょく)(現在の四川省)の地域は、山地で霧が深く、普段から曇りがちで薄暗いところであり、そこの犬は、たまに太陽が出て日が射すのを見ると、怪しんで吠えたという故事から。

(8)井蛙之見(せいあのけん)

広い世間を知らず、自分だけの狭い見識にとらわれていること。

「井の中の蛙(かわず)大海(たいかい)を知らず」と同じ意味。

(9)尺沢之鯢(せきたくのげい)

経験が少なく、知識が狭いこと。または、そのような人のこと。

「尺沢」は小さな池。「鯢」は山椒魚のこと。

小さな池に住む山椒魚は、その池の中のことしか知らないということから。

(10)浅学寡聞(せんがくかぶん)/寡聞浅学(かぶんせんがく)

知識や経験が少ないこと。自身の知識や経験の少なさを謙遜していう言葉。

「浅学」は学問や知識が乏しいこと。
「寡聞」は実際に見たり聞いたりして得た知識や経験が少ないこと。

(11)浅学菲才/浅学非才(せんがくひさい)

学問や知識が浅く未熟で、才能が欠けていること。自分の識見をへり下っていう語として用いられることが多い。

「浅学」は学問や知識が浅く未熟なこと。「菲」はもと野菜の名で、かぶらの種類。転じて、薄い、粗末な、劣ったという意に用いられる。「菲才」は才能のないこと。

(12)全豹一斑(ぜんぴょういっぱん)/一斑全豹(いっぱんぜんぴょう)

もののごく一部を見て、全体を推測したり批評したりすることのたとえ。見識がきわめて狭いことのたとえ。

「一斑」は豹の斑点の一つ。「全豹」は豹全体。転じて、物事の全容のこと。狭い管から豹をのぞき、見えた一つの斑点から豹全体を類推するという意。

(13)粗鹵狭隘/疎鹵狭隘/麁鹵狭隘(そろきょうあい)

見識や学問が雑で狭いこと。

「粗鹵」は作りが雑で役に立たないこと。「狭隘」は狭いという意味。

(14)吠日之怪(はいじつのあやしみ/はいじつのかい)

優れた言動を理解することができない見識の狭い者が、疑って非難すること。

「吠日」は犬が太陽に向かって吠えるという意味。

蜀の地方の高い山に囲まれ、曇りや雨が多く、太陽がほとんど出ない地方の犬は、たまに太陽が出ると驚いて太陽に向かって吠えるという故事から。

(15)不知案内(ふちあんない)

知識や心得がなく、実情や様子が分からないこと。

「不知」は知らないこと。「案内」は事情、様子をよく知っていること。

(16)夜郎自大(やろうじだい)

自分の力量を知らずに、いばっている者のたとえ。

「夜郎」は中国漢の時代の西南の地にあった未開部族の国の名。「自大」は自らいばり、尊大な態度をとること。

漢帝国の大きさを知らない夜郎国の王は、自国に漢の使いが来たとき、自国のみが大国だと思い込んで、「わが国と漢とではどちらが大きいのか」と尋ねたという故事から。

(17)用管窺天(ようかんきてん)

視野が狭く、見識がないこと。細い管を通して空をのぞくという意。

「管(くだ)を用(もち)いて天(てん)を窺(うかが)う」と訓読します。

(18)遼東之豕(りょうとうのいのこ/りょうとうのい)

狭い世界で育ち、他の世界を知らないため、自分だけすぐれていると思い込んで、得意になっていること。ひとりよがり。

「遼東」は遼河(河の名)の東、中国遼寧省南部地方のこと。「豕」は豚の意。