2018年7月に、「大阪メトロ」は、「駅リニューアル計画」と「ホームドア設置計画」を発表しました。IR(統合型リゾート)や大阪万博を念頭に検討している中央線の「夢洲」への延伸計画もありますが、それを除いて総額450億円の投資額です。「ホームドア設置計画」は結構だと思います。
しかし、2018年12月20日に発表された「駅リニューアル計画」の内容には、首を傾げたくなるほど「悪趣味」なものがあります。
「地下空間の大規模改革」をコンセプトに、2018年度~2024年度にかけて、御堂筋線9駅と中央線6駅の「大胆なリニューアル」をするようです。それぞれの駅のコンセプトは次のようなものです。(15駅リニューアルの予定ですが、13駅だけイメージが公表されています)
【御堂筋線】
「新大阪:近未来の大阪」
「中津:プレゼンテーション」
「梅田:インフォメーション・ターミナル」
「淀屋橋:歴史」
「本町:クロスオーバー・ポイント」
「心斎橋:テキスタイル」
「天王寺:空」
「大国町:列車が一番かっこよく見える駅」
【中央線】
「森ノ宮:森」
「谷町四丁目: 大阪城・金の茶室」
「堺筋本町:船場町人文化」
「弁天町:弁財天」
「大阪港:船」
特に、「心斎橋駅」の天井と壁面の「小さな花柄を沢山べたべた貼り付けた小学生のようなデザイン」は、「包装紙やポットによくあるようなデザイン」で、特に悪趣味です。
「森ノ宮駅」は、「木の葉」をイメージしたような飾りが天井からぶら下っていますが、どこかの商店街の安っぽい「賑やかし」の飾りのようで、あまり感心しません。
「淀屋橋駅」の天井には、シャンデリア代わりでしょうか、レトロな照明器具がたくさんぶら下っていますが、ごちゃごちゃしていて、あまり見栄えが良くありません。
「堺筋本町駅」の天井に貼り付けられたのは、最初「かるた」かと思いましたが、よく見ると「親旦那さん、御家さん」「旦那さん、御寮人さん」などの船場商人の主人家族の呼び名が書いてあるもので、「安直な感じ」が否めません。
コンセプトも「心斎橋」が「テキススタイル」というのは、違和感があります。どちらかと言えば「本町」が「テキスタイル」でしょう。「心斎橋」は、かつては「高級ファッション」でしたが、今は御堂筋側が「海外の高級ブランド街」で、心斎橋筋そのものは「ドラッグストア街」の様相を呈しています。
「ディズニーランド」や「ディズニーシー」がある千葉県浦安市にあるJR京葉線「舞浜駅」なら、「心斎橋駅」のようなデザインでも良いかとは思いますが、大阪を代表するビジネス街・繁華街の「御堂筋」の地下を走る「地下鉄御堂筋線」の駅のデザインとしては、ふさわしくないと私は思います。
話は違いますが、「2008年大阪五輪誘致」を前提に開発が進められていた「舞洲」で、2001年に大阪市環境局が「舞洲ゴミ処理場」を建設するに当たって、外国人デザイナーを起用し、多額の税金を無駄遣いした例があります。
まるで「遊園地」か「テーマパーク」かと勘違いするような奇抜なもので、「ボランティア」で作ったのならともかく、多額の報酬を支払ったのは問題です。
これは、建築の合理主義を否定し続ける「環境保護建築」で有名なオーストリアの芸術家F・フンデルトヴァッサー氏がデザインしました。デザイン料は、舞洲工場(ゴミ焼却所)が6,000万円でスラッジセンター(下水処理場)が6,600万円で総額1億2,600万円です。
施設の「目的」に全くそぐわないものです。
「デザイナー」は、「芸術家気取り」で、とかく「奇抜なアイデア」を出して「自己主張」をしたがるものです。絵画のようなものであれば結構ですが、多くの人が利用する「公共交通機関」のデザインであれば、もう少し常識的な配慮が必要です。
吉村大阪市長や橋下徹氏は、この「駅リニューアル計画」を評価しておられるようですが、「民営化の成果」として強調したいのでしょうか?
話は脱線しますが、昨年ハズキルーペのインパクトの強いCMが二つテレビに流れました。一つ目が「CM好感度ランキング」2位で、後の方が1位だったそうです。
この二つのCMは、社長自ら手掛けたそうです。最初プロのCMクリエイターの持参したプランは、社長が考えている内容とはかけ離れたものだったそうです。
「プロを信用し過ぎてはいけない」という好事例です。
「大阪メトロ」は、「民営化企業」ではありますが、大阪市が100%の株式を保有しています。上場すれば、大阪市の株式保有比率は下がると思われますが、やはり公共性の高い企業ですので、「駅のリニューアルの内容」については、幅広く意見を聞いてさらに慎重に検討して頂きたいものです。