「果てしないスピード競争」の水泳界。高速水着、薬物疑惑やドーピング違反も!

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池江璃花子

水泳競技では、自由形(クロール)・バタフライ・平泳ぎ・背泳ぎ・個人メドレーの全てにおいて「スター選手」や「有力選手」がいます。個人メドレー・自由形の萩野公介、バタフライ・個人メドレーの瀬戸大也、平泳ぎの小関也朱篤、背泳ぎの入江陵介、女子では、自由形・バタフライの池江璃花子、平泳ぎの渡部香生子、背泳ぎの酒井夏海、個人メドレーの大橋悠依などです。

しかし一番注目されているのは、現在高校3年生の池江璃花子でしょう。昨年、日本新記録を連発した彼女ですが、2020年の東京五輪の時は20歳で、水泳選手として一番脂の乗り切った時期になるのではないでしょうか?

<2019/7/14追記>白血病を公表した池江璃花子選手の早期ご回復をお祈りします。

2019年2月に白血病を患っていることを公表し、現在療養中の池江璃花子選手におかれましては、養生専一にして頂きたいと思います。

1.高速水着

イギリスの競泳用水着メーカーのSPEEDO社が開発した「高速水着」に、「レーザー・レーサー」というものがありました。男女とも、両腕を除く全身をぴっちり覆う「スキューバダイビング用のウェットスーツ」のような水着で、これを着用した選手が2008年に世界新記録を連発したので、大変話題になりました。

縫い目がないのが特徴で、抵抗が軽減され、撥水性にも優れているということでしたが、その締め付けの強さから、独力では着脱できないという欠点がありました。

その後、日本の有力メーカーのミズノ・デサント・アシックスのほか、ウェットスーツ用素材のトップメーカーの山本化学工業なども開発競争に加わりましたが、2009年に国際水泳連盟(FINA)が、「2010年からレーザー・レーサーの使用禁止」を決定したため、布地以外を使用した「高速水着開発競争」は終息しました。

このような劇的な「高速水着使用禁止」決定があったため、その後の記録は当然のことながら低くなりました。そこで、高速水着を使用して出した記録を、「高速水着時代の記録」と表現することもあるそうです。

こうしてタイムの短縮を目指して開発された「高速水着」は、体を締め付けすぎることや、着脱が一人で出来ない上、時間が大変かかることもあり、2010年に禁止になりましたが、このことは「行き過ぎ」を改めるという意味でよかったと思います。

2.薬物疑惑とドーピング違反

以前書いた陸上競技の記事でも触れましたが、「薬物疑惑」や「ドーピング違反」は、水泳界においても発覚しています。

中国の孫楊選手は、2012年のロンドン五輪で2冠を達成し、1500m自由形でも世界記録を持つスーパースターですが、2014年に「ドーピング違反」で「3ケ月の出場停止処分」を受けました。

<2019/7/14追記>中国の孫楊選手が血液検体を金づちで破壊しドーピング検査妨害か?

「国際水泳連盟」(FINA)のドーピングパネルがまとめた報告書を入手した豪紙デーリー・テレグラフの報道によると、「問題児と称されることもある中国競泳界のエース孫楊が、2018年9月に、浙江省の別荘で行われた「抜き打ち検査」で、採取された血液サンプルを警備員と一緒に破壊した」とのことです。

FINAは、2019年7月21日から開催される世界水泳選手権への孫楊選手の出場を許可していますが、他選手からは追放すべきだとの怒りの声が上がっており、「世界反ドーピング機関」(WADA)も「スポーツ仲裁裁判所」(CAS)に異議申し立てを行っています。

中国の水泳選手については、1990年代に多くの「ドーピング違反」が発覚しています。葉詩文選手が2012年のロンドン五輪の400m個人メドレーで、驚異的なタイムをたたき出して金メダルを獲得した時も、「薬物疑惑」が渦巻きました。

2005年に旧東ドイツの女子水泳選手ペトラ・シュナイダーが、「1982年に自分が出した400m個人メドレーの記録はドーピングによるもので、削除してほしい」と自らドーピング違反を告白するというショッキングなニュースもありました。

彼女は1982年の世界選手権の400m個人メドレーで、4分36秒10の世界新記録を出して優勝しました。当時この記録は「不滅の大記録」とさえ言われました。

その後、この記録を破ったのが、1998年の世界選手権で4分34秒79の世界新記録を出して優勝した中国の陳妍です。しかし、彼女は1998年のバンコクアジア大会、2000年のシドニー五輪では、日本の田島寧子に完敗し、その後全く姿を見せなくなりました。

2016年のリオデジャネイロ五輪でも、中国の競泳女子選手からドーピングの陽性反応が出たとのニュースがありました。

旧ソ連圏の東ドイツや中国の「薬物疑惑」や「ドーピング違反」は以前からたびたび指摘されていました。しかし、特に気になるのは、2015年に明るみに出た「ロシアによる国家ぐるみのドーピング違反と、巧妙かつ悪質な隠蔽工作」の発覚です。

「薬物疑惑」や「ドーピング違反」は、「個人の記録への渇望」という側面もあるかも知れませんが、「軍事力・経済力・科学技術力」ばかりでなく、「スポーツの世界」においても「国威発揚のために金メダル獲得数増加」を目指し「勝利のためには手段を選ばない」「覇権国家の野望」という恐ろしい側面もあることが事実のようです。

「薬物の助けを借りない自然体の練習の成果」としての人間の水泳の記録は、果たして一体どこまで伸びるのでしょうか?

やはり、行き過ぎるとろくなことはありません。水泳選手の皆さんは2020年の東京五輪に向けて練習に励んでおられるところでしょうが、くれぐれも無理し過ぎないように、頑張ってください。