<2022/6/20追記>ドレスデン国立古典絵画館所蔵「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」
2022年7月16日(土)~9月25日(日)まで、大阪市立美術館で掲題絵画展が開催されます。
初期の傑作《窓辺で手紙を読む女》を修復後、所蔵館以外で世界初公開!!
(修復前)(修復中)
(修復後)
本展の注目作品である17世紀のオランダ絵画の巨匠ヨハネス・フェルメールの《窓辺で手紙を読む女》は、窓から差し込む光の表現、室内で手紙を読む女性像など、フェルメールが自身のスタイルを確立したといわれる初期の傑作です。
本作品は、1979年のⅩ線調査で壁面にキューピッドの描かれた画中画が塗り潰されていることが判明し、長年、その絵はフェルメール自身が消したと考えられてきました。しかし、2017年の調査により、フェルメール以外の人物により消されたことが新たに分かり、翌年から画中画の上塗り層を取り除く修復が開始されました。2019年5月には、キューピッドの画中画が部分的に現れた修復途中の作品が、記者発表にて公開されました。
本展では、この修復過程を紹介する資料とともに、大規模な修復プロジェクトによってキューピッドが完全に姿を現した《窓辺で手紙を読む女》の当初の姿を、所蔵館であるドレスデン国立古典絵画館のお披露目に次いで公開します。所蔵館以外では世界初公開となります。
また、ドレスデン国立古典絵画館が所蔵するレンブラント、メツー、ファン・ライスダールなど、17世紀オランダ絵画の黄金期を彩る珠玉の名品約70点もあわせて展示されます。
現在(2019年)、大阪市立美術館(天王寺公園内)で「フェルメール展」が開かれています。(期間:年2月16日~5月12日)今回大阪で展示されるフェルメールの作品は6点で、以下の通りです。
「取り持ち女」「恋文」「マルタとマリアの家のキリスト」「手紙を書く婦人と召使い」「手紙を書く女」「リュートを調弦する女」
私が学生時代の頃は、フェルメールはそれほど注目されていなかったように思います。ところが、15年くらい前からでしょうか、頻繁に「フェルメール展」が開かれるようになりました。
これは「バロック音楽」のヴィヴァルディ(1678年~1741年)の「四季」が、戦後急に日本で人気が出たのと似たような現象なのでしょうか?
このヴィヴァルディの音楽は、優雅で静かに心を癒すようなものだったのと、日本は四季がはっきりしていることから、多くの日本人に受け入れられたのでしょう。また1952年に結成されたイ・ムジチの演奏技量が卓越していたことも、第二次世界大戦後の「バロック・ブーム」が「ヴィヴァルディの再発見」という形で進められたことと無縁ではなさそうです。
1.「フェルメール」とは
(「取り持ち女」の左端の人物。フェルメールの自画像とする説がある)
ヨハネス・フェルメール(1632年~1675年)は、オランダの画家で「バロック期」を代表する画家の一人です。
写実的な描写と光による巧みな質感表現と綿密な空間構成が特徴で、「光の魔術師」とも呼ばれます。
「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」「牛乳を注ぐ女」「天文学者」「音楽の稽古」などが有名な作品です。特に「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」は神秘的で謎めいた魅力があり、「北方のモナリザ」とも呼ばれています。
彼は大変寡作な画家で、現存する作品は、たった30数点しかありません。
なお、ハン・ファン・メーヘレンという「贋作画家」が、フェルメールの贋作を多数制作したことで有名です。
2.フェルメールの魅力とは
フェルメールの絵画は、ルノアールのような華やかさはないし、ゴッホのような情熱・ゴーギャンのような奔放な明るさなどはなく、どちらかと言えば地味で暗い印象です。ただ、暗い所に光が差し込んでいる様子が巧みに描かれており、心に安らぎを与えるような印象があります。
彼は生前、画家として高い評価を得ていましたが、もともと寡作だったことに加えて、主題が民衆の日常生活であったこと、またそれらが個人コレクションであったため、やがて忘れ去られました。
しかし19世紀のフランスで、民衆の日常生活を理想化せずに描くクールベやミレーが現れ、やがて「印象派」へとつながるのですが、そのような時代背景の中で写実主義を基本とする17世紀のオランダ絵画が再び脚光を浴びることになったようです。
そういう意味で、第二次大戦後に世界中の人々が、忘れ去られ埋もれていたヴィヴァルディに魅力を感じたのと同様に、19世紀のフランスの人々もフェルメールに新鮮な魅力を感じたのではないかと、私は思います。
また、2004年に絵画の「真珠の耳飾りの少女」に着想を得たトレイシー・シュヴァリエの同名の著書が映画化され、話題になったことも日本での人気に火をつけたのかも知れません。