<2021/10/7追記>地球温暖化予測モデル作成の真鍋淑郎氏がノーベル物理学賞受賞の悪影響
今年(2021年)のノーベル物理学賞の受賞者に、大気と海洋を結合した物質の循環モデルを提唱し、CO2濃度の上昇が地球温暖化に影響するという予測モデルを世界に先駆けて発表した、プリンストン大学の上級研究員でアメリカ国籍を取得している真鍋淑郎さん(90)が、ドイツとイタリアの研究者とともに選ばれました。
真鍋氏の受賞は、「温暖化対策」推進論者には追い風となりそうですが、日本をますます誤った方向に導く悪影響が懸念されます。
「地球温暖化」ということが言われ始めてから久しいですが、「温暖化対策」を政治の道具に使い、欧米先進国に過大な負担を要求する一方で、中国やロシア、アフリカ・中東諸国、韓国などが「途上国扱い」で負担を免れていることに、私は以前から疑問を持っていました。
前に「海洋プラスチックごみ問題」についての記事を書きましたが、似たような疑問です。
また、「温暖化対策」をヒステリックに叫び、パリ協定離脱を宣言したトランプ大統領を非難するスウェーデンの高校生の少女グレタ・トゥーンベリさんの姿にも違和感を覚えていました。
ところが、最近渡辺正東大名誉教授の『「地球温暖化」狂騒曲 社会を壊す空騒ぎ』と、マーク・モラノ氏の『「地球温暖化」の不都合な真実』という本が出ていることを知り、「わが意を得たり」という気持ちになりました。
今回はこれについてご紹介したいと思います。
1.「地球温暖化問題」の問題点
(1)発端
「地球温暖化問題」とはもともと、国際連合の「IPCC」(気候変動に関する政府間パネル)という組織が火をつけた騒動のようです。IPCCは国連と世界気象機関(WMO)によって1988年に設立され「2500人以上の科学者の気候変動に関する研究成果をまとめて、問題解決に必要な政策を示す」ことになっています。
このIPCCが「地球温暖化問題」を「人類の緊急課題」としてしまったことが、現在の「地球温暖化狂騒曲」を招いたということです。
(2)渡辺正東大名誉教授の見方
日本は国連の言うことをみじんも疑うことなく無条件に飲み込み、このまま行けば100兆円もの巨額の「地球温暖化対策費」を投入することになりますが、その効果は微々たるものです。
日本が効果のない膨大な温暖化対策費をいつまでも捨て続けるは「カルト宗教めいた状況」であると言えます。
(3)各国政府やメディアの対応
各国政府や官公庁、主要メディアは、国連の「権威」に屈したのか、疑問視することもなく「地球温暖化問題」を取り上げ、巨費が投入され続けることになりました。
(4)「CO2による地球温暖化説」を疑問視する海外の科学者
日本では少数ですが、海外では「CO2による地球温暖化説」を声高に批判する人々が少なくありません。
アメリカの気象予報士アンソニー・ワッツ氏、アラバマ大学のロイ・スペンサー博士、デンマークの政治学者ビヨルン・ロンボルグ氏、ハンガリー出身の化学者イストヴァン・マルコ教授などです。
プリンストン高等研究所の物理学者フリーマン・ダイソン博士は、2015年のウェブサイト「レジスター」の取材に対して次のように述べています。
環境汚染なら打つ手はあります。かたや温暖化はまったくの別物。・・・CO2が何をするのかつかめたと研究者はいいますが、とうていその段階にはなっていません。そもそも、植物の生育を助けて地球の緑化を進め、人類社会をも豊かにするCO2を減らそうというのは、正気の沙汰ではないでしょう。
気候を理解したというのは、気候学者の思い上がりにすぎません。彼らが頼るコンピュータシミュレーションなど、変数をいじればどんな結果でも出せる代物ですからね。・・・私自身、科学の話ならたいてい多数意見に従いますが、ただ1つ、気候変動の話は違います。科学の目で見るとナンセンスそのものですから。
余談ですが、2015年にイギリスのノーザンブリアン大学の天文学者ヴァレンティナ・ジャルコヴァ教授が「今後15年ほどで太陽の活動が60%も減衰する。2030年には、地球がミニ氷河期に入る。」というショッキングな研究結果を発表しました。
「2030年に地球がミニ氷河期に入る」という報道でしたが、本人は「2030年頃から気候変動期に入る」と言ったのが真相のようです。
ただ2016年には「最近の地球の温暖化などの気候変動は、人為的なCO2排出が原因ではなく、太陽活動が及ぼす影響によるものだ」とする科学誌への論文掲載数が132件の多数にのぼったそうです。
「氷河期」というと、マンモスが絶滅した頃のようなツンドラ地帯が地球全体に広がっているようなイメージを多くの人は持つと思います。
しかし、現在も南極大陸・北極・グリーンランドに広大な氷床(一部溶け始めてはいます)があるので、「現代も氷河期(新生代氷河時代と呼ぶ)」です。この氷河期は260万年前から始まっており、その間に、寒冷な「氷期」と温暖な「間氷期」が繰り返されているのです。
今全世界で盛んに「地球温暖化が問題」だとして「温暖化を防ぐことに躍起になっている」状況ですが、「この『地球温暖化』は『地球が間氷期から氷期に入る時期を遅らせるプラスの働き』をしている」と評価する学者もいます。
ですから、上のヴァレンティナ・ジャルコヴァ教授の話というのは、「太陽活動が大幅に低下する見込みのため、地球は今の温暖な間氷期から、まもなく寒冷な氷期に入るだろう」という意味だと考えてよいと思います。
また、日経ビジネスの堀田佳男氏が取材したアラスカのイヌイット(先住民族)の話に次のようなものがあります。
イヌイットの間では、氷河期の周期は5万年と言われている。最後の氷河期(寒冷な氷期)が終わってからすでに1万年以上が経っているから、現在は(温暖な)間氷期だ。地球温暖化の話が出ているが、間氷期だから地球の気温が上昇するのは当たり前だろう。あと数万年経てばまた氷河期がやってくる。
もちろん私はド素人なので、断定はできませんが、上述のプリンストン高等研究所の物理学者フリーマン・ダイソン博士の話やイヌイットの話は傾聴に値するように思います。
2.「地球温暖化対策」の問題点
その巨費が生む「おいしい話」に、政・官・財・学会がどっと群がり、メディアも危機感をあおる「集団ヒステリー」のような「カルト宗教めいた地球温暖化騒ぎ」になったわけです。
(1)日本の温暖化対策
日本は2016年秋のパリ協定発効をにらんだ同年5月の閣議決定をもとに、温室効果ガス(大半がCO2)の排出量を2013年比で、2030年に26%減らすとしています。その内訳は「CO2排出量」が21.9%、「その他温室効果ガス」が1.5%、「吸収源対策」が2.6%です。
(2)世界のCO2排出量(2015年の欧州共同体の発表データ)
中国:29.4% アメリカ:14.3% 欧州経済圏:9.8% インド:6.8% ロシア:4.9% 日本:3.5% その他:31.5%
(3)2030年までの気温上昇と日本の対策による効果
2013年から2030年までの18年間での気温上昇は、2014年のIPCCによる「世界の年平均気温推移(陸地+海面)と同じペースとすれば、0.27℃になります。
過去100年で地球の気温は1℃ほど上がりましたが、「人為的CO2」の寄与は半分程度で、あとの半分は数百年前から続いてきた自然変動や20世紀後半から進んだ都市化の影響です。
0.27℃のほぼ半分が「人為的CO2」によると考えられますが多めに見て0.15℃とすると、CO2を世界の3.5%しか出さない日本が21.9%だけ減らした時、地球を冷やす効果は、「0.15℃×0.035×0.219」つまり0.001℃に過ぎません。
2030年まで、従来のままの温暖化対策費を使い続けると、総額50兆円になるそうです。また2012年に民主党政権が導入した「再エネ発電賦課金」が40兆~50兆円使われるので、総額100兆円に迫ることになるそうです。
(4)政治の道具にされた温暖化対策
1997年2月に採択され、2005年2月に発効した「京都議定書」は「2008~2012年の5年間(第1約束機関)に先進国が、CO2排出量を基準年(1990年)比でそれぞれ決まった率だけ減らす」と定めました。EUが8%、アメリカが7%、日本とカナダが6%でした。
採択年を考えれば、翌年(1998年)かキリの良い2000年とするのが妥当ですが、EU(特に排出量でEU全体の40%近くを占めていたドイツとイギリス)が「1990年基準」を強く主張しました。
ドイツは1990年以降、旧東ドイツの古い工場や発電所を更新してCO2排出を大幅に減らし、1997年時点では90年比で14%も少なかったのです。
一方イギリスは同時期に燃料の切り替え(石炭→天然ガス)を進め、CO2排出量を10%も減らしていたのです。
つまり、「1990年基準」であれば、両国は「CO2排出を増やしても構わない」ことになるわけです。これは両国の巧妙な策略であり政治戦略です。
当時の日本やアメリカにとって、CO2排出量を6%や7%も減らすのは不可能に近い話なので、当初日本は2.5%を考えていたのですが、温暖化対策を推進するクリントン政権のゴア副大統領の圧力で、6%を飲まされたそうです。
「京都議定書」の時代から、2016年発効の「パリ協定」に至るまで、「CO2排出を減らすべき先進国」は、EU諸国の一部とアメリカ、日本、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、スイスに限られています。
中国やロシア、インド、ブラジル、韓国、シンガポール、中東諸国やアフリカ諸国はすべて「途上国扱い」になっており、排出削減を強制されません。
中国が世界の30%近くを占める「最大のCO2排出国」で、「世界第二位の経済大国」あることを考えると理不尽極まりない状況です。
もし仮に、「地球温暖化対策」が必要だとすれば、まず中国・インド・ロシアが削減しなければ効果は望めません。
これは、イギリスやドイツを除く「先進国」に「お金の無駄遣い」をさせ、相対的に「途上国扱い」とされている中国やロシアなどの力を強めるだけのように私は思います。
このような理不尽な事態は、道理が通らぬ「国際政治力学」や「外交上の駆け引き」と、「地球温暖化問題は人類の緊急課題」という訳のわからない「ドグマ」によるものと思われます。
アメリカはクリントン政権時代の「京都議定書」を批准せず、2001年3月にはブッシュ(息子)政権が議定書から離脱しています。カナダも2007年4月に「6%削減の断念」を発表し、2011年12月に正式離脱を表明しました。トランプ大統領がオバマ政権時代のパリ協定を離脱したのは無理もないことだと思います。
日本も早急に方針転換の検討をすべきだと思います。前に「国連の過大な拠出金負担問題」の記事を書きましたが、そろそろ「国益を最優先する外交」に日本も転換してほしいものです。
3.「野生動物保護」の問題点(蛇足)
地球温暖化問題から外れますが、前に「動物と人間との共生問題」の記事を書きました。野生鳥獣による農作物の被害や都市部でのカラス・ハト・ムクドリ・野良猫・イタチなどによる糞害についても抜本的対策が行われていないことが気になります。
農作物の被害については、農家でのネット設置や補償金支給もあるようですが、都市部での鳥獣の糞害については行政は何の手も打ってくれません。自然災害でもないのに補償金名目で無駄な税金を投入し続けることは問題ですし、金額もバカになりません。糞害については都市の美観を損なうだけでなく衛生面でも大きな問題です。
これは、「動物愛護」というドグマによって自縄自縛に陥っているとしか思えません。他人事であれば、「滑稽でバカな人間」と冷笑していればよい話ですが、我が身の問題となると笑い話では済まされません。
一刻も早く、誤ったドグマ・固定観念から脱却して、元凶にメスを入れる正しい外交・行政を進めていただきたいものです。